第29話 未開地帯の情報

 王家の本を開くと推理パズルが現れた。大分類が5項目で小分類が3項目の大きさだった。ルールは普通と同じで解いた答えが次の課題に関連していた。

「推理パズルは好きなパズルのひとつよ。簡単そうだから速攻で解くね」

「楽しみにしているにゃ。課題が解決できれば、王家の秘宝に近づくにゃ」


 ロクヨちゃんは軸足を起点に回転してから、最後に尻尾を左右へ振った。ロクヨちゃんは私の解く姿を見たいらしくて、隣の椅子に飛び乗った。

「俺は少し散歩してくる。小さな街だから俺だけでも問題ないだろ」

 初めての国だからかキリリキくんは歩き出した。街の壁には推理パズルのヒントと文字が書かれている。キリリキくんも文字を見ると落ち着くのかもしれない。


 視線をパズルに向けて、さっそく問題文を読む。大分類は、捜し物、宝の正体、塔の場所、塔の名前、倒す敵だった。捜し物には王家の秘宝が書かれている。ヒントは8つだった。


 順番通りにヒントを読んでからマスに○や×を埋めていく。ヒントの書いた順番も考えられている。上から順番に読むだけでは解けなくて、確定できるマスも少なかった。一般読者なら頭を悩ませるかもしれないけれど私には肩慣らし程度だった。


 上部にあるマトリックスはあまり埋まらなかった。一挙に○や×が入らないのでヒントを読み返す。確定のマスが増えて、最後には全てのマスに○と×が埋まった。

「王家の秘宝は珍しいナンプレよ。何が珍しいか今から楽しみね」


「俺は宝の正体よりも次の場所が気になるぞ」

「いつの間に戻ってきたのかな。気づかなかった」

 キリリキくんは散歩に行っていたけれど、戻った様子は分からなかった。


「散歩していたぞ。並戸の近くならいつでも戻れる。俺とロクヨなら可能だ」

「ムサシ国王が瞬間的に移動したのと同じかな」

 キリリキくんに聞き返した。

「感覚的にはその通りだ。それで場所は何処だ」


「北側の未開地帯にある言葉の塔よ。未開地帯は普通に行ける場所かな」

「立ち入り禁止地帯とは異なるにゃ。入れるにゃ。言葉の塔は知らないにゃ。でも交わりの塔は実際にある塔にゃ」

 ロクヨちゃんが王家の本を覗いていて、小分類にある塔は実在していた。他の答えも本当かも知れない。


「感覚的に未開地帯は無理だ。彷徨うために行くものだぞ」

「キリリキくんも知らない場所ね。未開地帯に詳しくないと難しいかな」

「ムサシ国王に知恵を借りるのはどうかにゃ? 古くからナクユにいるにゃ。色々と知っているにゃ」


「ナンバープレース国か。俺も行くよな」

 キリリキくんはムサシ国王が苦手のようね。王家の本には次の課題が現れていないから、言葉の塔に行くしかない。準備もなく未開地帯に行くのは無謀だと思う。


「今日は順調よね。次はムサシ国王に会うけれど、確認が終わったらキリリキくんの特別な課題を進めるかな。交差の辞書に近づくよ」

 キリリキくんは両手を頭上で組んで、ゆっくりと歩き出す。悩んでいるみたい。背中にあるマントにはクロスワードのヒントが書かれていた。決心がついたみたいでキリリキくんは足を止めた。


「ムサシ国王に会う時間は短く頼む。終わったら俺の特別な課題を進めるぞ」

 キリリキくんの了解が得られたので、推理パズル国のお城にある部屋からナンバープレース国へ移動した。


 ナンバープレース国に着くとムサシ国王へ会いに行く。最初に出会った部屋へ入るとムサシ国王はいなかった。椅子の上部にある空間が揺らいだと思ったら、座った状態でムサシ国王が姿を見せた。


「どうしたにゃ。急に話があるとは懸案でもあったかにゃ」

 ムサシ国王がロクヨちゃんへ聞いた。

「北側の未開地帯に行きたいですにゃ。次の場所は言葉の塔ですにゃ」


「難しい問題にゃ。誰も行かない場所にゃ。俺も南側の未開地帯に一度だけ足を踏み入れただけにゃ。薄暗くて殺風景な場所にゃ」

「言葉の塔に関する情報を持っていませんか。次の課題がまだ出現していません。言葉の塔へ行くヒントが何処かにあると思います」


「美奈殿の言葉で思い出したにゃ。ナクユには複数の塔が存在するにゃ。塔の位置が描かれた地図を見たにゃ」

 話が終わると同時に部屋の扉が開く。ぬいぐるみが丸めた紙を持ってきた。会わずに命令できるみたいで、とても便利な機能だった。


「持ってきましたにゃ。塔が記載された地図ですにゃ」

 地図をテーブルに広げる。地図は絵と文字が読めるほどに保存状態はよかったけれど、文字は日本語ではなかった。私には土地勘もなくて、ナンバープレース国も探せなかった。


「現在位置がここにゃ。ナンバープレース国は西側の中央にあたるにゃ。推理パズル国は北側に行ったこの辺りにゃ」

 ロクヨちゃんが場所を教えてくれたので、東西南北と全体の位置が把握できた。

「北側の未開地帯はこの辺りだにゃ。言葉の塔は東側の位置だにゃ」


 ムサシ国王は該当する塔の絵を教えてくれた。文字系の国から向かえば近くて、塔は他にも存在していた。南側の未開地帯にも塔の絵が描かれている。

「地図を頼りに行くしかなさそう。キリリキくん教えて、1番近い国は何処かな」

 言葉の塔がある場所を教えると、どの辺りかわかったみたい。


「並戸が行ける範囲ではスケルトン国だ。歩く距離も短いぞ」

「キリリキくんの特別な課題と同じ国よね。次の場所はスケルトン国で決まりね」

 ムサシ国王にお礼を言って、部屋をあとにした。

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