第4章 作成支援ソフトと見えない人

第15話 パズル作成支援ソフト

 翌日の夜になったけれど、まだ体のだるさは残っていた。電脳空間へ行った影響と思うから、ナクユに行ったあとは一定期間休む必要がありそう。頭の中を動かすには支障がなかった。


 黒木さんからの依頼を思い出して、オリジナルパズルの問題を作り始めた。

 依頼のオリジナルパズルはお気に入りのひとつで、知り合いの佐野さの直也なおや君に作成支援ソフトを作ってもらった。佐野君は大学時代の同級生で、大学卒業後は父親が経営する、うどん屋で働いている。


 作成支援ソフトを起動させて、作りやすいサイズの問題から作成する。読者の解く順番を想定しながら問題を考えて、完成までの道順を頭の中に組み立てた。作成支援ソフトは名前の通りに支援で使っている。頭の中を紙面に書き写す手助けだった。


 全体の配置を考える。パズル作りも最初が肝心で、数字と交差するマスを修正していくと確定部分が増えてきた。

「ソフトの操作に慣れてきたけれど、作るのに手間を感じるかな。佐野君に頼んで修正をお願いするかな。ちょうど作ってもらいたい作成支援ソフトもあったよね」


 お店の営業時間は過ぎているから電話しても平気と思った。

「佐野君よね。パズルの作成支援ソフトで――」

 15分くらい話して作成支援ソフトの修正をお願いする。新たな作成支援ソフトの相談も一緒にした。佐野君の手が空く時間を考えて明日お店で会う約束となった。


 翌日になって、佐野君が働いているうどん屋へ向かう。市街地から少し外れた場所にあって自動車で10分くらいだった。

 お店に着いて、のれんをくぐった。おつゆに使われる鰹の香りが漂ってきて、厨房から佐野君が姿を現した。


「仕事中にごめんね。多くのパズルを短期間に作る必要ができたのよ」

「ちょうど休憩時間だよ。気にしなくて平気だよ」

 近くの椅子を勧められた。テーブルの向かいには佐野君が座った。


 佐野君は体育会系を思われる体格で、パソコンは子供の頃におじいちゃんから教わったみたい。大学時代に私がパズル作成で苦労していたら、佐野君が作成支援ソフトを作ってくれた。


「作成支援ソフトで操作部分を修正してもらいたいかな。対象のパズルが好評で使う頻度が増えたのよ」

 ノートパソコンの画面を見せてソフトの問題部分を具体的に説明する。慣れてくると私なりの癖がみえてきたので、パズルの作成部分で修正してほしかった。


「目的を決定するまで手数が多いのか。全体を見直すのは時間がかかるよ。よく使う機能をアイコン化にするか、直接実施できるようにする」

「最初は暫定版で構わないかな。すぐに使いたいから、できたら教えてね」

「機能をまとめたアイコンを作るよ。今日中には送れると思う」


 修正イメージを教えてもらったら満足のいく内容で、その内容でお願いする。続いて鞄の中から資料を取りだした。今考えている漢字のオリジナルパズルね。

「もうひとつお願いがあるのよ。新しい作成支援ソフトを作れるかな」


 佐野君にみせた資料にはルールと例題が載せてある。佐野君はパズルに詳しくないから、解き方がわかるように例題があると説明しやすい。作成支援ソフトのイメージも書いておいた。


 佐野君は資料に目を通して、確認が終わると視線を私へむけた。

「2週間あればひな形を送れるから、実際に使ってみて確認してほしい。感想を聞いてから修正する感じだよ。期間的には平気だろうか」

「掲載は決まっていないから日程は平気よ。いつもありがとう。仕事が進んで助かるから、今度は何かおごるね」


「気にしなくて平気だよ。俺もプログラムの勉強になるから、お互い様だよ。作る上で何点か教えてくれないか」

 パズルを作る手順は操作に影響する、別解の確認方法も細かく聞かれる。佐野君からの質問が終わったので、仕事の邪魔となる前にお店をあとにした。

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