第3話 うちの家は…

「-・ -・ ・・ ・- -・・- (ただいま)」


ドアを静かに開けて、足で床を叩いて帰ってきたことを伝える。


「--・-- -・-・ -・-・・ -・・- -・ -・・・ --・-・ ・--・ ・-・-- ・-・-- ・・ ・-・-- ・- ・--・ -・ ・-・-- ・・ --・-・ -- (兄貴また走って出ていったでしょ?)」


リビングの方からそんな信号が聞こえてくる。音からして相当怒っているな。


「---- ・・ -・・・- ・-・-・ ・-・-- (ごめんて)」


俺はそうやって謝って、リビングのドアを開けた。そこに寝転がっているのは、もちろん妹。ソファーにだらんと横たわって、左足だけが床に着いている。しっかりと耳栓のヘッドホンの二重装備で、音もなくソシャゲをやっている。


 百野美海。中学2年生だが、もちろん学校には通っていない。その代わり独学で学んだインターネットの技術と、圧倒的ゲームセンス、そして何よりその耳で生きていると言っても過言ではない。


 俺は音が立たないようにストンとカバンを置き、手を洗う。「ふう」と声を出しそうになるのを必死に抑えながら。


「--・-- ・-・-・ -・ -・ ・・-・ -・・- -・ ・-- ・--・ ・-・-- -・--・ ・・-- (あんた達またやってるの?)」


防音室から出てきたのは母さん。百野瞳。百野家の目だ。某元日本一高いビルだったあべのハルカスから下の街を歩いている人、一人一人の顔を判別できるくらい目がいい。未来視とかそんなことは出来ないけど、直線上の千里眼って感じだ。


「--・-- --- -・・・ --・- -・-・ -・-・・ ・-・・ ・・ -・ー -・--・ ・- ・-・-・ -・ ・・  (あれは兄貴が悪いんだ!)」

「・-・・ ・・ ・--・ ---- ・・- 

・- ・--・ ・-・-- ・-・ ・- -・-・ ・--・- ・・-・・ ・-・・ ・・ -・・-・ ・-・-・ ・・・- ・- ・・- ・-・ (学校行ってないニートが文句言うな!)」

「--・・ -・ --・ ・・-・・ -・・-・ ---・ ・・-- ・・- ・・・ ・- -・-・ --・-・ ・-・-- (2人ともそのくらいにして)」


ヒートアップしてしまった俺たちを母さんが止める。テーブルの上に置いたのは、俺たちの好物のドーナツだ。


 静かに手を合わせて食べ始める。さっきまで言い合っていた美海の様子からして一時休戦みたいだ。


「-・ --・-・ ・-・・ ---- ・・-- --・-- ・・-・・ ・・-・・ ・・- -・-・- ・-・-・ -・-・ -- -・・・ ・・ --- ・-・-- ・-・ ・-・・ ・--・ -・ ・--・ -・-- (たしかこのあと父さんに呼ばれてなかったっけ?)」


母さんがそうやって言ってくる。忘れてた。

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