第20話 国同士の境
正門から堂々と街の外に出たけれど、門番のぬいぐるみには止められなかった。
「これでスケルトン国に行けるよね。でも街に入って出るだけよ。わざわざナンバークロス国を訪れる必要があるのかな」
「並戸は何も知らなすぎる。途中の国に寄る意味を感覚的に理解できないか」
キリリキくんが立ち止まった。さすがの私でも全ての情報は知らなかった。相変わらずの上から目線だけれど、少しでもナクユを把握したい。
「街の外で国同士が繋がっているよね。通過するには国の許可を取る。その理由がわからないのよ。教えてロクヨちゃん」
困ったときはロクヨちゃんが頼りになった。
「見た目は街の外で国同士が繋がっているにゃ。お城の課題を解決しないと国の境を通れないにゃ。例えば山の道が岩で塞がれて、川には橋がなくて渡れないにゃ」
何かで通行止めにされて、解除するのにお城の課題を解決する。課題の解決有無によって地形が変化するみたい。電脳空間だからできる仕組みと思った。
「街の周辺は自由に行き来できる。それよりも外は課題を解決する。この考えで合っているかな」
「その通りにゃ。美奈さんは特別な課題を解決すれば、次の目的地に行けるにゃ。最後には交差の辞書を取り戻すにゃ。もちろん王家の秘宝も手に入れられるにゃ」
不明点はロクヨちゃんへ聞くに限った。キリリキくんにも見習ってほしい。
「わかったか並戸。そろそろ移動するぞ。正門から街を出たから、街の外でも課題が発生するぞ。周囲にあるものには興味本位で触るなよ」
先頭を切ってキリリキくんが歩き出した。文字系の国では元気があるみたい。街並みが見えなくなって、代わりに幅の広い川が前方に見えてきた。手前には背の低い黄色の花が咲いていて甘い香りがする。香りを楽しみながら花の空間を通り抜けた。
目の前に川があって、行く手を阻まれて前には進めない。川の流れも速かった。
「流れが遅ければ泳いで渡る方法もあるけれど、これでは向こう岸に行けないよ」
「並戸は泳げるのか。俺には無理だ。溺れてしまう」
「水泳以外にも大抵のスポーツは得意よ。自転車も長距離走も好きだから、トライアスロンの出場を考えたくらいよ」
「運動神経が抜群によさそうにゃ。羨ましいにゃ」
直接言われると照れくさかった。思えばキリリキくんとロクヨちゃんに私自身の話はしていないから、戻ったら話すのもよいかもしれない。
でも今は課題が先決で、川の渡り方を考える必要がある。
「向こう岸にはどのように渡るのかな。見える範囲に橋は見当たらないよ」
「問題はない。下流に少し行った付近だぞ。あまり時間はかからない」
キリリキくんが河原にある石の上を器用に進んでいく。私もナクユの動きに慣れてきたので、転ばずに石の上を歩いた。前方の景色が一瞬揺らいで、酔った感覚におちいった。足取りはしっかりしているけれど、何があったのか分からない。
「目の前に見える橋で向こう岸に渡るぞ」
キリリキくんが指さす方向に目を向けると、木造の平らな橋が見えた。
「いつの間に橋ができたのかな。先ほどまでは何もなかったはずよ」
川と河原のみで見渡しはよかったから、橋を見落とすのが難しいくらいだった。
「物知り老婆の課題を解決したからだ。それにより橋が現れた」
「ささやかな自由のペンダントが効果を発揮したにゃ。お城の課題を解決するとこの場所に橋が出現するにゃ。美奈さんの場合は、ささやかな自由のペンダントにゃ。同じルールが適用されるにゃ」
胸元のささやかな自由のペンダントを握りしめた。景色が一瞬揺らいだのは、効果を発揮したからみたい。橋を歩きながら川を眺めると魚が泳いでいた。魚釣りはできるのか考えていたら、橋を渡り終わった。これでナンバークロス国を出たみたい。
橋から離れてから振り返ると、いつの間にか橋は消えていた。
「スケルトン国まではどのくらいかな。物知り老婆の課題で時間がかかったよね。残りの時間でスケルトン国へ行けるかな」
「今までと同じくらいだ。クロスワード国周辺は国同士の距離が近いぞ」
今日のゴールが見えてきたから足取りが軽くなった。今のところ天候は晴れているので、歩くにはよさそうね。
「次回は私の特別な課題をお願いするにゃ。ムサシ国王の期待に応えたいにゃ」
「ナクユにも慣れてきたから、ロクヨちゃんの特別な課題も順調に進めるね」
当たり前だけれど自国の特別な課題に関心があるみたいで、歩きながらロクヨちゃんは踊り出した。嬉しくて待ちきれないみたいね。
ナクユは謎が多いけれど、キリリキくんとロクヨちゃんとは仲良くなった。パズルを抜きにしても両方の特別な課題を解決したい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます