第113話 正しさ⑦

 穿は解放をした。だからといって、この領域はそう簡単に踏み込めるものではない。何年も何年も刀を振り続けてやっとできるもの。


 私はずっとそう思っていた。


 けど、穿は違った。


 青白く光っている穿の刀が何よりの証明だ。今日、今ここで穿は閃青刀を解放させた。そして少しだが私の刀も共鳴しているような気がする。それも、2本とも。


 私も何かしないといけない。動かなくちゃいけない。穿がずっと動き続けているのに私はずっと見たまんまでどうする?そんなので誰を守れる?いや、守れなかったじゃないか。


「もうあんな思いはしたくない。」


私の中に戦う意味みたいなものが湧き上がってくる。1つの道標が浮き上がってくる。それが1本の細い糸になり、それが絡まって太くなっていく。


 その瞬間、柔刀は浮くような感じ、龍刃刀はずっしりとまとわりつくような感じになった。見ればそれぞれ黄色く、そして赤黒く光っている。


「やっと来ましたか。待ってましたよ。」

「すみません、お待たせしてしまって。穿。合わせる。」

「待ってたぞ、三葉。」


 穿は攻撃のリズムを崩さない。一撃ごとにその周りの空気は割れ、衝撃波がこっちまで来る。それを受ける御影さんのガラは、閻火をまといながらその攻撃全てを止めている。


 穿が割っているのは空気。そして私の柔刀は空気を操れる。もしかしたらあの割れ目の座標をズラせるかもしれない。


「『空骨奪胎エア・チェンジス』」


黄色く光った刀を空気に突き刺す。刀身は空気の中に消え、引っかかった。


(集中だ。集中。)


次に穿が割るタイミングは?いつだ?


(ここだ!)


私は刀を数cmこっちに引き寄せる。それに合わせて空気の塊が動き、割れ目がズレた。


「マジか!」


御影さんは穿の衝撃波をもろにくらって、少し後ろにたじろいだ。


 私は水蓮で穿の後ろに回る。


「それ使うなって。」

「ごめん。でも、今はこうじゃないとだめでしょ?」


御影さんは衝撃の中心になった腹を押さえている。


「一番の攻撃向きの刀は一番厄介な刀に変わりましたか。」

「すみませんね。」


柔刀がまだ刺さっていることは見せない。まだこの空間の空気は私の掌の上だ。


「穿。」

「あぁ、いつでもいける。」


私は柔刀を軽く振った。


 その瞬間私たちは御影さんの目の前に飛んだ。柔刀は時空をも切れる。つまり、私たちと御影さんとの間にある時空を切ったのだ。


「『水鏡』!」

「『火龍』!」

「「『突』!」」


御影さんの反応が遅れたところを私たちはつく。そして、この攻撃は1本じゃ間に合うわけがない。


 はずだった。

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