第17話 沈みゆく大地

「地面が割れていくぞ!」


「そうなったら、自走船じゃ走れなくなる。急いでくれ。」


 このまま割れると、自走船の走る道が無くなってしまう。

 割れてゆく地面の上を自走船が急ぐ。

 すると、森の方から爆発音が聞こえる。


「今度はなんだ!」


「また何か起きるのかっ!」


 地震で起きるような爆発ではない。

 つまり、爆発を起こしているものがいるのだ。

 気球の職員がそれを見る。


「森の方で爆発が発生。」


『原因は?』


「分かりませ・・・いや、もう一匹です! 影が見えました!」


『なんですって!? 今すぐに引かせて下さい!』


 予想外の展開に、対処を思い付く事が出来ない。

 なので、逃げる事しか選択肢がない。

 取り合えず、気球から緑の布を垂らす。


「後退です! 逃げろとの指示が出ました!」


「んなもんとっくにしてんだろ!」


 すでに自走船は後退している。

 なので、このまま逃げ続ける事しか出来ない。

 すると、ハンターの一人が森の異変に気づく。


「おいっ、あれはなんだよ。」


「あれ? ってなんか来てるぞ!」


 森へと伸びた地面の割れ。

 そこから、何かが噴出しながらやって来る。

 そして、割れ目に沿って広がっていく。


「あれは、さっきの爆発かっ!」


 それは、空へと伸びる爆炎だ。

 激しい爆発音を響かせながら、割れ目の中を走っていく。

 そして、それが自走船の近くを走る。

 その際、爆発から出た火の粉が降り注ぐ。


「おわあ!」


「あちいっ! あっ、手にっ、手にーーーーっ!」


 体につく火の粉にハンター達が悶絶する。

 しかも、ねばついているので体にひばりついてしまう。

 はたいても、手に移るだけで取れはしない。


「あちっ、あちちっ。」


「取れねぇっ、なんだこれはっ!」


 ただの火の粉ではないようだ。

 むしろ、マグマに近いのかも知れない。

 そんな火の粉に苦戦していると、何かの音が近づいてくる。


ずしん、ずしん、ずしん。


 それは何かの足音のようだ。

 しかし、吹き上がる炎の壁で見えない。

 見えるのは、空にいる気球だけ。


「逃げろーーーー! 三匹目だーーーー!」


「なんだとっ!」


 布では通じないと思ったのか、叫んで知らせる職員。

 その直後、炎の壁を突き破ってそいつが現れた。


グルオオオオオッ。


 そいつもまた、エリアを沈めた一体。

 その体中には、マグマのような物をまとわせている。


「大竜、だと!」


「来てしまったか。」


 その正体は、草食の大竜だ。

 自走船を見つけると、追いかけてくる。

 体を動かす度に、体のマグマが飛び散る。


「おいっ、こっち来てんだがっ。」


「やばいやばい、逃げてくれ! まじで死ぬ!」


「そんな事言われましても、真っ直ぐ進めないんです。」


 地面が割れている為に、そこを避けて走らないといけない。

 しかも、爆発のせいで地面が押し上げられてしまっている。

 直進するのは不可能なのだ。


「って、熱いっ! どうにかしてくれ!」


「水をっ、水をーーーーー!」


 あまりの熱さに、限界が来てしまう。

 水が欲しくてたまらないようだ。

 その時、願いが叶ったかのように地面から水が吹き出した。


「水だ! って、ブレスじゃねぇか!」


「じゃあ、水竜も来てるって事か!」


 ブレスが飛んだなら、その主もいるだろう。

 割れた穴から、海の水が吹き出した。

 そして、その岩をこじ開けるように水竜が飛び出してくる。

 更には、コングの王も落ちてくる。


「コングの王も! どうしてだよ!」


「恐らく、戦っていた場所が崩れたのかと!」


「そんで、安全な大陸の内側に来たと。ふざけんなっ!」


 折角逃げたのに、再び戦いの中に放り込まれたのだ。

 しかも、今度はもう一体いる。

 怒鳴るのも無理はない。


グオアアアアアアッ!


 コングの王が水竜を殴り飛ばす。

 すると、大竜に直撃する。

 共に倒れる二匹。

 そこに、コングの王が飛びかかる。


キシャアアアアアッ!


 起き上がった水竜が、コングの王へ水の塊を吐く。

 コングの王がそれを腕で弾く。

 しかし、その隙を狙った水竜の突進を受けて吹き飛んだ。

 

グルアアアアアアッ!


 そんな水竜に、起き上がった大竜が突進する。

 そうして水竜を飛ばすが、起き上がったコングの王が殴り付ける。

 三つ巴の戦いが始まった。

 気球がその戦いを見る。


「三匹合流! それに伴い、地面も崩落を始めてます!」


『ぐっ、恐れていた事が起きましたか。皆さんは?』


「何とか掻い潜っています!」


『そうですか。では、そのまま商業ギルドの施設まで引かせて下さい。』


 作戦に変更はなし。

 自走船は、戦いに巻き込まれないよう逃げている。

 それに構わず、コングの王が地面を叩く。

 それを大竜に投げるが、尻尾で掬い上げた地面の欠片で撃ち落とされる。

 しかし、狙いは本体だ。


ウグオオオオオオオオオッ!


 岩の下を潜ったコングの王が大竜を殴る。

 しかし、それに耐えた大竜が拳を弾く。

 そのまま突っ込んで、コングの王を吹き飛ばす。


キシャアアアアアアアオオオオオオン!


 その隙を狙って、水竜が飛び出し大竜に噛みつく。

 その大竜は、体のマグマを爆発させて水竜を払う。

 それならばと、水竜が口からブレスを放って大竜を吹き飛ばす。

 すると、その隙を狙ったコングの王に殴られる。

 そして、戦いの衝撃で地面が割れていく。

 そこから、大量の海の水が吹き出す。


ずごごごごごごっ!


 コングの王に割られ、大竜の爆発に砕かれ、水竜にかき混ぜられる。

 それにより、余波が広がり地面がさらに沈んでいく。

 それでもまだ止まらない。

 三匹の戦いは、まだ続くのだった。

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