第49話 白銀の魔女
〝ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!〟
虹色に輝く蒸気の柱が立ち昇った。
青い空の一点に集まった魔力の塊が落下すると、雪と氷のエネルギーが一瞬で解放されて爆発したのだ。おかげで辺りは水浸しだ。
『こっ、これは凄まじい攻撃です!』
『見事だなっ、だが惜しいぞっ』
〝バッサッ、バッサッ、バッサッ〟
だが、当たらなければどうと言うことはない。
「あっ! あんなんズルイわっっ!!」
『あーーとっ、空だっ! 魔王が空を飛んでいますっ!』
正確には、羽をばたつかせてフラフラと浮いている、が正解だ。
『凛子さんっ、やっぱり翼のあるキャラクターは飛べるのですねっ!』
『もちろんだっ。ただし魔力の消耗が激しいからな、レベルは高くないとダメだぞっ。それに……』
〝ドズンッッ!〟
『あーーとっ、魔王が地面に激突しましたっ!』
『基礎体力が必要だっ!』
「痛ててっ……」
『魔王は運動不足だなっ』
「恋紋っ、今だーーっ!」
「恋紋ちゃん行けーーっ!」
「……あかん…………魔力切れや……」
『これは残念っ! 後一息でしたっ』
〝ポポ~ン!〟
『小石川 恋紋のレベルが27になりました。《
〝キラキラキラランッ!〟
魔法使いの体が光り輝き、その姿が突然変わった。ゴシック様式だった衣装は白い着物になり、金色だった長い髪は黒くたなびいて水晶の簪が一段と映えるようになった。白い鼻緒の草履が古めかしい。
『なんとっ、ここで魔法使いがレベルアップしました! しかも変身! そして〝称号〟とは何でしょうかっ。凛子さんっ、公式に発表はされていませんが、解説をお願いしますっ』
『よしっ、いいだろう。〝称号〟とは、その道一筋に修練を積んだ者にのみ与えられる二つ名だ。レベルが20になると転生できるのはみんな知ってると思うが、実はキャラクターを変えずに成長を続けると、どこかでプレイスタイルに合わせた進化をする。小石川は雪の魔法をある程度極めたからな、ここにきて進化をして〝白銀の魔女〟になったんだ』
『〝進化〟ですか、それはレベルアップとはまた違うものなんですね』
『その通りだ。進化の称号は色で表す。白から始まって黒、赤、紫、金の5段階しか存在しない。そして、進化した者は特別なスキルや魔法を習得するんだ。実装しといて言うのも何だが、かなりヤバいぞ』
『しかし、残念ながら白銀の魔女にはもう魔力が残っていませんっ』
『いや、白銀の魔女は面白いスキルを獲得しているっ』
嫌な予感がする。
『〈雪女のため息〉は、生命力が1になる代わりに、残りを全て魔力に変えることができるんだ』
おいっ! それは反則だろう!
『おまけに、新しく覚えた魔法がな……』
白銀の魔女が杖を高く掲げた。
「いらっしゃ〜い! 雪ダルマ
『禁呪なんだ』
空が急に暗くなったかと思うと、黒い煤のような粉雪が降り始めた。
「恋紋行け行けーっ!」
「恋紋ちゃんやっちゃえーーっ!」
黒い煤は俺を中心に渦を巻き始めた。おそらく、空を飛ぼうが分身しようが追いかけてまとわり付いてくるのだろう。このままでは逃げ場がない。どんな魔法か不明だが、攻撃して払い落とすべきだろう。
「サンダーアロー!」
〝パチンッ!〟
落雷をまるで静電気のように粉雪が弾いてしまった。
「ファイアドロップ!」
〝ポンッ!〟
飛び出した種火が粉雪で消えてしまった。
最後に魔力のシールドを張ってみたが、これもすり抜けて入ってくる。もはや打つ手がない。そうこうする内に、まるでブラックホールのような雪の闇で身動きもできず、何も見えなくなってしまった。
『これは魔王危うしっ!』
「最後の仕上げやっ! 呪い
〝ドンッ! ドドドドドドドドンッ!〟
なぜか急に周りが明るくなった。
何が起こったのかよく分からないが、痛みはない。どうやら黒い雪の闇は爆発したのではなく、中心の俺に向かって収縮したらしい。
「?」
「!?」
「!?!」
周りの観客が静まり返っている。
『こ、これは一体どう言うことでしょうかっ?!』
そうだ、これは一体どう言うことだ!?
「いらっしゃ〜い!」
どうして水たまりに映る俺の姿が、黒い雪ダルマなんだ?!
「ほな、始めよか……」
白銀の魔女は白い息を吐くと、杖を氷でできたバールのような物に変えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます