【裏ディスク12】イベントの強行
「うわああああ!」
イベントから逃げ出して自由になった為か、ベランダから自由落下する
が。
「ギョリュ!」
「ヌミョ!!」
「ピシャア!!!」
三匹の気合いの声とともに、アタシたちの自由落下が止まる。
「無理ギョリュ無理ギョリュ無理ギョリュ!」
「重いヌミョ! 俺たちはそこまで高機能ナビキャラじゃないヌミョ!」
「やっぱり二人抱えて飛ぶとか無理ピュシャ!」
「音速で飛べんならアタシらぐらい軽いだろうがっ! 頑張れ三人とも!!」
アタシが叱咤激励すると、恐ろしいぐらいにブサイクに顔を歪めた三匹は、なんとか落下速度を緩め、そして無事、地面へと着地した。
するとそこで──
「大丈夫っ?! よし子!」
「ハルト殿下、ご無事ですか?!」
「姉ちゃん凄えー!!」
草むらに隠れていた
健太は腕に、子猫姿の
「さて逃げるぞ!!」
アタシは
「よし子……ッ!」
「ハイハイ、よく耐えたね。偉いぞハルト」
その背中を、アタシはポンポンと叩いた。
暫くそうしていたが、少しして
その顔は、ぐっちゃぐちゃに泣き笑いしていた。
***
「さて。無事、イベントをキャンセルしたぞ。問題はこっからだな」
林の中にあったちょっとした開けた場所で、アタシは腕組みする。
他メンバーと
「なんで……ここに、ナーシルとスヴェンがいるんだ? 俺たちは、イベント順にしか動けないハズなのに……」
泣いて目を腫らした
「俺はすぐにでもよし子の元に行きたかったのに、舞踏会会場から動けなかった……」
悔しそうにそう呟く
「いや、俺たちもそれぞれの場所で待機してたんですよ。そしたらそこに……よし子が現れたんです」
「ビックリしたよね! ハルトの舞踏会イベント直前だから、よし子が部屋から出たらイベントが始まっちゃうのに。
始まる前の状態でよし子が現れたから」
「……どういう事だ?」
そう首を傾げる
「よし子が部屋の扉を開けるとイベントが開始されるギョリュ。だから、よし子は窓から脱出してナーシルとスヴェンが待機してる場所に向かったギョリュよ」
「……あの時も、よし子と健太を連れて空を飛ばさせられたヌミョ……」
「ちょっと身体が伸びたピュシャね。長茄子にジョブチェンジする所だったピュシャ」
「ナーシルとスヴェンにも、その時に意思の確認した。この世界に残るのか、現実世界に戻るのか」
アタシはその時の事を思い出しながらそう苦笑した。
「……で、答えは?」
「バカ王子っ! ボクたちがここにいる時点で察しなよ!」
「分かってる
そう二人が応えると、
「で、こっからが問題なんだよねー。『荒波の
健太が、二匹とちびキャラを膝の上に乗せたまま、腕組みしてそうウーンと
「全員お持ち帰りエンドを迎えるには、全員のイベントをキャンセルして、
そこまで語って、健太が
「それがギョリュな……
このゲームの世界に戻ってきた時点で、俺の好感度は既にMAXになってしまっていたギョリュ。
本来であれば、イベントをキャンセルしつつ、少しずつ好感度を上げなければならなかったギョリュに、既にMAXだったせいか、バグって俺のイベントフラグを踏めなくなってしまい、全員お持ち帰りエンドが発生させられないんだギョリュよ」
困ったように、そう腕組みする
「お持ち帰りエンドが……発生させられない……」
絶望にも似た声を吐き、
みんなもそれぞれ、難しい顔をして黙りこくる。
アタシは一人、唇をひん曲げて考えた。
「もっかい確認させて? 今一応、全イベントがキャンセル扱いになってるんだよね?」
「でも好感度が、これ以上上がらないから、フラグが踏めないんだよね?」
自分の唇に触りながら、アタシは一つ一つ確認していく。カッサカサだなぁ。前までは煙草を吸うからリップ塗ってもすぐ取れちゃうので、そもそも塗る習慣がなかった。今度から、ちゃんと塗っとくかァ。
なるほどね。
なら──
アタシはその場からよっこいしょと立ち上がり、
「な、何ギョリュ?」
突然近寄られたせいか、
が、ガシッとその身体を掴み、アタシは持ち上げた。
相変わらずの生暖かい低反発だなぁ。微妙に内臓感を感じるのが、また気持ち悪い。
「前にさ。見た事あるんだよね。
本来の上限値をぶっちぎって表示された好感度ステータスを」
アタシは脳内に、過去見たステータス画面を思い浮かべた。
多分、イケる。
あのゲームと、開発会社が同じだから。
「な、何するギョリュ……?」
アタシの目の前に掲げられて、恐怖に顔を歪ませる
そんな彼に、アタシはニッコリと微笑みかけた。
「
そう、優しく声をかけると、その場にいた全員がヒュッと息を飲んだのが音で分かった。
それは、言われた
目をかっ開き、アタシの事を凝視する
アタシは、そんな彼の体を持ち上げたまま、指で彼の体をさすった。
「キス、したい。して、いい?」
ゆっくり、丁寧に、彼にそう問いかける。
その場に、恐ろしいまでの沈黙が舞い降りた。
シーン、というオノマトペが見えた気がした。
「ダメ?」
少し困った顔で
少しの間を置いて。
「だ……ダメじゃないギョリュ」
そう、小さく返事をした。
なのでアタシは小さく笑い、
そしてその口に、ゆっくりと自分の唇を添えた。
その瞬間──
恐ろしいまでの光が発生して辺りを包み込んだ。
そして。
その光が収まると、白髪のローマ彫刻のような均整の取れた身体をしたナイスミドルの男が──
全裸でアタシの目の前に膝をついていた。
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