うちの家は変わっている…らしい
136君
第1話 普通の生活
「ふわあぁぁぁ。よく寝た。」
外はまだ薄暗い。まぁ、この時間に起きないと学校に間に合わないからね。
ピッチピチの高校1年生になってから早1年半。毎日とは言わずとも、週6でこんな生活をしていると、さすがに身体にも堪えてくる。ような気がする。
少しずつ使い古した感が出てきたカッターシャツに袖を通し、紺色のスラックスを履いてベルトをしめる。ネクタイの色は臙脂色。きつくもなく緩くもないくらいにしめて、最後にセーターを着た。
鞄の中に忘れ物がないのを確認して部屋の外へ。もちろん、ブレザーは手に持っている。このブレザーもスラックスと同じ紺色だ。内ポケットとか外ポケットとか色々ついているので使い勝手がいい。しかし重いのがもうひとつなところだ。
バタンとドア閉めると妹が怒るので静かに閉める。カチャンって音も出さないように、スッと。
―スッ……
無事に音もなく閉まり、まずは一息。そして廊下の明かりでブレザーを確認する。今日もまたホコリ1つ付いていない、新品みたいなブレザーだ。ホコリが1つでも付いていると、母さんが五月蝿いからな。
階段もこれまた音を立てないように降りて、リビングへ。防音室の扉を開けて中に入った。
「朝飯朝飯と。」
この中では一応普通に過ごせる。でも本当にこの中だけなのだ。本当に不便な生活だ。
朝飯と一緒に作るのは、今日の弁当と、妹の分の3食。別に冷めてもいいって言ってくれるだけまだありがたいが、朝の時間のほとんどは調理に割かれてしまう。
「これで今日の朝は終わりっと…うわっ!もうこんな時間!?早く食べないと。」
結局、朝飯を食べ始められるのは出発の10分前。俺は朝をしっかり食べないと、昼まで動けない派なので、無理矢理腹に突っ込む。
そんなこんなで、結局は2分遅れて出発して、走って駅に向かう。外はもう寒くて、吐く息は白く消えていく。
「絶対足音がうるさいって怒られるな。帰ったら覚悟しとかないと。」
駅まで走って電車にギリギリ間に合った。滑り込むように電車に乗りこんで、ブレザーの前を開ける。こうするだけで少し涼しくなるのだ。
学校までは基本的に1人。寂しくないかって?勿論寂しいに決まっているさ。でも、俺は俺なりに普通の男子高校生になろうとしているんだ。
「おっ!変人長男がやってきたぞ!」
「やっと来た!」
「今日もギリギリお疲れ様!」
「毎日毎日、そんな感じにされるとこっちが困るんだが。」
盛大に迎えられて、廊下側3列目の1番後ろに座る。
俺の名前は百野賢斗。普通になりたい男子高校生だ。
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