第118話 一撃④

 そのあとも私は部屋を移動しながら1枚ずつ確実に的を抜いて行った。


 そして10発目まで撃ちきって、今回の訓練を終えた。


「このドアの先がゴールか。」


そう言って、ドアノブを捻る。そこに居たのは…


銃を持った河本さんだった。


―ダダダダダダダン


河本さんは的確に私の足元を狙い、私を部屋の中に誘った。一応私もちゃんと避けたので、一発も当たっていない。


「これを避けるか。さすが透さんの息子だな。」

「いきなりなんですか。さすがに死を感じましたよ。」

「ごめんごめん。ここで気抜いてたら、任務任せれてないから。」


任務の上で教わったこと。その一つに『最後の1部屋まで気を抜くな』ってことがある。河本さんもそれを知っているということは…


「もしかして、河本さんもお父さんの教え子ですか?」

「あぁ、そうだ。透さんには随分と世話になった。」


お父さんは格闘、銃、刀、特殊武器、全部扱えるオールマイティーな人だ。だから、会長の座まで上り詰めることが出来た。


「それでだ。俺がここにいるのは、百花さん。君の解放フル・リリースのためだ。」


解放。昇華した私が次に目指す場所だ。これができるようになると、更なる戦力になる。何なら、これができないとあいつらには対抗できないのだ。


 河本さんはトランクの中から1つを選んだ。そこには、私の銃、電磁銃が入っていた。


「いいか、百花さんはその銃を解放しろ。俺はその手助けしかしない。」

「それはありがたいんですけど、ここまでのものって?」

「それはただただ昇華させるためのものだ。1部屋目で昇華させて、それを継続させるために9部屋ある。それだけだ。」

「そんなまどろっこしいことしなくても。」

「それくらいしないといけないだろ。俺の教え子を選出するんだ。それが百花さん。君だよ。」


河本さんは銃口を私に向ける。もう訓練の開始のようだ。


 私も電磁銃を取り出し、残弾数を確認した。中にあるのは10発。本当にこれだけで解放までいけるのか?


「残弾数は?」

「10です。」

「じゃあそれで解放まで頑張ってな。」

「そんなぁ。」


 河本さんは一発撃った。


「撃つんなら先言ってくださいよ。」

「敵はそんなことしてくれないだろ。今は俺の事を敵だと思え。そして、俺を全力で倒しに来い。」


おそらく河本さんは、私が本気を出しても勝てないだろう。今のままじゃ、張り合うことさえできない。だから、私が解放をして、全力で立ち向かう。後先なんか考えない。解放さえ出来たら1発残っていたらいい。


「はい!」


私は力強くそう言った。

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