第125話 Intro④

Intro④

 ちょうど同じ頃、ある施設の地下では一人の男がチェスをしていた。


「へぇー、あなたたちはそうやって動きますか。私が考えていた通りだ。」


ポーンを一マス進めて、コトっと音を鳴らして置く。


「それなら、私たちは受けるだけですね。逆にこっちから言ったら相手の…百野賢斗の思うつぼだ。」


 今の俺たちが感じている違和感はおそらく同じなんだろう。今までさまざまなをしてきたが、こんなに情報がまとまらなかったことはない。それは百野賢斗の解放なのか、はたまた他の誰かの解放なのか。それすらも掴めていない。これはおそらく『隠す』解放を使っているからだ。何段階もセキュリティを組んでいる。


 が、私も長く生きてきたから何も対策していない訳ではない。


「なあ、もし私たちが負けたとして、このウイルスが撒かれたらどうなると思う?」

「やめろ。まるで俺のせいであいつらが死ぬみたいじゃないか。」

「実際そうだろ。こうしてヘマやっているんだし。」


牢屋の中に閉じ込めたZEROのスパイに話しかける。彼は約2ヶ月前、ちょうどドナートとZEROが衝突したくらいに送り込まれたスパイだ。彼の任務は、私たちの組織の情報を百野賢斗に伝えること。ある日の夜、予測した私は先に手を打ったのだ。


「お前らの企みも全部賢斗か知っている。」

「さあ、それはどうかな?おそらく君が捕まっているのも知らないだろうが。」


私は近くの棚から小瓶を1つ取り出す。それは私の口の中に入っているものと同じものだ。


「まだこのウイルスの対人実験をしていなくてね。君はちょうどいい研究材料になってもらうよ。」


瓶の蓋を開け、彼の頭の上に注ぐ。


「いいもの見せてくれよ。畑頼生くん。」


〇〇〇〇〇


「あっ。」

「どうしたんですか?畑さん。」


会議ももう終わりに差し掛かった頃、畑さんが急に声を上げた。


「潜入させていた俺の分身が殺された。」

「ついにか。方法は?」

「ウイルスの入った液体を頭から浴びせられたようです。向こうのトップは同じのを口の中に入れていて、自分が負けたときはそれを吐き出すんだとか。とりあえず今は特に身体に変化はないけど、おいおいまた伝えるわ。」

「お願いします。」


畑さんから新しい情報が入ってきたところで、また新しい対策を練る必要が出てきた。


「とりあえず今回の会議はここまでにして、また今度集まりましょう。でも、突入は1ヶ月以内には絶対にするので、そこんとこ頼みます。」

『りょーかい!』


今回の会議はこれで終わり。また体力を使いまくる日々の始まりだ。

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