第16話 怪物には怪物を
「来ました。奴です。」
『やはりですか。後は、どんな戦い方をするかですが。』
気球の職員が本部に連絡する。
ここまでは、ハイグルの仮説通りだ。
しかし、それ以上の情報はない。
一方、下ではハンター達が起き上がる。
「なんなんだよ。さっきのは。」
「水竜のブレス。・・・のわりにはぶっ飛んでたが。」
あまりの水の柱の勢いに、ハンター達が驚いている。
あんな巨体を吹き飛ばす程の威力だったので無理もない。
「こまけぇ事は良いじゃねぇか。見ろ、子供達が慌ててやがる。」
コングの王の子供達は、慌てて親の所に駆け寄っている。
指示を出す親がいなくなって慌てているのだろう。
すると、地面が揺れ出す。
「な、なんだ!」
「また、コングの王が何かしたのか?」
「いや、まだ起き上がった所だが。」
揺れの原因は、コングの王ではない。
その原因を探っていると、地面から水の柱が上がる。
「地面を貫いただと!」
「なんだ? ただのブレスじゃない。」
よく見ると、水の柱が渦を巻いている。
その渦で、地面を削っているのだ。
そのお陰で、地面すら貫く程の威力を秘めているのだ。
その威力に感心していると、今度は地面が渦巻き出す。
「なんだよ今度はっ。」
「渦かっ、巻き込まれるぞ! 逃げろ!」
渦は大きくなり、地面が崩れていく。
それに飲み込まれないようにと、自走船が動き出す。
しかし、何匹かの子供が飲み込まれていく。
「もっと速度を!」
「分かってます!」
渦が大きくなる速度は早い。
それに、自走船も飲み込まれようとしている。
それでも、こちらも速度を上げて渦の外へ飛び出す。
「はぁ、間に合ったか。」
何とか脱出は出来た。
しかし、渦の威力は上がるばかりだ。
しまいには、地面が崩れ始める。
その代わりに、水の渦が現れた。
「地面を削りやがるとは、無茶苦茶な奴だな。」
「どいつもこいつもっ、どうなってやがる!」
出会う相手は、どれも常識はずれの存在だ。
声を荒げるのも無理はない。
そして、ついに渦の主が飛び出した。
「やはり、水竜かっ!」
その渦の主の正体は水竜だ。
渦から飛び出して、コングの王の子供に噛みついた。
そのまま、口の奥へと飲み込んだ。
気球の職員が報告する。
「水竜出現。コングの王の子供を食べています。」
『やはりですか。草食であるコングの王と大竜の餌場の争いに、肉食の水竜が参加するのが疑問でしたが、狙いはコングの王の子供で間違い無さそうですね。』
資料によると、餌場を求めて争っていると書かれてある。
しかし、水竜が餌の取り合いに参加した訳ではない。
ただ、餌場の取り合いに来た子供を狙っていただけだ。
だから、子供さえ連れてくれば海竜が現れると考えたのだ。
しかし、その様子を黙って見ている親ではない。
「コングの王が動き出しました!」
子供が食べられているのを見たコングの王が駆け出した。
勢いをつけて、距離を縮める。
そして、勢いのままに水竜を殴り付けた。
その水竜は、吹き飛んで渦の中へと戻っていく。
「やりあってやがる。」
「今の内に逃げよう!」
隙を見て走り出す自走船。
すると、コングの王が自走船を見る。
逃がす気は無いようだ。
「こっち見たぞ!」
自走船へと手を伸ばすコングの王。
その時、渦から水竜が顔を出した。
「こっち見てる場合かよっ!」
水竜もまた、コングの王と戦う気のようだ。
渦からコングの王へとブレスを放つ水竜。
それに対して、コングの王が地面を叩いて地面を砕く。
そして、ひっくり返すように飛ばしてブレスを防ぐ。
しかし、それで防げるようなブレスではない。
そこで、コングの王が高く飛び上がる。
グオオオオオオオッ!
そのまま、水竜に向けて落下する。
さらに、拳を後ろに殴る体勢を取る。
すると、それを見た水竜がブレスを止める。
キシャアアアアオオオン!
コングの王に吠えてから、そちらにブレスを放つ。
しかし、その直前に拳が直撃。
それにより、軌道が変わって下へと落ちる。
それでも、ブレスの勢いは止まらない。
水竜が顔を上げると、それに合わせて軌道も上がり地面を削っていく。
その途中、自走船通しの間を通る。
「おわっ、地面が割れたぞ!」
ブレスが走った地面は、綺麗にそこだけ削れている。
その場所を見ると、地面が割れているように見えるのだ。
「当たらないよな?」
「当たったらその時だ。諦めよう。」
「ま、まじで?」
地面を削るブレスに、自走船が耐えられる訳がない。
ブレスが飛ばないよう祈るハンター達。
しかし、まだ戦いは続いている。
グオオオオオオオオオ!
水竜の後ろに落ちたコングの王が振り向いた。
そのまま、水竜の背中に飛びかかる。
キシャアアアアアアアオオオオン!
それに対して、水竜が尻尾を振って吹き飛ばす。
そして、渦から飛び出してコングの王の腕に噛みつく。
コングの王が腕を振るが離さない。
グオアアアアアアッ!
腕に噛みついた水竜に、もう片方の腕で殴り付ける。
すると、水竜の口が腕から離れる。
キシャアアアアオオオオオオン
それでも、水竜が尻尾を叩きつけて怯ませる。
その隙に、ブレスを放ってコングの王を吹き飛ばす。
そのコングの王は、空中で体勢を直して地面を叩く。
グオアアアアアアッ!
それにより、コングの王が浮いた地面を掴んで投げ飛ばす。
しかし、水竜が放った水の塊に撃ち落とされる。
「なんて戦いをしてやがる。」
「やっぱ、戦いをさけて良かったな。」
「あぁ、ハイグルさんに感謝だな。」
その戦いは、人が踏み込んでいいものではない。
そうしていれば、命など一瞬で散っていただろう。
その戦いから逃げられた事に安堵する。
その時、地面が激しく揺れる。
「今度はなんだ!」
「頼むからもう止めてくれ!」
次から次へと起こる災難。
しかも、長い揺れが続く。
明らかに、何かが起こした揺れではない。
「地震だっ!」
「あいつらが揺らしたせいか!」
「迷惑にも程があるだろ!」
度重なる刺激により、本物の地震が誘発されたようだ。
その揺れにより、地面がひび割れていく。
そのひびが、遠くの森を二つに割る。
そして、そこに潜むもう一匹が動き出す。
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