第6章 裏技と見える人
第22話 作戦会議
先ほどまで黒木さんと電話で話していた。仕事ではなくナクユについてで、明日になれば黒木さんがこちらへ来る。そのときにナクユへ来た詳細を聞ける。
今はリビングの椅子に座って休んでいる。テーブルの上にはキリリキくんとロクヨちゃんがいて、キリリキくんは中央で動き回っていた。ロクヨちゃんは私の近くに座って、尻尾でリズムを刻んでいる。いつの間にか決まった定位置だった。
「黒木さんをどう思うかな。普段の黒木さんは特に変わっていないよ」
「感覚的に怪しかったぞ。特別な大人以外は来られない。おかしいぞ。視覚系と一緒にいたのも気になる」
「今回の情報だけではわからないにゃ。美奈さんを助けたのは事実にゃ。私たちに危害を加える可能性は低いにゃ」
考えを巡らせたけれど、疑問がいっぱい溢れてくるだけだった。パズルと同じく順序が大事かもしれない。効率よく疑問を解き明かすためにも、最初に解決したい疑問があった。
「そもそも特別な大人とは何かな。私は普通の大人よ」
私はパズルには目がないから、その点を否定するつもりはない。何かに夢中な大人はたくさんいるから、パズルが好きだから特別とは考えられない。仮に私だけなら特別な大人とは表現しないはず。パズルのヒントと同じく言葉の中に意味がある。
「少しの大人が特別な大人にゃ。候補の大人は決まっていて、選ばれた大人のみがナクユに来られるにゃ。目的は美奈さんと同じにゃ。特別な課題にゃ」
「私以外にも大人はいるのね。今まで会わなかったのは偶然かな」
ロクヨちゃんの答えに質問で返した。
「並戸は感覚的にわからないか。特別な課題は各国にひとつ存在する。その分の特別な大人が必要だ」
「ナクユのジュエリーは特別な大人宛に送られたにゃ。各国の代表はその中からひとりだけ選ぶにゃ。人間の世界に来て自国に連れ行くにゃ」
ナクユに呼ばれた状況が少し分かってきた。私はキリリキくんとロクヨちゃんに選ばれて、パズルで遊べる世界に招待された。うれしい響きだった。
「ほかの大人は何処の誰なのかな。私が知っている大人だと助かるよ」
「ルールで話せないにゃ。でも黒木さんは特別な大人とは違うにゃ」
「黒木さんは異なるのよね。特別な大人と特別な課題と、ナクユのジュエリーを含めて謎が深まるばかりかな」
「感覚的にわからないのか。俺は把握しているぞ」
キリリキくんらしい、せっかちな答えだった。特別な大人が少し分かってきたけれど、他にも聞きたい疑問は山ほどある。でも次は黒木さんの解決だった。
「話を最初に戻すね。黒木さんの目的を知れば、私たちとの関係も見えてくると思うのよ。普段の黒木さんは嘘をつかないけれど、答えた情報を見極めたいかな」
「人間は大変だ。人間の子供たちもたまに嘘をつく。俺たちは嘘をつかないぞ」
「黒木さんの言葉を信じたい。でも何処まで信じたらよいのかな」
私たちは警察でも超能力者でもないから、嘘を見破る術はなかった。パズルと違って複数の答えがあるようなら、何が真実か確率を上げるしかない。
「同じ答えの質問を多方面から聞くにゃ。嘘なら答えにくいにゃ」
ロクヨちゃんが提案してくれた。
「矛盾点がないかを確認するのね。質問は私たちが考えるから有効そうね」
「ナクユに関連した質問がよいと思うにゃ。とっさに嘘をつくのは難しいにゃ」
ロクヨちゃんの考えは理解できて、相手の反応を見ることができる。黒木さんは事前に質問を知らない。クロスワードのヒントみたいに、同じ答えでも異なる質問を作れば嘘かどうか分かる可能性があがる。
「ロクヨちゃんの作戦がよさそうね。質問と答えを揃えましょう。想定の答えと違う場合もあるから、対処方法を考える必要もありそうね」
ノートパソコンを持ち込んで、キリリキくんとロクヨちゃんが質問を考える。私が質問と答えをまとめて、私自身が考えた質問も追加していく。
時計の針が日付を超えたころには、多くの質問がそろった。これだけあれば充分だったので、明日の準備が完了した。頭と体を休めるために寝室へ向かった。
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