第10話リベンジ
富士に動画を送るとすぐに電話がかかってくる。
「本当に謝罪動画撮ったんだ。凄いじゃん」
開口一番で僕を褒めてくれる富士に電話越しでは見えないのに頭を下げた。
「じゃあ約束は守るよ。今からこっち来れるかな?」
「はい。すぐに迎えます」
「わかった。じゃあ契約書にサインする必要があるから判子と銀行の通帳を持ってきて」
「了解です。すぐに向かいます」
そこで電話を切ると俺は高校生の時にアルバイトをするために作った通帳と判子を持って家を出てた。
電車を乗り継いで目的地まで浮かれ気分で向かうと富士と対面する。
「おつかれ。それじゃあ契約と…その後の話をしようか」
「はい」
そうしてそこから契約内容の説明を受けて、それらをうんうんと聞いていた。
疑問に思ったことには口を挟んで再度詳しい説明を受けていた。
最終的に契約書にサインをして判子を押すと富士は僕に向き合った。
「中田くんが打ち上げの時に言っていたことを覚えている?」
「はい。いじめ撲滅を語りました」
「そうだね。でも君は加害者側だったけど。被害者の気持ちは分かるの?」
「分かるとはっきりは言えません。俺は大学で仲間はずれになっただけで…いじめを受けていたわけではないので…でも…少なからずわかります」
「何が分かるの?」
「独りは怖くて辛いってことです。独りでいる人間に救いの手を差し伸べてくれる存在がどれだけ大きいかも…今の僕には分かるんです」
「そうか。じゃあ配信でその話をしてよ。叩かれると思うけど。過去の自分にけじめを付けるために必要な禊でしょ?知らん顔で自分だけ気持ちよくなるなんて許されないだろ?」
「そうですね。世間にもしっかりと謝ろうと思います」
「そんな大きな問題じゃないなんて思わないでよ?いじめは立派な悪だからね?もうどんな人間が目の前に現れてもいじめは絶対にしないって誓って欲しい」
「誓います。と簡単に言うことは出来ますが…これからの態度で証明します」
「あぁ。それで良い。じゃあ後は契約違反しない程度に配信してくれると助かるよ。これからちゃんとサポートするから。大会で優勝できるぐらい頑張って」
「ありがとうございます。頑張ります」
そんな言葉を最後に俺は富士の元を後にした。
帰宅してすぐに配信を始める。
もちろんプロプレイヤーになった俺が過去にしてきたいじめの内容を口にして世間に謝罪をする内容が始まりの動画だった。
コメントでは散々のバッシングを受けて心を痛めたが…。
あの時の七瀬に比べたら、これぐらいはそよ風のようなものだろう。
そんなことを感じながら許される訳では無いが謝り続けた。
きっといつまでもアンチは居るだろうし、俺のことを面白がってネタにし続ける人も居るはずだ。
けれど、最後は結果で示すしか無い。
ここから俺は全力で誇りを持ってゲームに集中していくのであった。
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