『ハートフルケモライフ』編
【イベント1】プロローグイベント
「もう、魔王に立ち向かう為の手立てはないのかッ……」
空にポッカリ開いた
彼の、本来耳がある場所は漆黒の髪で隠され、逆に髪しかない筈の側頭部にはピコピコと
「ガブリエル様ッ! そんな事はありません。私たちには……私たちにはっ! 彼女がいらっしゃるではないですか!」
その背中を支えるかのように手を添えるのは、どっかの宗教の司祭の衣装を魔改造したかのような身なりの、金髪フワフワボブの男の子が。彼の頭も先ほどの騎士っぽい男と同様になってる。違うのは耳の形。
騎士っぽい方は猫科を彷彿とさせ、司祭っぽい方は犬科に多い気がする。しかもコイツのケツにも、フサフサの飾り毛がたゆたう尻尾がついてる。
何、コイツらのズボンのケツ部分には、ワザワザアレを出す為の穴でも空いてんの???
その二人が、言葉を発してからゆっくりと振り返ってアタシを見た。やめろ、こっち見んな。
「そうだな。俺たちには、彼女がついている」
改めてそう強い光を目に宿す黒髪猫科耳騎士。
「そうですとも。彼女が──
金髪犬科耳司祭も下がり眉毛をキリリと上げて強く
だから、こっち見んな。
「や。アタシに期待されても困るんだけど……」
アタシは、そのねちっこい視線に我慢できずにジリジリと後ろへと下がった。
すると、目にも止まらない速さで手首を猫科耳騎士に掴まれた! 逃げられない!!
「聖女! お前も選ばれし者なら覚悟を決めろ!」
「いや! 選ばれてねェし! ただのしがないOLだから! 聖女でもないし!!」
そう、さっきから『
「いえ、聖女様はこの世界にいる聖女候補の中で飛び抜けた資質の持ち主。私は存じ上げております。その鎧の中に秘められた熱く
犬耳司祭が、アタシのそばへと寄って来て、何故かアタシの髪の匂いを嗅──ごうとしたので、
ぎぃっ! 力強っ!! 力が
「見て分かんだろ? どっからどう見ても一般人だろ?! 若干疲れ気味だろ?!!
それに、鎧、見える? 見えないよね? だって着てないから! 普通のスーツ姿でしょ?! なんでアタシの外見ガン無視できんの?!」
「お前なら出来る、聖女!」
「そうですよ! 聖女様!」
「あれ?! これってRPGによくある『はい』って選択しないと延々会話がループするヤツ?! 選択肢があるように見えて実はないヤツ?!
これ、そういう系のストーリーだったん?! 聞いてた話と違うんだけど?! ってか、友達にハートフルケモ耳ゲーって聞いてたのに、どこがハートフルだチキショウ! 状況
アタシは、聞いてた話と違うと言わんばかりに非難の声を上げた。
「ケモ耳ハートフルだピュシャ。
だから怖がる事は何もないピュシャ!
ユーには世界を更地に変えるほどの力が秘められてるピュシャ!!」
……なんか、変な語尾の
ああ、このシリーズお約束のナビキャラかよ……
声の主の方に嫌々視線を向けると、そこにはピンクのバレーボール大の、茄子にツブラな目口がついたような生き物が、不可思議な力で空中にフヨフヨ浮いていた。
やっぱ、この開発会社の作ったゲームはナビキャラのデザイン統一されてんだな……
「お前は……」
「ミーは桃色茄子の妖精、ピエプだピュシャ!」
やっぱり。
その
……どうでもいいけどさ、今まで出てきたナビキャラ。白、金、そしてピンク。
このカラーラインナップ、見覚えあるぞ。アレじゃん。バ○ちゃんじゃん。丸い体に短い手足。頭に茄子のヘタが乗ってなかったらそのまま○ボちゃんじゃん。
何? このゲーム開発会社、バレーボールの協会か何かとズブズブなの?
「兎に角! 今はユーの力が覚醒するイベントだピュシャ!」
「いや待て。アタシ生身でこのゲーム世界に取り込まれたのね?!
つまり、ここに居るのは私TUEEEの聖女じゃなく、ただのOLなワケね?!
だから、無理なのよ! しないのよ覚醒!」
「大丈夫だピュシャ! 例え疲れたBBAでもゲーム内では聖女設定だから覚醒出来るピュシャ!」
「地味にいまディスったね?!」
「早くするピュシャ! さもないとストーリー進まないピュシャ!! 延々会話がループするピュシャよ? どこぞのゲームと違って源氏の
「他のゲーム事情に詳しいね?! 懐かしいなそのネタ!!」
「だからさぁ! 覚醒するピュシャ!!」
そうか。現実世界に帰るにしても、まずはこの無限ループイベントは越えないといけないのか。
じゃあ仕方ない。覚醒するか!
……どうやって?
「どうやって覚醒すんの?!」
やり方分からんよ?!
「もう! ダメ聖女ピュシャねっ!!
簡単ピュシャよ!!
こう、グッとやってピコーンっとして、ゴパァッ!! って感じピュシャ。さ、やってみるピュシャ」
「何一つ伝わって来なかった!」
「考えるな、感じろピュシャ!!」
「何をだよ! その言葉はやり方の詳細を説明してから言う言葉だボケ!!」
イベント進めなきゃいけないのに進め方が分からない。
ひたすら『頑張って!』『やれば出来る!』と励ましてくるケモ耳野郎どもや
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