旅立ち
15歳になると、傭兵や冒険者を目指すサラム人は、オアシスの村から旅立つ。
傭兵は国に雇われて人間相手に戦う仕事。国同士の争いということであれば、オラクルード地方にある『強欲の国ガーヴァ』の周辺がホットだ。
冒険者は魔物を倒して魔液を手に入れる仕事。魔物はどこにでもいるが、冒険者ギルドのサポートが充実しているのは、やはりオラクルード地方だ。
そういうわけで、いずれにしてもハイオズ大陸の東端にあるオラクルード地方を目指すことになる。
ハイオズ大陸の最西端であるサラマンディード地方から東を目指すには、大きくは2つのルートがある。
北回りルートは、シルフィード地方(別名、山脈地方)を経由するルート。火山地帯から東に向かうと、シルフィード地方に入る。
南回りルートは、エルフィード地方(別名、森林地方)を経由するルート。砂漠地帯から東に向かうと、エルフィード地方に入る。
エルフィード地方の方が緑が豊か、すなわち水も食べ物も豊富に手に入る、楽なルートだ。
一方、シルフィード地方は寒く険しい高山が連なり、厳しい道行きとなる。
したがって、普通は南回りルートをとることが多いのだが、より強くなりたいと考えるアーキルは、厳しい修業が出来そうな北回りルートを敢えて選んだのだった。
・・・
アーキルは、傭兵か冒険者のどちらになりたいかと問われれば、別にどちらでも良かった。
そもそも旅をしていれば魔物を倒して魔液を手に入れることになる。既に冒険者のようなものだ。そうであるなら、一度は傭兵になってみようか。アーキルはそう考えた。
オラクルード地方には主要な国が7つある。
そのうちの1つである強欲の国ガーヴァが領土拡張を狙って隣国を攻めているのは、傭兵を目指す人間の間では有名な話だ。
攻められているのは、芸術の国フェックスと普通の国スタンガルド。
ガーヴァは侵攻のために、フェックスとスタンガルドは防衛のために、傭兵を募集している。報酬の高さならガーヴァが一番だが、ガーヴァが戦争を仕掛けているとあって、心証は悪い。(傭兵にとっては、喰いっぱぐれが無くて、ありがたいことではあるが)
報酬の高い方に強い奴が集まるなら、そいつらと戦う為には逆についた方が面白いか。そんな適当な考えで、アーキルは普通の国スタンガルドの傭兵団に入ることにした。
アーキルは既にけっこう強かったので、入団試験は簡単に突破した。
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