第126話 School①

School①

 作戦前、学校に行くのはこれで最後なんだろう。こんな感じでみんなに会えなくなるかもしれないというのは少し寂しい気がする。友達の少ない俺でもそう思うのだから、百花はもっとだろうな。


「百花、大丈夫か?」

「大丈夫って何が?」


俺の隣で歩く百花はケロッとした表情を見せながら、俺のことを見る。


「これでもう行けなくなるかも知らないのに?」

「あーね。でも、あんまり気にしてないかな?賢斗がいるし。賢斗なら誰も失わずに終われるんでしょ?」

「さあ。俺にも分からないことがあるから。」


駅までの道。ほんの十数分ですら寂しく感じる。


 電車に乗り、学校に着いたらいつもの流れ。


「変人長男おはよぉー。」

「あーあーおはよ。本当に変わらんな。最初から対応が。」

「それはしょうがない。それより最近元気ないな。」

「それは…色々あるんよ。」


こいつは何故か鋭いな。もしかしたらバレることもあるかもしれない。気をつけないと。


 そんなこんなでいつも通りすぐに授業が始まり、退屈な時間が過ぎていく。俺の解放を使ったら大学範囲までフルカバーできるのだがそれはしない。変だと思われたくないから。


「ここを百野、空欄に入るのは?」


ただし、こういう時は別である。間違えたら間違えたでクラスのやつから変な目で見られる。そんなことが分かりきっているから、こんな時は解放を使うのだ。


「ヘキサフルオロケイ酸です。」

「正解。だから…」


なんて感じで答えてたら勝手に授業が進んでくれる。だから俺はこの時間を利用して、今朝送られてきた報告書を見ていた。


(やはりこっちの手には気づいていないようだな。畑さんの解放がバレていない。)


畑さんの解放である分裂は自身と全く同じクローンを5体まで作ることが出来る。しかも、それぞれの個体が自我を持っているため、相手との意思疎通が可能だ。


 そしてこれまで情報を隠す解放、『隠密』の解放を持っているのは倉間さん。彼女には、ZEROの内部の解放の種類とこの前までやっていた訓練の情報を隠してもらっていた。


 ちなみにこの2人は元から解放ができる、才能の塊みたいなものだったから、解放できるということを隠してもらっていた。


(状況はかなりこちら側が優勢に傾いている。このまま上手くいけば…)


この作戦を立てる中で考えた条件。それは犠牲者を1人までに収めること。この戦いは厳しいものになるだろう。だからといって俺が死ぬことを前提とした作戦を立てることなんて許されないんだ。

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