第40話 隠された浮島
綾音ちゃんが浮島へ渡ると空中に画面が現れた。
「これで中央の島に行けそうね」
「橋が出現しません。次のパズルを解けば現れるかもしれません」
「もう1問あるようね。最後だと思うから頑張ってね」
綾音ちゃんは画面の問題に取りかかる。私からは何のパズルか見えないけれど、画面の前で手を動かしているから順調みたい。
「迷路の答えは葡萄が2房です」
前方に浮島が現れて橋が繋がった。浮島へ渡り終わると空中に画面が出現した。中央の島に渡る橋は見当たらない。綾音ちゃんの浮島と距離は近かったので、渡れそうな距離だった。
「地図に残っている浮島はあるのかな。私は先ほど選んだので終わりよ」
「わたしも最後の浮島です。他には何もありません」
「どうなっている。中央の島に渡れてないぞ」
キリリキくんの発言している間に、いつの間にか画面が変わっていた。
「私にもわからないよ。次の問題が出題されたから解くしかないかな」
出題された問題は中途半端だった。
「画面が現れたにゃ。変わったお絵かきロジックにゃ。ヒントがタテのみにゃ」
「私の画面はヨコの数字のみよ。一緒に解くみたいね」
「1番尊敬している、みーなさんと初めての共同作業で嬉しいです。絶対にパズルを間違いません」
「いままで以上に気合い充分ね。いつも通りで平気だから、確実に埋まるマスから塗りつぶしましょう」
大きさは15×15でひとりなら手頃な大きさで、ふたりで解くパズルには興味がわいた。普通では味わえない面白さがありそうね。
解き始めると、選んでいないマスが黒く塗りつぶされる。綾音ちゃんが解いたみたいで、画面が連動していた。それ以外は普通のパズルと同じだった。
ヨコの数字は確定できる列が2つあったのでマスを黒く塗りつぶした。白マスの確定には×を記入する。タテのヒントは確定が多いみたいで、自動で塗りつぶされるマスが増えていく。徐々に黒マスと白マスが確定されて右側がだいぶ残っていた。
ヒントを数回確認すると右側も攻略できて、すべてが完成した。ふたりで解くパズルも面白いかもしれない。
「解き終わったけれど変わった絵ね。正解が何の絵かわからない」
正直な感想を述べた。たいていの絵は答えの特徴をとられているのが多い。
「並戸は知らなすぎるぞ。この絵はナユク全体を象徴する印だ。感覚的に左からナクユと読めるだろ」
「数字の9をクと読むのね。初めて見たから知らなかった。あとは浮島かな」
画面上の地図を隅から隅まで探した。
「並戸、何かわかったか」
キリリキくんが聞いてくる。
「まだ浮島は見つからないよ。綾音ちゃんはどうかな。画面が私のほうへ向けば、一緒に地図を見られるね」
「こちらの画面も浮島は現れていません。何処にあるのでしょうか」
変化はなかった。でも地図が表示されたので、地図には何かが隠れているはず。
「この画面は動くぞ。軽いから簡単に運べる」
キリリキくんが画面を押している。私も画面に触ってみると、前後左右に移動と回転ができた。なぜか上下には移動しなかった。
「両方の画面を一緒に見られそう。綾音ちゃんの画面も動くなら近づけましょう」
「動きます。移動させますから待ってください」
隣同士に画面を並べると、それぞれの画面には相手側の浮島が表示されている。浮島の位置は全部異なっていたけれど、それ以外は同じだった。
「変わった場所はなさそうね。地図が表示されたから何かヒントがあるはずよ」
「浮島に渡った順番を線で結んでみました。でも意味はなさそうです」
綾音ちゃんが答えてくれる。
「全部を覚えているのかな。綾音ちゃんは記憶力が凄いね」
「何となく把握しているだけです。頭の片隅に残っていました」
私も物覚えはよくて普通の人には負けないけれど、綾音ちゃんの暗記力は桁違いに凄かった。
「気のせいかな。中央の島から下側は浮島がない」
「俺の感覚では、ほかの部分にもありそうだぞ」
「キリリキ、もっと理詰めで考えないと駄目にゃ。確認が必要にゃ」
「考えるよりも実際に重ね合わせば早いぞ」
キリリキくんは説明せずに画面を動かした。いつもながらせっかちだった。静止している画面の後ろ側に、もうひとつの画面を合わせる。
うしろにある画面の浮島も透けて見えて、浮島がない部分が一目瞭然となった。
「思った通りね。下側には浮島がない」
「俺の感覚は外れたか。たまには間違うときもある」
「下側の空間にうっすらと浮島が見えませんか」
綾音ちゃんの言葉に、目を凝らして下側の空間を確認した。
「確かに浮島にも見える。両方の画面では灰色の濃度が若干違うのかな」
「隠された浮島と思います。最初のルールにヒントがあったと思います」
「ルール以外にも何か隠されていたのかな」
「もう一度ルールを見れば確信できます」
「私も詳細は覚えていないかな。まずは現れた浮島を選択するね」
画面を重ねた状態に保って、中央の島がある下側を押した。画面が明るい茶色に変化すると同時に沼から浮島が現れる。念願の橋も架けられた。
「選択方法は合っていたね。これで中央の島へ渡れる」
最後の浮島に移動すると次へ繋がる橋もあった。皆で中央の島へと渡ると、目の前に言葉の塔がそびえ立っている。正面には頑丈な扉があって、高さは20メートルくらいで近くで見ると迫力があった。
「これで終わりだよ、これで終わりだよ」
頭上に紙飛行機のぬいぐるみが現れて、今回は黄色と紫色の体をしていた。
「課題は解決したのかな。言葉の塔に入れるのよね」
「中に宝があるよ、中に宝があるよ」
もう少しで交差の辞書と王家の秘宝が手に入る。大変な課題も多かったけれど、いっぱいパズルを楽しめた。綾音ちゃんの言葉を思い出して、もう一度ルールの確認をしたくて頭上に顔を向ける。
「この沼を渡った課題のルールがあるよね。もう1回だけ見られるかな」
「可能だよ、可能だよ」
画面が出現してルールが表示された。
「綾音ちゃん、教えてよ。先ほど話したヒントとは何かな」
「数字のあるヒントがあります。文字の先頭から一文字目と考えます。各ヒントにある数字は文字数と思われます。該当する文字を数字の一から順に読みます」
説明された通りに読むと、ルールに隠された文字がわかった。
「地図を重ねル。ルールが不自然だと感じたのは、これを隠すためなのね」
回りくどいルールに納得したと同時に、綾音ちゃんの記憶力にも驚いた。
「だいぶ時間が経過したぞ。並戸は眠くならないか。言葉の塔が目前だ。人間の世界に戻るのは勘弁してくれ」
キリリキくんはいつもせっかちだけれど、私も同じ気持ちだった。
「平気よ。私もお宝を早く見たい。急ぎましょう」
私たちは言葉の塔へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます