【ディスク3】ご飯タイム
「よし子! 俺は肉がいいって言っただろ!? 生肉よこせ生肉!!」
「私も、この『ドッグフード』とやらは飽きました。鳥のササミが食べたいです」
「小松菜じゃなくってヒマワリの種を寄越すピュシャ!」
それぞれのご飯皿を見た
アタシはウンザリしながら三匹を見返した。
土曜日の夕方、三匹のご飯の時間。
確かにさ、元人間型としたら毎日毎回同じご飯は飽きるだろうとは思うけれど、さ。
限界があらぁ。
アタシは腕組みして、
「ガブリエル。野生じゃないんだからキャットフードも食べろや。毎回トッピング変えてんだろ」
「いやだ! 生肉がいい!」
ああ、たまの贅沢として
「ラファエル。犬は雑食性なの。肉ばっかりじゃバランス悪いんだって。トッピングの温野菜の何が嫌なんだよ」
「私は肉も好きなんですが……ああ、
そんな
「
「飛び回ってるから太らないピュシャ! ヒマワリの種じゃないなら食べないピュシャ!」
「……また強制
「ピシャア!!!」
前に、アタシが鳥用の薬を無理矢理飲ませた時の事を思い出したのか、
「なまじ喋る分、扱いが面倒くさいヌミョな」
アタシと三匹のやり取りを見ていた
「好みを言葉で表現してくれるのは楽だけど……我儘に感じるのは、愛玩動物は人間の言う事を聞くべきだっていう
そう
「終生飼育してくれるんだろ!? なら俺の言い分も聞け!」
諦めたのか、ササミと鰹節トッピングが乗ったキャットフードをガツガツ食べる
「里親も見つからないだろうし、終生飼育は飼い主の義務だから勿論だけど──」
アタシは喋りながらジト目で
「言い分聞いてるだけじゃあ健康に生きてもらえないし。今後、生殖器系の病気を防止する為に、虚勢、した方が、いいよね」
声だけは優しくそう伝えると、
「ああ、それ、もう一度、今度は私に向かって仰っていただけませんかっ……!」
そう、うっとりとした声でお願いしてきたのは
「……」
アタシは露骨に顔を歪めてから
「私は神に仕えし身。結婚もしませんし子孫も残しません。ならば、私はソレを行った方が良いのではないでしょうか? どうでしょうか? よし子様、どう思われますか? 貴女の口から直接再度、私に仰ってくださいっ」
なんで聖職者の分際でこういう嗜好持ってんの? 怖いんだけど。
なんでウチには、こんな変なのしか集まらないの?
どういう事???
「よし子は、この三匹の終生飼育を決めたのか?」
廊下から、捕獲したであろう
「喋る猫と犬なんて、引き取り手ないっしょ。研究所とかで解剖はされそうだけど。それは流石に可哀相というか……」
最初は『里親を探すまで』って言ってたけど、まぁ無理だよね。
元の人間型とかを知ってる分、そんな残酷な事はできないし。
いや、むしろ犬猫の姿をしてる時の方が抵抗感あるわ。可愛いし。
畳の上に置かれた
「大丈夫か? よし子。変なトコ舐められたりとか、触られたりしてね?」
そんな声で廊下から現れたのは
「あー、大丈夫。今の所……たぶん」
最初気持ち悪かったけど、もう慣れた。実は実家で買ってた柴犬の柴太郎も、アタシの足を舐めるの好きだったんだよね。……アタシの足の裏から、犬のツボに入る何かが分泌されてんのか?
「帰って来た時、またよし子の部屋にいてみろ。またシャンプーしてやるからな」
そう笑顔で告げた
「……よし子の部屋? どういう事だ?」
事情を知らない
「コイツら、寝る時よし子のベッドで一緒に寝てたんだよ」
「なんだと!?」
「ガブリエル! ラファエル! なんて羨ましい事を!!」
「ハルト殿下、本音が漏れてます」
「違った! なんて
「添い寝するぐらいいいじゃないか! 俺たちはよし子とイチャラブできないんだぞ!?」
「そうですとも。この身体では、本来出来てしかるべき事が出来ません。せめて身体をすり寄せるぐらい許して欲しいものです」
「何を言ってる! 例え人間の身体でも出来ないぞ!」
……
「そりゃお前にまだ女を口説くスキルがないだけだろ! でも可能性はあるだろ!」
「そうです、我々はゼロです!」
「あ、でも分からないな!? よし子に獣──」
「ストップ。言わせねぇよ?」
「……本当に売り払う気はないヌミョか?」
「このままなら、気が変わるかもしれないね……」
アタシは頭痛を感じる額を押さえ、座卓へと肘をついて溜息を吐き出した。
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