第123話 Intro②

Intro②

 配った資料に目を通しながら、全員が俺のほうを向くのを待つ。誰も何も喋らない。おそらく全員が誰のことも信じていないのだろう。


「とりあえず情報は理解した。じゃあ今回の作戦の説明をよろしく。」

「はい。今回の作戦。その鍵はどちらが先に脳を潰すかにあると思います。」


『脳を潰す』。比喩的な表現になってしまったが、今回の鍵はおそらくそこなんだろう。向こうの脳は組織のトップ。未だにそのしっぽは掴めていないがそういう結果になるはずだ。そして、こっちの脳は俺。透さんでもない。俺なのだ。


「向こうのトップがキング。そしてクイーンです。実質的な最強。おそらく、今の僕たちでは敵いません。」

「こっちには会長もお前のお父さんだっているんだぞ。それでも勝てないのか?」

「おそらく。父さんは見ての通りの脳筋だから絶対に勝てない。」

「よせ。褒めるな。」


父さんは恥ずかしそうに頬を掻き、大人しくなった。


「だから、奥の手を使います。これは説明できませんけど、0%を100%にする力があります。だから、僕についてきてください。お願いします。」


奥の手の説明はそのときにする。そもそも必要になるのは最終盤だから、それまでに何をするかを教えたら、みんなも混乱するだろう。それに、そいつの体力が心配すぎる。


「それでは、今回の作戦の配置を説明します。敵の主戦力は資料の通り5人。そのうち顔が割れているのは1人。シエラ・ドナートです。ドナートは…分かってる。やりたいんだろ。」


ドナートの話をしようとした瞬間、三葉と穿から視線が送られる。分かりきっていたことだが、誰にも譲るつもりはないみたいだ。


「じゃあドナートは2人と御影さんに任せます。では次に銃を使う敵のNo.3の相手を。したい人は挙手してください。」


すると、すぐに百花と河本さんが手を挙げる。


「2人ともありがとうございます。それでは相手をするのは百花と河本さん、そして透さんでお願いします。でも、透さんは向こうのトップとやるときに前線で動いてもらいたいので、できる限り2人で。透さんは援護に回ってください。」

「りょーかい。」

「分かった。」


3人はすぐに納得し、話し合いも円滑に進む。かと思えた。


「ねぇ、私って何すればいいの?」

「それは俺も同意見だ。俺たちは何すればいい?」


シャオさんとミシェルさんがそう声を上げる。せっかちな2人は自分の役割が早く決まらないから焦っているようだ。


「2人は待っててください。いい役割がありますから。」

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