第115話 一撃①

 私が銃を初めて持ったのは5歳のとき。お父さんに教えてもらった、護身のための戦い方の1つだ。でもそれは戦闘のための道具と化し、そして私の手元に収まった。


 そして始まった強化訓練。私たちの監督である河本さんはこう言う。


「自分の命を守るために銃を使え。」


と。


 意味がわからない。


 別室に移動した私たちは、まず自分の銃を机の上に置いた。そして用意されていた拳銃に持ち替えて、射撃場に来た。


「僕の訓練はいたって簡単です。この1番奥の部屋までの的の真ん中を射抜き続けること。もちろん、1回でも失敗したら最初からやり直しです。最後の部屋は…これは言っといたほうがよさそうなので、言っときますね。部屋は10個あります。」


手持ちの銃は本当に10発しか銃弾が入っていない。つまりこの銃弾を切らさずに打つってことか。


「的ってのが、どんな感じなのかによるな。」


私はそう呟く。こういう訓練の場合、的が的の形をしていないのが大抵だ。動いたり、めちゃくちゃ小さかったり。そんな敵もいるから仕方ないけど、それを訓練からやるのは、こっちからしたらやめてほしい。


「そして、今回狙ってもらうのはこちらの的です。」


河本さんがかけていた布を取ると、そこに現れたのは分厚い的だった。


「今回はこれを、射抜いてもらいます。つまりこれに弾を貫通させるってことです。こんな感じに。」


河本さんは近くにいた育成班の子から銃を奪って、それを撃つ。銃弾は20mほど先にあった的のど真ん中を貫通していた。


「こんな感じを目指して頑張ってください。以上。僕は最後の部屋で待っています。」


それだけ言葉を残して、河本さんは去っていってしまう。残されたのは無力な私たちだけ。本当に何から手をつけたらいいのかさえも分からない。


「とりあえず打ち込んだらどうにかなるだろう。」


さっきの育成班の子が名乗りをあげて、最初に撃つ。弾は中心から少し外れたところに当たった。


―キン


それは硬い金属音だった。普通の銃弾ではまず破ることのできない、そんな的だった。


「こんなのどうやって破ったら…」


その子は何度撃っても変わらないその状況に挫けそうになる。


 その時、私は気づいた。いや、常に相手が何発撃ったか気にしているからか、それを気づくのは容易かった。


「君、今何発残ってる?」

「え?えっと…10発⁉︎」

「やっぱりね。ここの空間では失敗した弾は自動で装填されるみたい。」

「どうして?」

「それが河本さんの『解放』だからって理由以外に何か思いつく?」

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