第3話
ヤクザ屋さんの会長暗殺後、バカみたいなペースで電話が掛かってきた。監視していたのか?
仲介業者の中でも(身長の低さで)有名な奴だ。連絡先にはクソガキで登録している。仕事で付き合いある外見がガキの奴は一人しかいねえし。
「キツツキ。雨の日は仕事も落ち着いていてな。飲みに付き合え」
ガキ臭い甲高い声が聞こえる。そっちの区画はもう雨降っているのか。ちなみにキツツキというのは元の世界に居たときから使っている通り名だ。本名は忘れた。二十代も半ばを過ぎると自分の年齢がどうでも良くなってくるようなもので、本名も忘れてしまう。名前なんてどうでもいいだろ。
「グゼと飲んでろ」
クソガキは全身機械で人間性のほとんど残ってないグゼが大親友。飲みで俺を呼ぶな。アルコールはプライベートで飲むから美味いんだよ。仕事飲みは気をつかって味もわかんねえよ。
「奴は仕事だ。私に構え」
俺は愚痴のゴミ箱じゃねえぞ。だが素直に構ってくれと言ったのは良いぞ。成長したな。肉体は加齢しないらしいが精神は成熟するんだな。
「おっ、素直になったな。股も開けよ」
「セクハラだぞ」
ロリコンの方々にはとうが立っているとか陰口叩かれているし、分別のある
「ロリコンだったんですか?」
四号から俺がロリコンか疑いの眼差しを向けられる。やめてくれその眼差しは。あとクソガキの奴をロリ扱いするのやめてやれよ。見た目は貧相なガキだが、けっこう年だぞ。
店に着くとクソガキことトガヒナの奴がいて、案の定仕事の愚痴を聞くことになった。トガヒナは仲介業者としてはなかなかやり手だが、妙に正義感のある青臭い連中の相手でストレス貯めているらしい。あいつら振る仕事も気を遣わねえとバックレるからな。そもそも大親友のグゼが妙に正義感ある面倒の筆頭だと思うが、アイツは仕事ならそれなりに妥協してくれるしそれはいいのか。
それで余ったすげえ汚い仕事を俺がパパっと片付けてやっている。持ちつ持たれつだ。だから飲み付き合ってやってんだぞ。
「雨の臭いを嗅いでくる」
「ああ。急に呼び出して済まなかったな」
店の外で地べたに座り、散乱するゴミを見ながら、飲み直す。
傲慢ちきな低気圧はこの区画の上空で停滞し、雨は止む気配を見せない。
「お前も抜けてきたのか」
四号の奴もトガヒナの相手を抜けて、店の外にやってきた。
ゴミを手で押しのけ、俺の隣に座る場所を用意する。
「愚痴を聞くのも飽きたので」
狂えるアラビア人ことアブドゥル・アルハザードの創造したこの電子版ネクロノミコン四号は人間並みの感性を備えていた。俺は彼女との契約により死んでも死にきれない。
「俺もトガヒナに負けず劣らず面倒な奴だと思うが、何故俺を選んだ」
「私の願いに耳を傾けてくれそうだったので」
お前の願いって、全てのネクロノミコンを滅ぼし、一人になるとかいうつまんねえのだっけとは口に出さなかった。俺はただ目の前にある仕事を片付けるだけだしな。願いの面白さは別にどうでもいい。
キツツキ 上面 @zx3dxxx
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