第12話 作戦準備

 何事もなく平野を走る自走船。

 すると、目の前に町が見えてくる。

 その際、町から複数の気球が上がる。


「あれは?」


「監視用ですよ。あそこから得た情報を元に、作戦を行います。」


 無闇に挑んで勝てる相手ではない。

 なので、相手の様子を確認しながらの作戦を行う必要がある。

 そう判断し、気球を飛ばしたようだ。

 その気球の下を潜った自走船が町で止まる。

 そこでは、武器を持った人と自走船が集まっている。


「このまま皆さんには、ハンターギルドに同行を願います。して欲しい事もあるので。」


「それは構わないが、何をすれば良いんだ?」


「ここから逃げる為の誘導ですよ。今日中に、この村の者達を避難させます。」


 この町から、人々を脱出させる。

 つまり、この町にまで被害が及ぶと想定しているのだろう。

 そうなると、沢山の人手が必要になる。


「それなら、そっちの職員がいるだろ。」


「大半は、近くの村への避難指示で出ています。通信機が無い村も多いですからね。」


 村には基本、通信機という物が存在しない。

 だから、直接向かって避難の指示をしないといけない。

 その為に、町には職員が残っていないのだ。


「ハンターギルドから商業ギルドへの依頼としたいのですが。」


 そうなると、責任者であるベージュの仕事。

 しかし、その本人からの返事はない。

 船の隅で項垂れたままだ。


「俺が代わりに対処します。上に報告しておきます。」


「お願いしますね。では、ハンターの誘導に向かいます。皆さんは、先にハンターギルドの方へ向かって下さい。」


 仕事を果たす為に、自走船から降りるハイグル。

 すると、自走船が町へと入っていく。

 ハイグルがそれを見送ると、そこに職員が近づいてくる。


「マスター、戻られましたか。」


「準備の程は?」


「ハンターの召集と、自走船の準備、無事に完了しました。後は、マスターの指示待ちです。」 


「順調ですね。では、始めましょうか。」


 自走船で待機しているハンター達。

 準備を済ませて、暇をもてあましているようだ。

 そこへ、ハイグルが向かう。


「皆さん、集まっていただきありがとうございます。」


「おう、ハイグルさん。あんたの頼みだからな。それにしても、随分と厳重だな。」


「事が事なのでね。しかし、こちらの言う通りにして頂ければ問題ありません。」


 そう断言して見せるハイグル。

 ここにいるハンター達の事を信頼しているのだろう。


「俺達は、金さえくれるならそれでいいぜ。」


「勿論です。今回の報酬は、星二つ分の上乗せも考えています。」


「まじかよ。結構、跳ねるじゃねぇか。」


 その言葉に、ハンター達が盛り上がる。

 ハンターの報酬は、ランクを星で表す。

 星一個の度に、丸のけたが一個。

 まさに、けた違いの報酬が入るという事だ。


「そんで、いつ行けばいいんだ?」


「出来るなら、今から出て欲しいんですが。」


「おっし。お前ら、乗り込め!」


「「「おう!」」」


 声を上げ意気揚々に乗り込んでいくハンター達。

 誰もがやる気に満ちている。

 最後に、ハイグルと話してたハンターが乗る。


「皆さん、御武運を。」


「任せな。モンスターの三体や四体、軽くぶっ飛ばしてやるよ。」


 並んでいる自走船のエンジンが掛かっていく。

 そして、端から一台ずつ動いていく。

 そのまま町の外へと向かっていく。


「お願いしますね。では、私も動きましょうか。」


 直接関わるのはここまで。

 見送ったハイグルは、近くのギルドの竜車に乗り込む。


「動かして下さい。」


「了解。」


 動き出した竜車が町の中に入り、そのままギルドの施設へ向かう。

 その施設の前には、先程の自走船が置いてある。


「皆さんはいませんね。無事に動いてくれたようですね。」


 その自走船の横に竜車が止まる。

 そこからハイグルが出ると、施設の中へ急いで入る。

 すると、控えていた職員が迎える。


「マスター、気球は商業ギルドの施設を確認したそうです。」


「なるほど。では、森が見える場所で停止し自走船を待って下さい。それと、鳥竜が見えたら全力で退避で。」


「鳥竜ですか? 分かりました。」


 指示を受けた職員が、部屋へと引っ込む。

 そして、施設の奥へと向かったハイグルがとある部屋の前に止まる。


「失礼します。」


 部屋を叩いて中に入る。

 そこには、複数の職員がいた。

 そして、真ん中にはトーマンの死体。


「どうですか?」


「マスター。マスターの言う通り、喉に軽度の火傷を確認しました。」


「やはり、服に小さい焦げを見た時はまさかと思いましたが。」


 トーマンが着てる服の襟元に、小さい焦げ跡がある。

 それから、なにか火にまつわる何かがあったと予想したのだ。


「例の粉は?」


「原因不明です。資料にあった鳥竜から出たものと考えられますが。」


「私もそう思います。粉と言ったら鳥竜ですから。」


 この世界の鳥竜は、粉を出す器官がある事がある。

 恐らく、それだろうとの目星だ。

 先程、気をつけろと言ったのはこの為だ。


「しかし、意味がない粉は出さない。調べたいですが、ここにある道具では無理ですかね。」


「成分から見ないといけませんからね。仕方ないです。」


 本格的に調べるなら、本格的な道具が必要だ。

 しかし、このような小さい町にあるわけがない。

 やはり、調べるには都市に任せるしか無いようだ。


「では、分かる所だけでも調べましょうか。これが、次の作戦の成功。いや、この大陸を救う事になるのですから。」


 置いてある資料を持ったハイグルは、トーマンの死体の横に立つ。

 この大陸を襲うであろう敵の情報を得るために。

 町全体で、作戦の為の準備が進んでいく。

 そうして、大陸の命運を左右する大きな戦いが始まるのだった。

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