第13話 作戦始動、コングの王を倒せ
広い平地を、複数の自走船が並んで走っている。
その上には、武器を携えたハンター達が乗っている。
「はえぇな、流石自走船だぜ。」
「確かに、普段からこれぐらいの速度で移動できたらなぁ。」
ハンター達の移動は、基本が馬車だ。
そんな彼らにとって、機械による乗り物の速度は珍しいのだ。
「たんまりお金が入る事だし、それで買うってのはどうだ。」
「ふん。それで買えたら苦労なんてしてないわよ。」
自走船は、高級品だ。
一つや二つ金の桁が跳ねたぐらいで買えるような代物ではない。
それに、乗るには条件がある。
「だよなぁ。そもそも、勉強とか必要になるしな。」
「リーダーが勉強? らしくないな。」
「俺もそう思う。あっはっはっ。」
勉学に勤しむ自分を想像したのだろうか。
らしくないその姿に、自分で笑ってしまう。
そして、腰の剣を抜く。
「やはり、俺にはこいつ一本で充分だ。」
「だな。敵を狩れたらそれでいい。」
「それに、風景を楽しむのも悪くないもんだしねぇ。」
何だかんだ言って、今の生活に満足しているのだ。
敵を狩って金を稼げればいい。
それがハンターという存在なのだ。
「まぁ、無駄に背伸びをする必要は・・・っと、なんだありゃ。」
リーダーと呼ばれた男の視界に、大きな花のような物が入る。
近づくほど、それがせり上がった地面だと分かる。
「一体、ここで何が起こったんだ。」
「もしかして、ギルドが言ってた奴か?」
「商業ギルドが襲撃されたって奴か。随分とド派手な事をしやがるもんだぜ。」
商業ギルドでの事件は、ある程度知らされている。
だから、事情を知らないハンターでも予想は出来るのだ。
その光景を見ていると、いきなり船が縦に揺れる。
「な、なんだぁ?」
「これから船が揺れます。気をつけて下さい。」
「どういう事だ?」
動揺しているチームメンバー。
そんなチームに、運転手の職員が答えた。
直後、何かに乗り上げたように自走船が揺れる。
「うおっと。」
「あっ、地面を見ろ。」
様子に気づいたメンバーの指示で地面を見る。
そこには、割れて段差が出来ている地面がある。
それらは、せり上がった地面を中心に伸びている。
「今回の敵は、手応えがありそうだ。」
「つまり、倒したチームが、この大陸一のハンターチームって訳だ。」
「やばい。取材とか来るかな。準備しといた方がいい?」
「おう、しとけしとけ。」
ギルドが本気を出さざるをえない相手だ。
倒せば、相当な名誉も得られるだろう。
すると、他の自走船から声が飛んでくる。
「おい、聞こえてるぜ。人気になるのは俺達だ。」
「へん、負けねぇよ!」
この光景を見ても怯える事はない。
むしろ、いつも通りののりで笑い合う。
そんな話をしていると、揺れが収まる。
「おっ、収まったか。」
「んじゃ、再び全速前進だな。」
揺れがなくなれば、速度を押さえる必要もない。
しかし、自走船が停止してしまう。
それも、全ての自走船が。
「ん? なんだ? 異常発生か?」
「いえ、この場で待機との指令が来ました。」
「どこから?」
「上からです。」
「上?」
空を見上げる一同。
すると、空に小さな気球が浮かんでいる。
しかも、そこから赤い紙が照らされている。
「気球か。」
「えぇ、アンテナを積んだ気球です。これからは、あの気球に指示に従います。」
「なるほどな。それで、こっからどうするんだ?」
「気球が敵を監視しながら、ゆっくりと前進します。」
すぐそばに、敵がいるかもしれないのだ。
ここからは、慎重に進む必要がある。
なので、敵の動きを探りながらゆっくりと進んでいかないといけない。
「つまり、じわじわと包囲する訳だな。」
「その通りです。なので、少し時間がかかりますが。」
「構わねぇよ。ゆっくりするのは慣れてるからな。」
そう言って、手すりにもたれるハンター達。
ゆったり進むのは、いつもの事だ。
のんびりと、気球の様子を伺う。
その気球では、本部との通信が行われていた。
「前方に森を発見。それと、その先にエリアがあるはずなんですが・・・。」
『無いんですね?』
「えぇ、綺麗さっぱりと。」
前方に見える森。
その奥には、エリアがあるはずだった。
しかし、そこにあるのは一面の海。
『やはりですか。あのような大きな土地が一晩で無くなるなど不可解に着きます。いえ、最初から崩れていたと考えるべきでしょうか。』
通信主の主のハイグルが、手元の資料を見た。
そこには、頻繁に争いが行われていると書かれている。
その争いで、既に地面の下が崩れかけていたのだろう。
『何はともあれ、今はコングの王です。見えますか?』
「今、探索中です。コングの王が巣を作りそうな崖沿いを調べていますが。」
コングの王が、崖のある森に住むのは知られている。
つまり、探すとなると崖の周辺になる。
そこを中心に見ていると、何かの群れが集まっているのが見える。
「コングの群れ。間違いない、あそこです。」
『見つけましたか。では、自走船をゆっくり近づけて下さい。』
「了解です。」
赤い布を引き上げ、黄と黒の布を垂らす。
そして、気球を動かすと自走船が追ってくる。
『音を立てないように。』
「了解。」
静かに自走船を走らせるように気球が進む。
そして、少ししてから気球を止める。
それでも、布は引き上げない。
自走船が気球を越えて進んでいく。
「もう少し。・・・よし。」
自走船が進むと、赤い布へ取り替える。
すると、自走船が森から少し離れた所で止まる。
巣がある場所を囲うように。
「包囲完了。」
『他の三体は?』
辺りの森を確認する職員。
しかし、それらしいものは見えない。
「見当たりません。恐らく、他の森に移動したのでしょう。」
『そうですか。やるなら今の内でしょうね。では、始めて下さい。』
「了解です。」
直後、気球から玉が放たれる。
それが森の頭上まで飛ぶと、甲高い音を出して破裂した。
「合図だ!」
それは、作戦開始の合図。
その音で、職員達が設置されているボウガンに着く。
そして、奴がその音に気づく。
グオオオオオオオッ。
森の奥から、雄叫びが聞こえる。
そして、森の奥から何かが飛び上がる。
「来ます。戦闘準備を!」
辺りに緊張が走る中、そいつは目の前に落ちてきた。
腕が肥大化したコングの王。
その衝撃で、砂が自走船を襲う。
そして、それに合わせて職員も叫ぶ。
「撃て!」
その叫びで、ボウガンから玉が飛び出ていく。
その玉は、コングの王の胴体へ直撃していく。
しかし、数発当たっただけで後は腕で防がれる。
「おい、効いててねぇぞ。」
「構いません。足止めが目的なので。」
「なるほどな。」
元々の目的は、相手の行動を奪う為だ。
それが達成されている今、職員が再び叫ぶ。
「ハンター、出撃!」
「行くぞーーー!」
「「「おーーーーっ!」」」
雄叫びを上げながら、武器を取り出すハンター達。
自走船から飛び降りていくと、コングの王へと迫る。
コングの王もまた腕を振り上げる。
「臆するな! 奴はただのモンスターだ!」
「いつも通りにやれば良いんだよっ!」
相手がどうとかは関係がない。
ただ、いつも通りの狩りをするだけだ。
「よし、射撃停止!」
ハンターが近づくと、ボウガンからの玉が止まる。
そして、止まったと同時にハンターが接近する。
「先手は俺達が貰うぜ!」
最も近いハンターのチームがコングの王の足を斬っていく。
それにより、コングの王がバランスを崩す。
「今のうちだ!」
体勢を直すために、コングの王の腕の構えが解かれた。
そこに、追い付いたハンター達が攻撃を加えていく。
「おらっ。」
まずは両腕から。
邪魔になる腕を叩いて、動きを止める。
そして、チームで押さえ込む。
「今のうちだ!」
「任せな!」
最後のハンター達が胴体に攻撃を加える
それにより、コングの王が吹き飛ばされる。
「もう一丁!」
コングの王が膝を着いた所にもう一撃。
更に、コングの王の体勢を崩す。
「今度は合わせてだ。力自慢の奴、任せたぜ!」
「おう!」
各チームの重い武器を持ったハンター達が胴体に叩きつける。
すると、コングの王が森の中まで吹き飛んだ。
「倒すのは俺達だっ!」
「おいおい、目的を忘れんなよ。」
「ははっ、分かってるって。」
そう言いながら、ハンター達が腰のロープを取り出していく。
そして、コングの王の体に巻いてから近くの樹に結びつける。
それは、事前に聞いたギルドからの指示だ。
「ハイグルさんの作戦だ。絶対にしくじんなよ。」
「おう、どんどん巻いていくぜ。」
コングの王の手や足が樹に繋がれていく。
それでも、コングの王が立ち上がろうとするが。
「へっ、立てるもんなら立ってみなっ。」
樹に引っ張られて、少ししか立ち上がれない。
何とか膝で立てたがそれまでだ。
「もっとだ。もっと結んでやれ!」
その状態で、更にロープで結んでいく。
すると、コングの王が暴れるが動けない。
もはや、身動き一つ取れない状態だ。
「作戦完了! 任せたぜ!」
「了解。そこから離れて下さい。」
ハンターの一人が叫ぶと、自走船が動き出す。
森の近くまで接近すると、コングの王に向かってボウガンを撃ち始める。
グオオオオオオオッ!
叫んで暴れるコングの王。
それでも、抵抗する事が出来ない。
その動かぬ体に、ボウガンの矢が突き刺さっていく。
「よっしゃ。このままいけば倒せるぞ!」
こちら側の一方的な攻撃だ。
それが繰り返されると、遂にコングの王が動きを止めた。
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