第10話 光るジュエリー
夜の9時すぎに東京から自宅へ戻ってきた。パソコンを起動させると黒木さんからの新着メールがあって、ヒントが18個のナンプレを送ってくれた。見ただけでヒントが少ないとわかる。
「解き味はどのような感じなのか、解くのが楽しみね。普通くらいの難易度かな」
印刷して解き始める。最初の手掛かりはいくつかあって、素直に数字が埋まっていく。仮定の数字はあまり使わなくて5分とかからずに解き終わった。
「私には簡単な部類だけれど、一般読者なら普通くらいの難易度かな。18個のヒントは珍しいけれど、楽しめるパズルとは限らないかな」
解き味が素直すぎて、面白みはあまり感じなかった。
今日はロクヨちゃんの国へ行くので、重要なメールのみを送ってリビングに向かった。テーブルの上にはキリリキくんとロクヨちゃんがいる。ナクユのジュエリーはなくさないように、テーブルの見やすい場所に置いてある。
「待っていたにゃ。私の準備はできているにゃ。いつでも行けるにゃ」
元気にロクヨちゃんが話しかけてきた。
「今日はいっぱいパズルを解きたい。特別な課題を順調に進めたいかな」
「美奈さんなら次々にパズルを解けるにゃ。楽しみにゃ」
ナクユのジュエリーを手にとって首につけた。
宝石部分を強くさわると、今までと異なった現象がおきる。宝石の色が緑色に変わって光り出した。
「ロクヨちゃん、ナクユのジュエリーがおかしいかな」
光っている宝石をみせる。
「きれいに光っているにゃ。ずっと見ていられるにゃ」
ロクヨちゃんが答えている間に、光は消えて元の青色へと戻った。
「今は元の色と状態に戻ったけれど、どうして光るのかな」
「ナクユのジュエリーだからだ。感覚的に分かるだろ」
キリリキくんが当たり前のように答えたけれど、光る理由は分からなかった。宝石部分を強くさわると、ほかの色にも変化して数秒後には元の状態へともどる。宝石は七色まで変わるのを確認できた。
「理由は分からないけれど、見ているだけでも楽しめる宝石ね。ナクユのジュエリーは他にもあるのかな。子供が行くのにもナクユのジュエリーが必要よね」
綾音ちゃんの話を思い出したので、ロクヨちゃんへ聞いた。
「いっぱいあるにゃ。人間の子供たちはナクユのジュエリーを使って来るにゃ」
「前回はスカイカス師匠のみに会ったけれど、子供たちは何処にいるのかな」
クロスワード国では誰にも会っていなかった。
「感覚的にわからないか。ナクユの世界にいるぞ。俺たちは人間の子供たちを楽しませるためにパズルを作っている。前にも言っただろ」
「覚えているよ。私も子供として認識されているのかな」
「違うにゃ。美奈さんは特別な大人のひとりにゃ。人間の子供たちとは別の理由でナクユへ来ているにゃ」
特別な大人とは何か気になった。普通の大人との違いが分からなくて、特別とはどういう意味かも知らない。何が違うのか疑問だけが残った。
「特別な大人よね。気になるけれど実際に行って確かめるのが早そうみたい。今回は絶対にパズルを解くよ。さっそくナクユに行きましょう」
「私の国に行くにゃ。楽しいパズルが待っているにゃ」
ロクヨちゃんの目が赤く光った。視界が狭くなっていく。まだ慣れていない。でも無理な抵抗はせずにまぶたを閉じた。
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