転生剣王、身分を隠して城下町でこっそり人助けをする~転生先の王族生活が不自由なので、聖女と一緒に「この紋章が目に入らぬか!」をして悪党から人々を救います~
第14話 女神のスキルで騎士たちにさらに無双
第14話 女神のスキルで騎士たちにさらに無双
「
騎士たちが階段を上ってくるなか、俺はスキル名を叫んだ。その途端、屋敷の灯かりが消失し、一瞬の暗がりが訪れた。魔術で造られた道具――魔道具の照明の灯かりを俺が吸い上げたからだ。
「な、なんだ!? 何も見えない……!」
「照明の魔力供給が切れたのか!?」
「馬鹿な! すべての灯かりの供給が一斉に切れることなどないぞ!?」
騎士たちが動揺の声を上げる。
次の瞬間、まばゆい輝きが俺の手のなかに現れた。暗闇を斬り裂くように光を放つ、黄金の色の剣。
「おー! レオ、それはなんの聖剣!?」
「光の聖剣だ」
剣を一閃すると、光の粒が弾けるように宙を舞う。十分な光を聖剣に変えたことで、屋敷のなかに灯かりが戻る。騎士たちがはっと我に返るが、もう中二階に俺の姿はない。
「き、消えた!?」
「まさか……逃げたのか!?」
「お、王子はどこだ!?」
「――ここさ」
一瞬で俺は騎士たちのど真ん中に出現していた。そのまま目の前の騎士へと斬撃を放つ。
「ちょっと痛いぞ?」
「ぎゃ――!?」
おそらく誰にも太刀筋は見えなかったはずだ。軽鎧が真っ二つに裂け、同時に凄まじい衝撃波を喰らって騎士は吹っ飛び、屋敷の壁に激突した。それを見たジグアスが悲鳴じみた声を上げる。
「な……なんなんだ、その力は!?」
「言ったろう? 光の聖剣さ。俺のスキルで生み出したんだよ」
「ス、スキルだと!?」
「こいつを使っている間、俺は光の速度で動くことができる。人ひとりの質量が光速で動くからな、斬撃には衝撃波のおまけ付きだ。だいぶ強いぞ?」
「な、な、な……っ」
ちなみに衝撃波の度合いは最小限に調整している。ひと一人の質量が光速で動いたら、本来は街一帯が吹っ飛ぶ以上のエネルギーが出てしまうので、繊細な制御が必要だ。
騎士たちのなかで俺は「さてと」と剣を構える。
「これでも一応、実戦経験は豊富なんだ。王族の義務で戦場には何度も出てるからな。安心しろ、急所は外す。全部終わったらポーションの聖剣で傷も治してやる。ただし、向かってくるなら容赦なく斬るからな? 死にはしないけど、死ぬほど痛い思いはしてもらうぞ?」
「……っ」
騎士たちの表情に大きな戸惑いが浮かぶ。しかしそれでも主人の意向には逆らえないのだろう。仲間同士で視線を合わせると、懸命に斬り掛かってきた。
「レオンハイド王子、お覚悟を……!」
「ごめんな。覚悟するのはお前たちの方だ!」
光の粒子を残し、俺の姿がかき消える。一瞬でエントランスの端まで駆け、次の瞬間には何人もの騎士たちが斬り裂かれて吹っ飛んだ。アスティが目を輝かせて飛び跳ねる。
「きゃー! レオつよーい!」
「はは、照れるぜ」
聖剣を構えて転身。床が陥没するほどに蹴り出し、再び光速で逆側の端へ。俺の姿が消えた瞬間、騎士たちが悲鳴を上げた。
「ちょ、こんなのどうやって戦えば――ぎゃあ!?」
俺が移動する度、騎士たちが吹っ飛んでいく。まるで嵐のように一方的な戦況を見て、リーダー格らしい騎士がジグアスに叫ぶ。
「無理です! 敵いません!」
「……!? そ、それが騎士の言葉か!?」
「武人でないジグアス様はご存じないでしょうが、この国で剣を志す者の間では有名な話です! レオンハイド王子は――この国で最強の剣士なのですよ!?」
「さ、最強の剣士だと……?」
「そうです! すでに王国の四大聖騎士すら超え、まだ王子の身分ながら付いた通り名は『フェリックスの剣王』! さらには何やらスキルまで持っている様子……っ。我々に太刀打ちできる相手ではないのです……!」
「な、なんということだ……ジグアス殿、申し訳ありませんが、わたくしめはこれにて失礼を――はぎゃっ!?」
騎士の言葉を聞き、マルコスが逃げようとしていたが、ちょうど立ち止まろうとしていた俺が踏みつけてしまった。まあ、いいか。そもそも光速から逃げられるわけないって話でもあるしな。
で、最強うんぬんの話も実は真実だ。俺はもともと剣はわりと得意で、あれこれ稽古しているうちに四大聖騎士と戦っても勝てるようになった。こと剣技において、この王国で俺の右に出る者はいない。そこに女神のスキルも加わったので、わりと本当に敵なしだ。
マルコスを踏んだまま、俺はジグアスへ聖剣の切っ先を向ける。
「ミーアに謝れ。お母さんのために頑張ってた彼女に粗悪品の回復薬を売りつけていたこと。怖い思いをさせたこと。女神の罰なんて馬鹿な話をしたこと。何よりあの子を売ろうとしたことを。今すぐちゃんと謝れ」
「ぐうぅ……っ」
ジグアスはひどく葛藤した表情でうめいた。子供に頭を下げるなんて考えたこともないのだろう。しかし歯ぎしりしつつも、ジグアスはやがて観念したように床に額を擦りつけた。
「も、申し訳ありませんでした……っ」
俺は肩の力を抜き、中二階を見上げる。
「……ってことだ。ミーア」
「馬鹿め! 誰が貴様らになんぞ頭を下げるか!」
目を離した一瞬の隙にジグアスは剣を手に取っていた。騎士が落としていたものを拾い、切っ先を向けて俺に突っ込んでくる。……や、うん、あのな?
「レオ、危ない……!」
「あー、平気平気。ぜんっぜん大丈夫だよ、ミーアちゃん」
ミーアが悲鳴を上げ、アスティが気軽に笑う。実際、大丈夫だ。だって光速だからな。
「よっと」
「なにぃ!?」
光の粒を残し、俺は瞬時にジグアスの背後にまわった。まあ、スキルを使わなくても避けられたが、せっかくだから目の前で消えて見せた。ジグアスは起死回生の一突きを躱され、額から冷や汗が噴き出ている。ちょっと腹が立ったので、俺はあえてゆっくりと聖剣を振り被った。
「反省してないようだな?」
「や、やめろやめろやめろッ! 私はフェリックス王国の裁判官だぞッ!?」
「こっちは王子だっての」
光速の一閃を振り下ろす。
「悪いことしたら女神の罰があるんだろ? ――これがその罰だ」
「ひぃぎゃああああああッ!!」
衝撃波を受けてジグアスの体が吹っ飛んだ。鮮やかに宙を舞い、壁に激突。ぐらりと床に落ちると同時に、俺は鞘に納めるような動作で光の聖剣を消した。
ふう、やれやれ。これで――。
「これで一件落着だね!」
「いやそれ俺が言うことじゃないか!?」
アスティに一番良いところを持っていかれ、俺は何とも言えない気持ちで叫んだ。
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