第23話 ハンターの救援

「あんたら、ハンターか?」


「いかにも。避難民を救出との名目で派遣されたっと。」


 ポットに同意すると共に、襲いかかろうとしたウルフを斬り伏せる。

 その腕前から、ハンターである事は間違いなさそうだ。

 先に降りたハンター達もまた、ウルフを斬っていく。


「おらおら!」


「たかがウルフ。恐れるに足らず!」


「何匹いようが構わないわ。まとめて来な!」


 仲間のハンターだろうか。

 数の差など物ともせずに、次々と斬っていく。

 その仲間達も、相当な腕前だ。


「それで、九の地区からと言っていたが。」


「あぁ、そこのギルドマスターが、二次災害が起こる事を予期していたようだ。それで、一足先に派遣を要請したと聞いている。間に合って良かったっ。」


 そう言って、もう一匹のウルフを斬り伏せる。

 どうやら、二次災害が起こる事をハイグルが予想していたようだ。

 勿論、それを知って対策を取らない人物ではない。


「また助けられちまったようだな。ハイグルさん。」


 ぼそりと、ベージュが呟く。

 いなくなっても民を守る。

 その思いに、感謝するのだった。

 避難民達も喜びの声を上げる。


「良かった、助かるわ!」


「あぁ、死ぬかと思ったぞ。」


「喜ぶのは構わないが、早く避難を。守りながらは流石にきつい。」


 良く見ると、避難民を守るように陣形が組まれている。

 しかし、それでも限界があるようだ。

 たまに入られそうになるウルフを、慌てて斬っている。


「歩けないものは竜車へ。すまないが、男には歩いてもらう。お前達、援護だ。」


「「「おう!」」」


 竜車を囲うように、ハンター達が展開する。

 そして、剣を構えてウルフを牽制する。

 その間に、避難民が竜車へ近づく。


「ハンターか。話を聞きたいが。」


 折角なので、本部についての話を聞きたい。

 しかし、それどころではない。

 今もなお、ウルフ達が襲いかかろうとしているからだ。


「無理だな。諦めよう。」


「だな。今は避難だ。」


 安全を確保するのが先決だ。

 なので、竜車へ向かう避難民を見守る。

 その時だった。


「っ! 避けろ!」


 ハンターの男が叫んだ。

 その直後、長い何かが竜車に巻きつく。

 そして、上に持ち上げられてしまう。


「な、なんだっ!」


 そのまま、長い何かが下がっていく。

 すると、竜車ごと地面の中へと潜っていった。


「何が起こったんだっ!」


「見ろっ、何かが地面の中にいる!」


 竜車が潜った地面が動いている。

 何かがいるのは明白だろう。

 そこから長い何かが飛び出すと、今度はウルフを襲い始める。


「各自、警戒を取れ!」


 長い何かでウルフを包むと、竜車のように地面へ潜る。

 それを見たハンター達は、冷静に分析する。


「あれは、舌か。」


「この辺で長い舌の持ち主は?」


「潜りトカゲだ。しかし、もっと柔らかい土にいるはずだが。」


 ハンターによると、ここにはいない生き物らしい。

 しかし、そこにいるのは確かだ。

 実際、竜車を食べられてしまったのだから。


「どうする、逃げる手段は奪われているぞ。避難民を守りながらは戦えん。」


「トカゲの奴だけならどうにかなるが、ウルフがいるからな。」


 敵はトカゲだけではない。

 ウルフ達の中には、まだ人を狙っているものがいる。


「仕方ない、別れるか。」


「討伐と護衛だね。」


「じゃあ、リーダー。護衛は任せたぞ。」


 討伐を引き受けた三人が前に出る。

 すると、リーダーと呼ばれた男が頷いた。


「分かった。気を付けろよ。」


「誰に言ってんだ。ほら、行け。」


 討伐組が武器を振って近づけ無いようにする。

 その内に、リーダーの男が避難民へと近づく。


「着いてきてくれ。近くに村がある。取り合えず、そこで身を隠そう。」


「ここにいても危ないだけだもんな。皆、行くぞ。」


 ここにいても、襲われてしまうだけだ。

 ポットの声に、避難民が走り出す。

 その後を、リーダーの男が追いかける。

 その後ろをウルフ達が追いかけるが。


「させねぇよ!」


「こっから先は通さん。」


「通れるもんなら通ってみなっ!」


 その道を塞ぐように、下がった討伐組が塞ぐ。

 それにより、ウルフ達は進めない。

 しかも、そのウルフ達が後ろからの舌に巻かれてしまう。


「奴の狙いはウルフか。利用させてもらおう。」


「そんで、腹が満腹の時を狙えばいいのね。」


「随分と楽な仕事だな。」


 ウルフの後ろには、潜りトカゲが控えている。

 竜車こそ奪われてしまったものの、今は共に戦ってくれるようだ。

 そう考えると、これほど楽な仕事もない。


「よし、行くぞ!」


 討伐組が前に出てウルフを斬る。

 そして、トカゲを刺激しないようウルフを狩るのだった。

 しかし、数匹が避難民へと向かうが。


「ひいっ。」


「させんっ。」


 リーダーの男が、ウルフを斬り飛ばす。

 そうして、避難民をウルフ達から守っていく。


「大丈夫だ。そのまま走れ!」


 それでも、ウルフはやって来る。

 何とか払えているが、その数は多い。

 すると、ポットとベージュがウルフを殴る。


「経験はある。手伝うぜ。」


「倒せはしねぇけどな。」


「いや、助かる。」


 武器がないから倒せない。

 しかし、足止めぐらいは出来る。

 二人が払ったのを、リーダーの男が斬る。


「追い付かれても知らねぇぞ!」


「急げ急げ!」


 避難民をせっつかせて走らせる。

 そうしながらも、雨の中を進んでいく。

 そのお陰か、目の前に村が見えてくる。


「おし、あそこだ!」


「もう少しだ、頑張ってくれ。」


 ポットとリーダーの男が連携してウルフを倒す。

 その間にも、村へと近づいていく。

 すると、入り口で見慣れた馬車が見えてきた。


「あれは、先に向かった馬車か?」


「俺達を待ってんのか?」


 後から来る避難民達を待っているのだろうか。

 疑問に思いつつも、村の入り口へとたどり着く。


「はぁはぁ、着いた。」


「もう雨でびしょ濡れだ。」


 息を整える避難民達。

 その近くで、リーダーの男が追って来るウルフを確認する。

 その間に、ポットとベージュが馬車を見る。

 すると、馬も人もそこにはいない。


「間違いねぇ。さっき見た馬車だ。」


「馬を休ませてるのか? 流石に、走らせ過ぎたからな。まぁ、いい判断だ。」


 ポットの部下の判断だろうか。

 ぬかるんだ場所を走れば、馬の消費も激しい。

 しかも、ウルフから逃げる為に全力で走らせている。

 そう考えると、休みをいれるのは良い判断だろう。


「なら、合流しておくか。」


「だな。おーい、ハンターさん。村の中に行きたいんだが。」


 ポットが呼ぶと、ハンターが近づいてくる。

 どうやら、ウルフの群れは来ていないようだ。


「そうだな。村人の力を借りた方がいい。」


「よし。皆、村の中に入るぞ。もう一辛坊だ。」


 最後の気力を振り絞り、村の中へと向かう。

 そして、人を探して奥へ奥へと進んでいく。

 しかし、人影一つ無い。


「誰もいない?」


「そんな訳は無いだろ。少なくとも、ここに来た避難民がいるはずだぞ。」


「確かに。おーーい!」


 声を上げて村人を探す避難民達。

 しかし、見当たらないまま進んでいく。


「いないか。」


「そんな馬鹿な。」


 それからも、探しながら進んでいく。

 すると、前の方に何かが倒れているのが見えてくる。


「おい、何かあるぞ。」


「本当だ。行ってみようよ。」


 それを見付けた避難民達が駆け出す。

 そして、それを見る。


「わっ。」


「こ、これは。」


 そこにあるものを見て立ち止まる。

 何故なら、地面に寝そべる人達がいたからだ。


「なんだよ・・・こりゃ。」


 しかも、その数は沢山だ。

 その異様な光景に驚愕するのだった。

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