第四話「アンティークカメラ」
今の時代カメラはデジタルですし買い取って売る仕組みもしっかりしていますから、基本的に元の持ち主の履歴が残るなんてことはないわけですが……私のように骨董品でけっこう年代物のアンティークカメラを集めている人間は、そういう痕跡を目にする機会が多いんです。特に古いフィルムカメラなんかは、撮影済みのフィルムが残ってることが割とあるんです。そして……そういったものを発見した時、私のような物好きはわざわざ現像してどんな写真か確かめるということをするんですね。大抵は、普通の写真ですよ。なにげない景色だったり、記念写真みたいなものだったり。
1個だけ、変なのがありましたけどね。
どこか忘れましたが、とりあえず日本ではない外国産の古いフィルムカメラに残ってた撮影済みフィルムでした。私はいつものように現像して、その写真を見てみたんです。風景で場所が特定できるほどの情報はありませんでしたが、どこかの島の海岸で撮られた家族写真のようでした。両親と子供二人が一列に並んで笑っている、ごくごく普通の微笑ましい写真でしたよ。
その人たちが手に持っているものを除けば。
生首を持ってたんです。
しかも、その生首の顔が……信じられないと思いますが、映ってる人たちと全く同じ顔なんです。しかも同じように、笑ってるんです。不気味という一言では到底済ますことのできない、とてつもない不快感と恐怖に襲われました。えぇ、すぐお祓いしてもらいましたよ。心の底から見たことを後悔しました。
あれは、間違いなく本物です。今の時代「心霊写真が撮れた」といっても、即座にCGや加工を疑われてしまうじゃないですか。そういったことが、誰でも簡単にできてしまうから。でも、あれは違う。あのような古い機器に残されたものには、有無を言わさぬ説得力があります。当然CGなんてない時代、機器の精度や映り加減、光の影響やらで片付けようにもあんな光景が映るはずがない。あれは絶対に、この世ならざる者が干渉しているんです。
……いや、むしろそうであってほしいんです。
だって、一番恐ろしいのは。
あの写真が、ただ現実を映したものだったらって考えたときですよ。
いったい何がどうなったら、自分と同じ顔をした生首を持って、笑いながら一列に並んで写真を撮るっていう状況になるんですか。
そっちの方が、よっぽど怖いじゃないですか。
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