第30話 特殊なクロスワード
スケルトン国に着いて、キリリキくんの課題に取りかかった。勘が鋭い少女が早く見つかるとうれしい。
「キリリキくんは勘が鋭い少女について、何か知っているかな」
「スケルトン国の少女としか知らない。見つからなければ城で聞くしかないぞ」
外見だけはわかったけれど、ほかの情報は何もなかった。通りを歩いているのがスケルトン国のぬいぐるみのようで、頭部にあるヒントのマス目がウサギの耳に似ている。鉄板で作ったウサギ型ロボットに見えた。
「私を探しているのでしょ。すぐにわかったわ」
背後から聞こえてきた声は、澄み切った少女の声だった。
振り向くとスケルトン国の小さなぬいぐるみがいた。特徴のあるウサギ耳が左右に動いている。ロクヨちゃんよりも背は低く、人間の世界でいえば小学生くらい。
「あなたは誰? スケルトン国には初めてだけれど、私たちを知っているのかな」
「勘が鋭い少女って皆から呼ばれているわ。それでわかるでしょ」
探している相手から姿を見せてくれたので、今日は運がよかった。
「本物だろうな。感覚的に俺にはわからないぞ」
「クロスワード国から来たのでしょ。スカイカス師匠が持っていた交差の辞書を探しているのでしょ」
大人びた澄ました口調だけれど、話の内容から勘が鋭い少女で間違いない。特別な課題が順調に進みそうね。
「何処にあるか知っているかな。私たちは交差の辞書を探す旅をしているのよ」
「わからないわ。クロスワードに隠されているの。知らなくて当然でしょ」
勘が鋭い少女から丸まった紙を受け取る。その場で紙を広げると、問題文とクロスワードのヒントのみが書かれていた。6×6のマス目で、黒マスはひとつもなくて変わっていた。カギ番号も左上の1以外は入っていない。
「紙に書かれている課題を解けば場所がわかるのね」
「私には解けないわ。頑張って解いてね。人間の大人なら楽勝でしょ」
勘が鋭い少女は手を振ってから、街中へと消えていった。
人がない場所を探してから問題文を読んだ。特殊なクロスワードだった。
「黒マスの位置を考えてパズルを解くのね。唯一の手掛かりはカギの後ろにある数字かな。単語の文字数を表している」
マス目の大きさは6×6と決まっていて、ルールは通常作成方法と同じみたい。連続の黒マスや黒マスで全体を分断させては駄目だった。
「並戸はオリジナルパズルが得意だ。解くのもできるよな」
「変わったパズルは大好きだから、難なく解いてみせる。若手四天王の名を侮らないでね。オリジナルパズルは作るのも解くのも楽しみよ」
今日は多くのパズルが解けるから嬉しかった。ナクユのオリジナルパズルかもしれない。気合いを入れて意識を集中させて、特殊なクロスワードに取りかかった。
手掛かりは左上のカギで、上の段と左の列に入るカギを推測する。最初の黒マス位置が決まった。最初からヒントのタテとヨコの1を考えて、単語が入ると黒マスを塗りつぶす。単語の文字数によるヒントも使って黒マス位置が確定できた。
あとは普通のクロスワードと同様だった。クロスワードとしては小さいサイズなので、ここまで完成すれば終わったのと一緒ね。順調に問題を解いていく。
「解き終わったよ。面白くて楽しめたけれど、改善の余地があるパズルかな」
オリジナルパズルを解いて充実した達成感に浸った。難易度の調整は文字数のヒントを減らせばできそう。私も読者が楽しめるオリジナルパズルをもっと作りたい。
「答えは何だ。俺が知っている場所か。近くだと助かるぞ」
キリリキくんがせかすように聞いてくる。
「該当の文字を並べるね。コトバノトウ。ロクヨちゃんの特別な課題と同じよ」
「私と一緒の場所にゃ。ムサシ国王にもらった地図を頼りに進めそうにゃ」
「北側の未開地帯ね。今日の気分はもっとパズルを楽しみたいかな」
素直な感想をキリリキくんとロクヨちゃんへ述べた。
「言葉の塔を探すのは苦労しそうだ。感覚的に準備が必要だぞ」
「今日はまだ時間があるけれど、無理は禁物かな。悩みどころね」
「場所はわかった? 人間の大人なら解けたでしょ」
後ろから声をかけられた。振り向くまでもなく勘が鋭い少女とわかった。
「パズルは解けたよ。私に解けないパズルはないよ」
「行き先は言葉の塔でしょ。合っているでしょ」
「何でわかったのかな。もしかして解く姿を見ていたのかな」
勘が鋭い少女を凝視した。答えは知らないはずだった。
「私って勘が鋭いでしょ。わかって当たり前でしょ」
勘が鋭いのを通り越していて、超能力かと思った。色々とわかるのなら私もほしい能力だった。もしかしたら未開地帯にも詳しいかもしれない。
「言葉の塔はスケルトン国から近いよね。どのように行くかわかるかな」
「知らないわ。この国の外には行っていないでしょ」
あっさりと言われた。
勘が鋭い少女は両耳を左右に動かして、空中に視線を移動させた。私もつられて空中を見たけれど、何もなく青空のみが広がっている。勘が鋭い少女と視線が合うと目を細めて笑った。大人びた口調をしているけれど子供ね。笑顔は可愛らしかった。
「人間の大人がもうひとり必要でしょ。一緒に連れて行けば助けてくれるわ。パズルを解くのが相当得意な大人でしょ」
勘が鋭い少女は得意げに教えてくれた。勘が鋭い少女は、両手を後ろに組んでまた空中を見た。大人をもうひとり、必ず連れて行く必要があるみたいね。勘が鋭い少女にお礼を言った。
視線を手元に戻すと、異変に気づいた。
「軽快な指輪がいつの間にか赤色に変わっている。最初に見た宝石は青色よね」
「効果がきれたにゃ。今は普通の指輪にゃ」
ロクヨちゃんが教えてくれた。
「もう使えないのかな。特別な課題を進めるには便利よね」
「大きな国に行けば使えるようにできるぞ。当然クロスワード国にもある」
「軽快な指輪は北側の未開地帯で役に立つかもしれない。今日はまだ遊べるから、クロスワード国に行くかな」
「場所は俺が知っている。移動するぞ」
未開地帯はキリリキくんもロクヨちゃんも詳しくないから、無駄な時間は使いたくない。大事な場面で軽快な指輪を使いたい。スケルトン国のお城にある部屋へ入ってクロスワード国へ移動した。
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