【イベント2】ゲームチュートリアル
「集合」
「何ピュシャ?」
なんか知らんけど通された、RPGゲームでよく見るタイプの王宮の
私はだだっ広いベッドに腰掛けつつ、ベッドサイドテーブルの上で、吸い終わった煙草で一杯になった灰皿をジッと見つめたまま、近くでフヨフヨ
ちっきしょう……減煙頑張ってたのに、余りにイライラし過ぎて煙草解禁してもーたがな。
紙タバコをやめて電子に切り替えていくばくか。更にそれも本数減らして、一日二本までってして頑張ってたのに……もう少しで完全禁煙出来そうだったのにッ!
これじゃあまた元通りだコンチキショウ!!
もう一生消えそうもない
「百歩譲って、覚醒の方法が『覚醒!』と叫ぶだけだったのは大目に見よう。中二病的なそういう掛け声はね、アタシは嫌いじゃない」
「そうピュシャね。なんかニヤニヤしながら叫んでたピュシャね」
「ほっとけ。それより、なんでここの国の人は『異世界転移者』というだけで
『世界を変えるほどの力で魔王を
「何をピュシャ?」
「世界を変えるほどの力をアタシが持ってたとしてよ。それを、魔王ではなくこの国に向けるかもしれないという、本来国の長が持つべき危機感どこいった」
私はイライラが止まらず、また電子タバコ本体に煙草をブッ刺してスイッチを入れた。
今回は、ゲーム転移前──ゲームのスイッチを押した時に、丁度鞄を膝の上に置いたままにしていた為、鞄ごとゲーム世界に転移してこれた。
お陰様? で、鞄の中に買ったばかりの煙草の箱が幾つかが入っており、イライラがなんとか抑えられた。
しかし、さっきから吸えども吸えども落ち着かない。
「──聖女様はまだこの世界の事を理解し切れてないピュシャね」
「いや、普通ゲーム世界に転移したらすんなりその現象受け入れないからね? 私は三回目だから落ち着いてるだけだからね? 理解できる方がオカシイからね? というか、理解云々なら問題じゃなくてさ、そもそも──」
「もう一回説明するピュシャよ」
「いや、だから同じ説明されても──」
「よく聞くピュシャよ」
ツッコミスルーかよ。
どうでもいいけど、眉毛ないから
やっぱり何、それってやっぱり、顔に手足がついてるって事なの? ならその顔の中に全ての臓器が入ってんの? 種も入ってるって前に
でも、柔らかいから頭蓋骨的な物はないよね? やっぱ構造が摩訶不思議過ぎんな。
「この国は魔王の侵略を受けているピュシャ。そこで、国を救う為に異世界から召喚されてきたのが聖女様──ユーだピュシャ」
「ま、よくある系だね。
ところでなんで私のこと『ユー』って呼ぶの? ジャニ──」
「黙るピュシャ! ミーが説明中はそっちのセリフはないピュシャ!」
「セリフとか言っちゃうんだ」
果てしなくメタい。
「女神の祝福を受けた異世界転移者は、聖女としてその力でこの国に平和をもたらすのが使命だピュシャ」
「うん、さっき聞いた。一言一句同じセリフだったね。
そうじゃなくてさ。
私の疑問はよ。『凄い力を持った転移者が国を助けてくれる』って何でナチュラルに思い込んでんの? 転移してきた人間がサイコパスかもしれないじゃん」
「そんな事にはならないピュシャ」
「分かんないよ?! 私だって現に今この国救う気ねぇもん!」
「聖女様の意思なんて関係ないピュシャ」
「は?! なんでだよ?!」
「『断る』選択肢がないからだピュシャ!」
「そんな予感はしてた!!」
だって、さっきも王様に『この国を救ってくれ!』と言われた時、『嫌だ』と言う度に物凄い雷鳴がして『聞こえなかったスマン。もう一度問おう』とか言われて延々質問繰り返されたからな! 五十八回繰り返した頃にイライラが天元突破して煙草吸いたくなって、仕方なく『はい』って言ったしな!
なんかこのシーンどっかのRPGで見たことある!
アレやろ?! RPGお約束の強制一本道ストーリーなんだろ?!
でもオカシイな!
「このゲーム、ハートフルケモ耳ゲームじゃないの?! 恋愛要素は少し控えめの、のんびりスローライフ系だと思ってたのに!」
前情報と全然違う!!
アタシが頭を抱えて自分の膝に顔を埋めると、シャラララ〜というウザい行動演出音がしたのち、後頭部に声が降って来た。
「だから、ちゃんとハートフルケモ耳ゲームだピュシャよ。このゲームは魔王を倒してハイ終わり、じゃないピュシャ。そんな昔の王道ゲームとは一線を
魔王を倒した後に、ボロボロになった世界を残党魔物を蹴散らしながら、ケモ耳男たちとキャッキャウフフと復興させる、スローライフ系ハートフルケモ耳私TUEEEゲームだピュシャ」
「長い……長いよ
なんだよその『スローライフ系ハートフルケモ耳私TUEEE』って……『スローライフ』と『私TUEEE』は、相反する装飾語だろうが……」
なんでも付けりゃいいってモンじゃねぇぞ。
「アタシは……アタシはただのスローライフ、恋愛要素ちょい足しぐらいのゲームがやりたかっただけなのに……
ガッツリ乙女ゲームはなんか嫌な予感がしたから避けて、でも世知辛い現実から逃れたくてコレ選んだのに……
なんでだよ!!!」
アタシはガバリと頭を上げる。
ちょうどそこにいたであろう
生暖かい低反発!
しかも今『ピシュア!!』って声あげた?!
何ソレ悲鳴?!
アタシの頭に跳ね飛ばされた
そして何故かアタシの膝の上にジャストフィット。なんでだよ物理法則無視すんなよ。
行動演出音もマジウザい。シャラララ〜ポイン、ポスムンって。
なんだよ、ポスムンって。
「ちなみに。この後のイベントも無視できないピュシャよ。覚悟するピュシャね」
「え? この後のイベントって──」
私がどういう事か
コンコンコン
寝室の扉がノックされた。
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