第4話どう転がる?

夜の店で出会った同級生は毎日連絡をしてくる。

朝目覚めてスマホを手にすると必ず通知が何件か届いていて俺は表情を歪める。

返事をするのも億劫で未読の状態で職場に向かうのであった。



返事が来ない日が続いていた。

私に興味がないのだろうか。

あの日以来、お店に来ることもなかった。

どうにか連絡を取り付けて予定を擦り合わせて食事にでも行きたいところだ。

しかしながらやっと返事が来ても彼はのらりくらりと本格的な恋愛へと発展しないように躱し続けているように思えた。

私もタイミングを間違えたら平気で振られる未来が見えていた。

それなので慌てずにじっくりと事を進めていこうと思うのであった。



元カレが言っていた太っていた先輩の話を何故か思い出していた。

合コンの為に集まった飲食店で女性陣は先に集まっていた。

「向日葵は最近彼氏と別れたんでしょ?今日は良い人見つかるといいね」

南向日葵というのが私の名前であり、元カレはSEの仕事を個人事業主として起業していた。

同棲をしたいと言う私を鬱陶しく思ったのかもしれない。

断られた私は諦めを付けて別れを告げたのであった。


そして、本日は職場の人間と合コンへと赴いた次第だ。

「今日は七瀬さんも来てくれるらしいよ。めっちゃイケメンだけど…誰にも興味なさそうだから期待しないほうが良いよ」

職場の先輩は私に忠告のようなものをするのだが、きっと彼女らも七瀬という男性をひっそりと狙っているのだろう。

初めて合コンに現れた私に先んじて釘を刺してきたのだろう。

「そうなんですね。別れてすぐに切り替えられるほど私も器用じゃないですから。心配ないですよ」

あなた達の気持ちはわかっているとでも言うような言葉を口にすると端っこの席に腰掛けた。

次第に続々と男性陣が姿を現すと今回幹事に名乗りを上げていた二人は顔を合わせて仲良さげに話を始めた。

「福田くん。今日はよろしくね〜」

「牧さん。こちらこそよろしくです」

「もう全員揃ってる?こっちは揃っているよ〜」

「うん。こっちは…七瀬さんがお手洗いに行っているけど…皆揃っているよ」

そんな会話が端っこに座る私にも漏れ聞こえてきて件の七瀬という人物の名前を思い出していた。

「じゃあ好きな席に座ろ〜」

端っこで誰とも話したくないオーラを放っていると目論見通りに私の目の前には誰も腰掛けなかった。

「ごめん福田。遅れた…」

「良いっすよ。七瀬さん。空いている席に座ってください」

「了解」

そして想像以上にイケメンで筋肉質の彼は私の目の前の席に腰掛けた。

何も言わずにただ黙って飲み物を後輩に頼んでいる七瀬は私のことを見ようともしなかった。

感じが悪いような気もしたが、これだけのイケメンならこんな塩対応で普通かもしれない。

「七瀬さんって…◯◯高校出身ですか?」

私のことを初めて見た彼と視線が交わってしまう。

無意識にもどうしようもなく恋をしてしまうような彼を見て、私の心は痛いほど高鳴った。

「何で?」

意味は分からないが疑問形の言葉が飛んできて私の頭の中もクエスチョンマークでいっぱいになった。

「えっと…元カレがそこ出身で…。七瀬博己って人の話を聞いたことがあるんですよ」

「ふーん。どんな話を聞いたの?」

「昔は凄く太っていていじめられていたって…」

「そっか…」

「あ…!でも!凄い人だって元カレは言っていました」

「何で?」

「えっと…全校生徒にいじめられていたのに三年間皆勤賞で学校に通っていたって…相当ハートの強い人間だって言っていました。いつか謝りたいとも…」

「謝りたい?」

「はい。元カレは後輩だったらしいんですが…いじめのような発言をしてしまったことを後悔しているんだとかで…」

「そう。それだけ聞けたから本人も許しているんじゃないかな」

「え…?本人じゃないんですか?」

「さぁね。でも本人が許すって言っていたと伝えて欲しいな」

「はい。それじゃあ連絡先教えてもらえませんか?」

「うん。元カレには俺の連絡先を教えないでよ?」

「はい。ありがとうございます」

二人きりで話が盛り上がってしまい周りに申し訳ないと感じていたが…。

周りも一対一でお目当ての男性と話をして過ごしていた。

「合コンってこんな感じなんですね」

「俺もよく知らないけど…軽く飲んだら帰るよ」

「そうなんですか?じゃあ私もそのタイミングで帰ります」

「そう…」

七瀬は適当に相槌を打つと合コン開始から一時間程度で席を立った。

後輩の福田稔ふくだみのるに一万円札を手渡すと私とともに店を後にするのであった。



店を出ても本日出会った南向日葵みなみひまわりという女性は俺の後を付いてくる。

駅が目的地だと思われたため何も疑問に思わずに特に何を話すわけでもなく帰路を共にする。

「じゃあ俺はこっちだから」

そんな言葉を口にして駅近くのマンションへと向かうために歩を進めようとする。

「え?さっきの言葉って誘ってくれたわけじゃないんですか?」

何をどう勘違いしたのか南向日葵はそんな言葉を平気な顔で口にした。

「家に来るつもりだったのか?初対面の男性の家に?」

「はい。話に聞いていた通りに誠実そうな男性だと思ったので…それに明日は土曜日ですし。お休みでしょ?」

「はぁ〜…男性をそんな簡単に信じるものじゃないぞ?」

「でも…良いですよね?」

「何が?」

「家に行っても…」

そこまで話をして俺は薄々気付いてしまう。

彼女は俺に少なからず好意を抱いているのだろう。

別に俺は誰とも関わりたくないわけではない。

仕方なく頷いてみせると続けて口を開く。

「何もしないからな」

そんな強がりのような言葉に南はキレイに微笑むと頷いて俺の後を付いてくるのであった。


次話予告。

主人公の自宅に初めて女性がやってくる…。


復讐計画は始動するのか?

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