真宵猫ーVSカレン

「アアアアァァァァァッ―――――!!!」


 頭を割るような音に耳を押さえる。


「ふふふ、ふはははは!!!成功、成功だ!やはりあのお方のお考えは正しかった!」


 頭を割るような音の次は不快な老人の笑い声が聞こえてくる。


 何がそんなに面白いのかわからないがとりあえず黙ってほしい。


 この状況を引き起こしたのはどうやら古佐目ふるさめと呼ばれる老人のようだがあっちは先生が何とかしてくれるようなのでれいは対面の相手にだけ集中する。


 とりあえず今しないといけないことはカレンとあの黒騎士の分担、今の怜にカレンと黒騎士二人を同時に相手取る余力はない。それに攻撃をすべて黒騎士によって防がれ、向こうは攻撃できるという状況はまず勝ち目はないだろう。


 どうしたものかと考えていると向こうの方で動きがあった。


「グゥルアアアッ!」


 猛々しい声を上げ攻撃を仕掛けて来たのは黒騎士。体の一部となった剣を構え怜に向かって突撃を仕掛けてくる。


 まさか自分から距離を離すとは……好都合だ!


 多分だが今のカレンには生前ほどの知能がないのだろう。だから指示がないためにひとりでに動く。


 単独で動くのなら作戦はシンプルでいい。先ほどと同じような作戦で黒騎士の動きを止めてしまえばいいのだから。


 騎士との距離はそこまで離れている訳ではないが接近してくるスピードは速くないため落ち着いて足裏に魔力を貯める。


 今使おうとしている技はその場に簡易のトラップを作る魔法、簡単な落とし穴だ。足裏で作った魔法を相手が踏めば穴が開き落ちる。知能が低い敵ほど簡単に嵌まる罠だ。タイミングが重要で相手が攻撃を仕掛けてくるタイミングで後ろに飛ぶ。


「ァア?」


 よし!タイミングバッチリだ。


 後ろに軽く飛ぶと狙い通り魔法陣を踏む黒騎士、情けない声を出しながら落とし穴に落ちていく。さらにすかさず魔法の効果を打ち消し開いた穴を元通りにする。強制的な生き埋め、やられた側は堪ったもんじゃないないだろう。


 例え生きていたとしても出てくるのに時間がかかるはずだ、もう黒騎士は気にしなくてもいいだろう―――ただ作戦成功の余韻に浸っている時間は無い。すぐにカレンに目をやるがカレンがどこにもいない。


 気配がしない。いったいどこに……?


「怜、上!」


 先生の声で上を見るとカレンが右腕の泥を槍に変え、こちらへと振り下ろす寸前だった。


「くっ……!」


 魔力を錬る時間がない。ただまともにくらえば死んでしまうかもしれない。そのため杖に貯めた魔力を使って魔法を使う。


【二階級魔法:死海領域しかいりょういき

 

 魔法を使うと怜を中心に水の膜が覆い、カレンの泥の槍を触れたところから消し飛ばしていく。


「はあ~……何とか防げた」


 ただカレンにとってはあの泥が削れてもダメージにはならないようで次々と上から槍を降らせ続けている。


 完全な硬直状態、ただこの硬直状態の時でもやれることはまだあるので魔力を練って貯めていく。


 魔力を貯めつつ相手の行動パターンを見ていると槍を降らせるタイミングのある部分で銃のリロードのように泥を補填する動きを行うことがある。いつまでもこのままというわけにはいかないので次のこのタイミングで反撃を始める。


 自身の持つ魔力を出し惜しみせず使い、反撃の機会を待つとその時は訪れた。リロードのために一瞬だけ止まる泥の槍、水の膜を解除して杖をカレンに向ける。


「飲み込め、【二階級魔法:水龍侵犯ゴア・カルロス】!!!」


 【二階級魔法:水龍侵犯ゴア・カルロス】は華翔龍炎クリブ・アレに似た魔法だ。華翔龍炎クリブ・アレが炎の龍なら水龍侵犯ゴア・カルロスは水の龍を出す魔法。ただ華翔龍炎クリブ・アレは怜のオリジナルでありその元が先生に教えてもらった水龍侵犯ゴア・カルロスだ。華翔龍炎クリブ・アレの元の技ということもあり威力は華翔龍炎クリブ・アレの二倍以上、今怜が使える魔法の中で最高火力の魔法だ。


「ハアアアァァァッ――――!!!」


 勢いよくカレンに向かって突き進む水龍、それをカレンは左手の泥を自分よりも大きな盾に変え守りに入る。


 凄まじい衝突音と共に龍と盾はぶつかり合った。

 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る