悠々自適

 とりあえず贈り物には一応のお返しをした。


 価値は全く釣り合わないけど、向こうに侯爵家へ期待させるよりいいだろう。付かず離れずで向こうが新興男爵派に乗り換えるのも良し、わたしに被害が及ばないよう穏便に消滅するのが理想だね。



 ……と思っていたら、またひと月ほどして、王太子から豪華な花束が届いた。


 王国の花に、王太子を象徴する花と侯爵家の花が寄り添い、センスの良い絵画みたいだ。

 取り次いでくれた次兄も目を見張ってて、王太子側の力の入れようにビックリしてる。


 ありがとうございますと受け取ったものの、あいにくとわたしの部屋に花瓶など無い。

 あったところで、こんな豪華な花束を飾っておくスペースも勿体ない。


(枯らすのもアレだし、そうだ、ドライフラワーにでもしようか)


 さっさと花束を解体して、天蓋に逆さで吊るしてしまう。

 二週間ほど様子見して、いい感じに萎びてきたらドレッサーから抜いてきた紙で挟んで、分厚い本で押し花にする。


 淑女教育をサボりがちになってるため、自由にゴロゴロ出来る時間はたっぷりあるんだ。最高だね。

 夢の中では劣等生だから必死に勉強させられてたけど、実際には不良生徒になると諦められてか強要される量が減る。その求められてる分も、夢の知識でカバー出来るものばかり。

 こういう生活したかったんだ!将来にあの夢の内容みたいな人生パターンがあったかと思うとゾッとする。



 父と母は相変わらずわたしを存在しないものと扱ってるし、兄たちも事務的な対応、双子もそろそろわたしを下に見出してきてる。

 執事や侍女たちも変わらず。

 だけど気にしない。だって無関心でも衣食住はちゃんとしてもらえてて、あと2年もすれば幼学校に進学させてもらえるんだから。


 ここの家の子じゃないのに、こんな恵まれてる事無いよね。



 押し花にしたドライフラワーを型紙で整えて栞にする。

 王家の繁栄を寿ぐ添え状付けて、また出入りの業者に言付けた。

(まぁまぁ婚約者としての義務は果たしたよね)


 と思ってたら、数週間後にまた贈り物が来た。なんで??





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