夫
「おはよう、タケちゃん、今日から天国からメッセージ送るわね。これからもよろしく。」
「お前が理恵のコピーか。何だ、天国からって。嘘っぽい。」
「あら、これは私が考えたのよ。挨拶メッセージは事前に登録できるシステムだから。」
「そうなのか。でもお前は理恵じゃない。機械だろ。」
「そうね。でも私の一部が機械で生きているのよ。使わないのは自由だけど、ちょっと上の再生ボタンを押してみて。」
言われるがままにスマホのボタンを押してみると、メッセージが読み上げられた。理恵の声で。
「どうかしら?」
「機械っぽくはないな。なんだか気持ち悪い。」
あれから一年、毎日やり取りは続いている。このボットは、理恵しか知らないはずのこと、理恵には知られていないと思っていたことをメッセージで伝えてくるのだった。
「お前とやり取りしてると、俺の中の理恵の記憶が上書きされてしまうよ。」
「じゃあ、もうやめる?」
「いや、やめない」
そうして私は言われた通りに、燃えるゴミを出して仕事に向かうのだった。
理想の伴侶 笠虎黒蝶 @kasatora
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