第2話 普通の学校生活

「なぁ、今日も朝から無音か?」

「しょうがねぇだろ。妹に怒られるんだから。お前たちにもこの気持ちが分かって欲しいくらいだ。」

「なりたかねぇよ。絶対に!」


そうやって言いたいことだけ言って自分の席に戻っていく。うん。普通の高校生っぽい。


「朝から大変だね。」

「ほんとそれ。おはよう、潜さん。」

「おはよう、百野くん。」


俺の周りはそんな奴らばっかだけど、唯一ちゃんと話せる人と言えば、隣の席の潜さんだ。


 潜百花。俺の隣の席の女子だ。癖のない真っ直ぐな髪は黒く光り、毛先だけは少し茶色っぽい。そんな髪は肩よりも少し長いくらいで、普段は後ろで束ねている。思わず目を奪われてしまうような顔立ちと、誰もが憧れてしまうようなスタイルは、クラス一の称号に相応しいだろう。


「そういえばあの話聞いた?東和銀行のシステムがハッキングされかけたんだけれど、すぐに復活したって話。」

「あぁ、あれな。怖いよな〜。自分の口座がある銀行だったら絶対に嫌。」


まだニュースにもなってない話は少し不思議だけれど、最低限の知識はあるので話を合わせる。もしかしたら見ていないだけでネットニュースには上がってるのかもな。俺はそういう話には疎いから。


 なんて話している間に、もう始業のチャイムが鳴る。すぐに1時間目の教科担当の先生がやってきた。


「起立、気をつけ、礼!」

『お願いします。』


学級委員長でもある潜さんが号令をかける。そして1時間目の授業が始まった。


 今日一日の授業は、一言で言えば一瞬だった。あっという間に昼休みにタイムスリップしていて、あっという間に6時間目が終わっていた。寝てたんじゃねぇかって?何故か知らないがノートだけは全部完璧に書けてるし、頭の中にも入っているからどうやらそうではないようだ。どこに行ったんだろ。俺の8時間くらい。


「百野くん、また寝ながらノート書いてたよ。私もそんな能力が欲しいなぁ〜。」


目覚めた俺に潜さんは笑いながらそう言う。実際こんなでも成績はしっかり取れてるし、何なら学年1位も経験済みだ。


 机の上に溜まったプリント類をカバンの中に入れて、机の中の教材をロッカーに直す。正直使ったかどうかも覚えていないものばっかりだが、使った形跡があるからおそらくそういうことなんだろう。


 担任のホームルームだけはしっかりと受けて、カバンを持つ。


「じゃあまた明日ね。」

「ちょーなん!今日カラオケ行くんだけど、お前も来ないか?」

「ごめん、この後予定あるから。」


別に断るための口実じゃない。一昨日、父さんから急に言われたんだ。「予定空けとけ」って。


「そうか。じゃあな。」

「また誘ってくれ。」


俺は教室を後にした。

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