第130話 Prelude①
そして作戦決行の日がやってきた。
「それじゃあまた後でな。」
「うん。また後で。」
飛行機の中で百花と最後の言葉をかわす。次に会うのはこの作戦が終わってからだろう。辺り一面は暗闇に包まれていて、まだ寒い春の夜が身体を蝕んでいく。時刻はちょうど12時を回った頃。ついに作戦が始まる。
「みなさん。この戦いは今までのどんな戦いよりも過酷なものになるでしょう。でも、何回も死線を越えてきたみなさんなら、きっと大丈夫です。この作戦が終わるであろう夜明けまで、生き延びてください。そして、笑顔で会いましょう。」
『あーい!』
飛行機の後ろの車両用出入口が開く。
「それでは、みなさん勝ちましょう!」
俺がそう言うと、シャオさんとミシェルさんを先頭に、全員が飛び出していく。そして最後に百花が残った。
「行ってくる。」
百花はそう笑って、大空に身を投げ出した。
〇〇〇〇〇
俺たちはウイングスーツを操って、目標地点を目指す。暗視ゴーグルをつけているから、その目標地点は一目瞭然。森の中に微かな光が灯っていて、その前に不気味な影が見えた。
「シャオ、見えるか?」
「うん。私たちの相手はあれみたいね。」
大きさは1km近く離れているここからも視認できるほど。本当に門番はその怪物だけみたいだ。右腕が肥大化していて、悪魔のようになっている。
「じゃあ俺たちが道を開いてやりますか。」
「だね。ミシェル、お願い出来る?」
「しょうがねぇな。」
俺は背中に背負った槍を取り出し、照準を建物の門に合わせた。
ツゥーっと息を吸えば槍が金色に輝き、光の線が浮かび上がってくる。これが俺の解放、『幻槍』だ。金色に輝く槍は全てのものを破壊し、天まで穿つ。1度振れば遥か彼方まで攻撃が届く。いわゆるただのバフだ。
「『星槍』!」
槍を突き刺すように振ると、建物の門が壊れる音がした。
『総員、ミシェルさんが破った門から潜入してください。ミシェルさん、シャオさんは作戦通り怪物の相手をお願いします。』
「りょーかい。」
「任せなさいよ。」
シャオと俺は全員の軌道から外れて、その手前にいる怪物の方に向かう。後ろに続いていた奴らは加速し、俺が開けた門に向かった。
怪物はその開いた門を塞ぐように立ち、俺たちの侵入を阻止しようとする。
「させるわけないでしょ、ばーか。」
気づけばシャオはウイングスーツを脱いでいて、身体に仕込んでいた自分の戦闘スーツになっていた。
シャオの存在に気づいた怪物は他の奴らのことは諦めてシャオに集中した。が、もう遅い。その時にはシャオの蹴りが怪物の首に当たっていた。
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