第117話 一撃③
次の日も同じように訓練は続く。まずは1部屋目。昨日私は射抜くことが出来たが、その感覚を取り戻すためにまだ残っている。
あれから育成班の子たちも何回も挑戦してきたが、誰1人射抜くことが出来ず、ましてや傷すらつけられない。
私は
『僕たちの銃弾はまっすぐしか進めない。でもそれぞれに個性がある。その個性を見抜いて一発を撃つとき、その弾丸は200%の力を発揮する。』
灰ほど実力のある人なら、もしかしたらあのフードの人から習っていたのかもしれない。なら、あの弾丸は近いものがあるってことだ。
「銃の個性か。」
そんな個性を掴めるほど銃を握っていない私は、なんの違いも分からない。
だから、ここにある銃を全て試し撃ちすることにした。
「ちょっと貸してもらっていい?」
「ん?弾切れとかないんじゃなかったか?まぁいいけど。」
銃を撃って、そして返して、また撃って。そんな感じの繰り返しを何発もやっていく。すると、1つの発見があった。
(全部、フリーリコイルや反動のタイミングが微妙に違う。)
0.00何秒の世界の話だが、確かに違いがある。そしてその力にも微妙に差がある。
ならばこれをどうしたらいい?
私は一度自分の銃を撃つことにした。この反動のタイミングでどうするべきなのか。その反動を抑える?それともそのままにする?
「次の一撃の効率から考えたら後者だな。」
私はその衝撃を抑えることにした。抑えると言っても力ではない。どっちか言うとその衝撃を吸収するってかんじだ。
すぅーっと息を吸って、そして吐いた。
「静かなる銃弾。」
灰の技を模倣する。けど、銃声が鳴って、そして的に弾かれた。
「違うかぁ〜。」
「どうした?いきなり空気変わったけど。」
「いやぁ、ちょっと前戦った相手の技まねしてみたんやけど、もう死んでるけどね。私が殺してしまったから。あの才能を失ってしまうのは本当に惜しかったよ。」
なんて言いながら、また引鉄を引いた。今回は衝撃を抑えるパターンではなく、衝撃をそのまま銃に伝えるイメージ。これなら銃口がブレることはない。
「静かなる銃弾。」
今度は銃声が鳴らなかった。的には弾丸1つ分くらいの穴が空き、貫通している。
「おい。」
「嘘だろ。」
『抜きやがったぁ〜!』
部屋中が歓声に包まれる。それでも私は冷静だった。
(これが昇華?)
私にとって昇華は、数々の戦いの先にあるものだった。けど、これで昇華できたってことは、その概念そのものが間違っていたということ?
私は掌の中の軽い銃を眺めながらそんなことを思っていた。
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