【イベント5】現実帰還イベント
アタシは、このゲームのオープニング画面を思い出しながら、その場に
このゲームのオープニングでは、簡単なゲームの設定が語られる。
自分が、ベースとなった乙女ゲームの悪役令嬢の立ち位置である事。
そして、ベースとなった乙女ゲームのヒロインポジションの黒髪少女が、現代日本から召喚されてきた聖女様であり、その証が、世界を救う力が秘められた深紅の大きな宝石である事。
今、アタシの手の中には、深紅のデッカイ宝石が握られている。
そして。
今アタシがいる場所が、聖女様が召喚されてきた魔法陣のある場所──王宮地下にある神殿だった。
「ここにいたヌミョかっ!! この騒ぎはどうしたヌミョ!!」
どうやってアタシを見つけたのか、神殿の入り口から、シルバー
アタシのすぐ
「ああ。聖女様と王太子殿下が今まさに致してた場面を、騎士団長嫡男様と宰相嫡男様にご披露したの」
「ま、まさかヌミョ……致してって──」
「そうそう。こう、ね? あ。乙女ゲーム的に言うと、なんだろう。『朝チュン』は違うよね。事後である事を匂わす言葉で、まさにその真っ最中ではないワケだし。
ええと?
「やめろヌミョ! 乙女ゲームに放送禁止効果音流すんじゃないヌミョ!!」
「わ! 凄い! どうやって音声被せたん?! 自分でも『ピー』って聞こえた! もっかいもっかい!!
「やめろヌミョ!!」
「やっべ!
「ホントやめるヌミョ!! これ以上このゲームを壊さないで欲しいヌミョ!!」
「……は?」
「壊さないで欲しい、だと? アタシの人生壊しまくってる分際で、何ほざいてんだ?」
アタシが突然マジモードになったせいか、
「お前がザマァしろって言うからやったんだろが。まぁ方法と目的はアレだけどさ。
禁則効果音は知らんわ。仕様に入ってるって事は想定されてた事だろ?
むしろ、アタシがこの世界に生身で放り込まれた事を
アタシがそう凄むと、
……だからその青と金のグラデーションやめろや。真剣なのに笑えてくるわ。
「リズ! 一体キミはどうしてしまったんだ?!」
今までずっと、
何故か心配そうな顔をしてアタシに詰め寄る。
近ェ。
「アタシはリズじゃねぇ。よし子だ」
「よし子? もしかして、幼い頃に言っていた『前世の自分』の事か?」
幼い頃? ああ、そういう設定なのね。このゲームでは。
「アタシは生まれ変わってねぇよ! どっからどうら見ても生粋の疲れた日本人OLだろがぃ!」
「ああ、地下牢なんぞに入れられて、少し混乱してるんだねリズ」
「混乱してねぇわ! 完全に正気じゃボケ!」
「まだ十七歳のお前には、この騒動はやはり重荷だったな……くっ。俺がもっとしっかりしていればっ……!」
「三十五歳だよく見ろ! このヘアカラーが落ちてきて輝く白髪が見えねぇのかっ!!」
「確かに、キミの髪はいつ見てもシルクのように輝いているよ」
くっ……会話できねぇ!!
なんで乙女ゲームのキャラたちはこいつもこんなに
ってか、今の今まで
アタシの言葉なんぞ聞こえていないかのように、シルバー
速攻で振り解いてやったら、今度は光より早く再度手を取られ、今度は振り払えない程強く握りしめてきた。
なんなのコイツ?! 怖い!!
「
「そう言われてもヌミョ……」
「ナビキャラならなんとかしろ!」
「俺はそういう系の便利キャラではないヌミョ」
「じゃあ何のために存在してんだよ!」
「ゲームのチュートリアルとかルートやステータス確認とかヌミョ!」
「ルート?!」
ああ、そういえば、脱出エンドはシルバー
「じゃあ確認して! コイツのルートフラグはへし折っただろ?!」
「折れてないヌミョ」
「ハァ?! ヤツを倒して地下牢脱出したのに?!」
「ステータス確認してみるかヌミョ?」
手の引き合いをしているアタシとシルバー
そこには、本来の上限値をぶっちぎったシルバー
「なんで?!」
「ヒールで踏まれた事によって、
「そりゃ確かにダメだわ!!」
そんなの乙女ゲームに入れたらアカン!!
禁則ワードに連呼したアタシが言うのもなんだけど!!
シルバー
もう! 仕方ない!!
アタシは、思いっきり足を振り上げて、渾身の力を込めてパンプスでシルバー
「ぐあっ!!」
その痛みに、思わず手を離すシルバー
が……
「ふふ。……いい」
「何がだよ!!」
誰だ! こんな設定ブチ込んだのは!!!
流石のアタシも、ちょっと引くわ!!!
しかし、そんなドMに構ってる暇はない。
アタシは手にした深紅の宝石を握りしめて、神殿中央の魔法陣の中へと駆け込んだ。
「何をするヌミョ?!」
その行動に驚きを隠せない
「帰るんだよ! 現実に!!」
アタシは全力でそう叫んだ。
このゲームでは、悪役令嬢である自分は転生してきた設定だが、黒髪聖女様が現代から来た事になっている。
つまり、ベースとなる乙女ゲーム上では、黒髪聖女様は帰れる選択肢がある筈なのだ。
と、いう事は。
その設定を借りれば、アタシが現実に帰れるって事だ。
「アタシには! 養わないといけないヤツラが四人もいるんだよ! そいつらの為にも帰らなきゃいけないんだよ!!
アイツらが、アタシの帰りを首を長くして待ってるんだよッ!!!」
アタシは、手にした深紅の宝石を高々を振り上げた。
そして──
「危険だヌミョ!」
「やめるんだ! よし子!!」
そんな、
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