第4話 顔合わせ

 ため息をつきながら俺は制服から着替える。まぁ部屋着なんだが、上下スウェットじゃないだけ許して欲しい。今から誰かに会うのにって感じの格好なのは知ってるから。


 そうやって着替えてまたリビングへ。ここは暖房がかかっていて暖かい。ほぼ唯一のくつろげる場所であるソファーは美海が占領してるんだが。


「-・ ・・ --- ・-・・ -・-・・ -・ (誰か来た。)」


さっきまでスマホをいじっていた美海がそうやって起き上がる。家の近くになってくると、美海は足音を聞いてこうやって言うのだ。


 美海はこうなると自分の部屋にこもってしまう。完全防音。家自体が振動した時はさすがに音があるみたいだが、喋り声はほとんど聞こえないらしい。その聞こえるちょっとが五月蝿いって文句を言うんだが。


 美海が上がって数分後、家のインターホンが鳴った。


「はーい!」

『ごめんごめん。鍵忘れたわ。』


そうやってスピーカーの向こうで言っているのは父さん。百野力。この感じでいくと筋肉バカだなと思うだろうがそうでは無い。運動神経バカだ。50m走3.5秒(特に何もなし)、最高到達点603cm(特に何もなし)、泳げばインターハイに出たとか。100m先にいる人を突っ込んできているトラックから守ったという伝説もある。ちなみにその人が母さんらしい。知らんけど。


 母さんがドアを開けると、すぐに父さんともう1人入ってくる。その顔に俺は見覚えがあった。この人だけは絶対に間違えることがない。あんなに話している隣の席の女子だけは間違えることがない。


「潜さん、なんでここに?」

「百野さんの子供って、百野くんだったの?」


潜さんは驚いて、目を見開いている。そんな俺たちを父さんは「ん?」みたいな顔で見ていた。


「あぁ、2人は学校で知り合いなのか。」

「知り合いも何も…ね?」

「そうそう。隣の席です。」


備考、ただの隣の席でたまに話すくらいの存在だ。(これ大事!大事なことなのでもう1回。これ大事!!)


 父さんは「ふぅーん」と納得したように、いや、安心したように頷く。


「ってことはお互いの存在は知ってるってことか。よかった。お前には仕事しかないと思ってたからな。」

「そんな悲しいヤツな訳ないだろ。てか、そっちはなんで知り合いなんだよ?」

「俺たちは…俺たちはな…ってか、百花ちゃん、話してないのか?」

「ええ、私も百野くんがこっち側だと知らなかったので。」


ん?こっち側?ってことは…


「潜さんって…」

「そう、ZEROの1人。」

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