友達の異能をコピーする 

タマイジュン

第1章 創作は模倣から生まれる

第1話 コピー能力が発覚しました。





 もし他人の力をコピーできたら、きっとなんでもできる。でも使い方はコピーした相手に聞くしかない。そのためにはコミュ力が必要。


 だからぼっちの私には無理。そもそもそんな異能持ってないしね。


 ……と思っていたんだけど、私は2つ勘違いしていた。


 私にはコピー異能があったし、友達を作る力もあった。そして真実を教えてくれたを爆殺しそうになった。


 高校入試という大舞台でね。



 

 

********





 国立晴明せいめい高校・異能いのうバトル科。入試内容は先生とバトル。


 私はバトルフィールドに立ち、女性教師と対峙たいじした。クノイチのようなコスチュームを着た、茶髪ボブヘアの美人。


「受験番号23番、池亀いけがめレナです。よろしくお願いします」


「異能バトル科教師、空蝉奈々うつせみななです。はサマーノイズです。よろしくお願いします」


 どんな異能を使うかはわからない。審判ロボットが合図を。


『デハ両者スタンバイ……バトル開始!』


 よし。私は『蝶』の群れを出す。黄緑とピンクの羽、これが私の『異能』だ。


 でもサマーノイズ先生の放った『セミ』が爆発し、蝶は全て砕かれた。そして先生が飛びかかってくる。


 接近戦だ! 私は先生の手首に手刀を。そして至近距離から蝶を……。








 凄まじい爆発音がし、思わず顔を覆った。ブザーと審判ロボの声が。


『サマーノイズ試験官、戦闘不能。池亀いけがめレナ、合格水準達成』


 先生は満身創痍まんしんそういで倒れていた。


「大丈夫ですか!?」


 しかし先生は普通に立ち上り拍手。


「おめでとう! 来年度からここの生徒だな! ノイズ先生って呼んでくれ。コピー異能なんて初めて見たぞ」


「え、コピー異能?」


 さっきのはノイズ先生の自爆じゃないの?


「手刀のフリして私に触れて、爆発セミをコピーしたじゃないか。初見殺しだな」


「してませ……もう1回いいですか?」


 私は先生の手首に触れ、コピーするぞと念じてみる。すると指先が暖かくなった。


 そして本当に先生の異能が使えてしまった。爆発するセミに呆然。


「チョウチョが貴様のオリジナル異能で、人に触れると変化するのか! まるでカメレオンだな! ヒャッホー!」


 先生の説明臭いテンションは置いといて……なんで今まで気づかなかったんだろ。


 異能塾で散々チョウチョを出す訓練をしたけど……。


「ああ、コピーする友達いないからわかんなかったんだ……」


 残酷な真実。先生は聞こえなかったのか、審判ロボットの肩を叩く。


「ロボット君、例のものを」


 すると審判ロボットは、お腹から黒いネクタイを出した。


『ドーゾ』


「触れてみろ」


 あれ、ネクタイが黄緑色に。


「面白いだろ? 昔を思い出すよ。私と同じむし属性か。異能バトル科はみんなこのネクタイをするんだ」


 虫属性のカラーは黄緑色。4歳で診断されたっけ。


「では入学式で会おう。またな、未来の異能師いのうしさん」


 私は軽くお辞儀を。


「今日はありがとうございました」


 フィールドから出ようとした私に、ノイズ先生は声をかけた。


「もっとはしゃいでいいんじゃないか? 合格したんだぞ?」


 一体私はどんな顔をしているんだろ。


「そうですね。お疲れ様でした」


 私はノイズ先生にもう一度お辞儀をし、さっさと試験会場を出た。


 



 ノイズ先生の視線が背中に刺さった気がする。気のせいだろうけど。






*********






 私は帰りの電車でぼんやりしていた。


 異能はみんな持ってる、でも悪用厳禁。それを破る連中異能犯罪者がいる。

 

 異能犯罪者と戦い、逮捕するのが異能師いのうしの仕事。一応国家公務員だけど、ほとんどヒーロー扱いだ。


 固有の異能師コードとコスチュームを持ち、芸能人並みに人気がある人も。そんな異能師を育成するのが異能バトル科。全国の国立高校に必ずある。


 つまり私は希望進路に進んだ。初めて自覚した異能のおかげで。


 異能は16の属性に分けられ、変えることはできない。だからさっきのコピー能力は生まれつきのはず。


 それに15年も気づけなかった。猛烈に情けない理由で。これからも活かすことはできない。


 だって友達いないから。この先もできないから。






********






 晴明高校入学式、桜が無駄に舞い散っていた。式の後は教室に移動。


 1年りゅう組という変わったネーミング。座席表を確認すると、16人しかいなかった。


 そして担任はサマーノイズ先生だった。


「おはよう諸君。初めましてじゃない人も多いな。1年龍組担任のサマーノイズだ」


 自己紹介でもするのかと思ったら、先生はプリントを配る。


「自己紹介と意気込みでも書いてくれ」


 しかし私のプリントには、なぜか端っこに走り書きが。


【この後、異能訓練場の自習室1に来てくれ】

 





 


 オリエンテーションが終わった後、私は言われた通り異能訓練場へ。入試会場だった場所。角砂糖みたいな白い建物に入り、自習室1へ。

 

 ドアを開けると何もない白い部屋が。そしてノイズ先生が待っていた。しかし綺麗な人だな。


「失礼します」


「待ってたぞ、池亀レナ。お母様とよく似ているな。校門でお見かけしたぞ」


「親バカですよね」


「いいことだ。まあそれはいい。私の異能研究に付き合わないか?」


「研究?」


「コピー異能だ。あんなに面白いものは見たことない!」


 そして先生は、私の弱点をいきなり突き刺した。


「友達がいないと言っていたが、コピーするなら作れたほうがいいかもな」


「ひ、人と話すの下手なので……」


 動揺しながら理由を絞り出した。しかしノイズ先生は首を振る。


「どこがだ? 私と普通に話せているじゃないか。普通のガキに見えるがな」


 え? ガキ?


 不適切な単語が聞こえたけど、それはいい。私は思わず熱弁。


「そんなはずないです。友達いたことがないし、全然モテないし……」


「私から見たら至って普通、他に理由が必要か?」


 そして肩を叩かれた。


「世界が狭すぎたんだな。義務教育は残酷だ。人間は多様なのにフィールドは1つしかないからな。

 貴様はたった1つのフィールドで負けただけだ」


 言葉が出ない。言い返せない。だって嬉しいから。


「虫籠を出た蝶が舞う姿は、さぞかし素晴らしいだろうな」


「え、じゃあ友達できますか? 彼氏も?」


「貴様にできないことなんてないぞ」


 こんなこと言われたのは初めてだ。なんでもできそうな気がする。


 私はノイズ先生の手をとった。


「……やってみます!」







「さて池亀の洗脳も終わったことだし」


 え、洗脳って言った?


 もしかしてノイズ先生、おかしい人なんじゃ……。

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