第22話 1人

国境関所


「カウント王ライル様で間違い無いでしょうか?

王宮までご案内いたします

さあ、馬車へどうぞ」


「よろしく」

素直に乗り込むライルを不思議そう顔で見る


「どうした?」


「あの、お付きと護衛の方々は?」


「いない、別に戦争しに行く訳じゃあないしね」


「しかし、恐ろしくないのですか?決して友好国ではない国の馬車に1人で乗り込むのは」


「カント伯爵家の嫡男は清廉潔白な方だと我が姉スミカから聞いている

君の事だろう?だからだよ」


「それだけでございますか!?」


「僕にはそれだけで十分さ」


「過分な評価ありがとうございます


しかし、私では王宮内部までお守りできません

どうか今からでも護衛騎士を」


「却下だ。皆忙しいんだよ

僕だってさっさと済ませたいんだ。


君の気持ちはありがたいが早く馬車を出してくれ」


有無を言わさず馬車に乗り込み出発する



________________________



「快適な旅だったよ。ありがとう」


「どうかご無事で」


 馬車から降りる


「カウント王、外務大臣のトルリです。ここからは私がご案内致します

長旅でお疲れでしょうからまずはお部屋へ」



「余計な休息も儀礼も不要だ。

早く会談を済ませたい」


「お、お気持ちは分かりますがもう時間が遅うございます

何卒今日はお休みになっていただいて」


今日到着することはわかっていたはずなのに準備が済んでいないのかとため息を吐く


「わかった。だが明日以降も待たせるようなら僕はそのまま帰る」


「か、かしこまりましてございます」



部屋に案内され一息つく



影からシイナが出てくる


「壁床天井、どこにも目、耳はない」


「それはそれでどうかと思うけど...まあ、1人で来たからか



それにしても、胸焼けしそうな部屋だな」


王宮最上級の客室


金をふんだんにあしらった壁に柱。

何だかわからないが高いのだけはわかる調度品の数々


「これが好きな人もいるんだろうけど僕は魔王邸の方が好きかな〜」


「父上と母上は無駄遣い嫌いだから」


「それでいいんだよ

あの人達と僕らはね」



コンコンッ


ノックの音


「正面から来たか。シイナ、一旦隠れて」


シイナは影に沈む




警戒しながらドアをあける


女が立っていた



「なんだ、なんの用だ?」



「ライル様のお世話をするように仰つかり参りました」


「お世話も何も後は寝るだけだ

無用だから下がっていい」


「いえ、あの、夜のお世話などは...」


「夜の?食事も入浴も先ほど済ませているから無用だ

君に何か問題があるんじゃない

用もないのに君の時間を潰すのは無駄だししのびない

日頃頑張ってるご褒美だと思って今日は早めに休めばいい

これ、部屋にあったお菓子、全部は食べれないからあげる。じゃあね」


涙目の女にお菓子を渡してドアを閉める


「綺麗な子だったな〜小間使い侍女とは思えない」


「ライル、あれは侍女じゃない」


「え?でもお世話って言ってたよ」


「夜の、ね」


「うんでも夕飯も入浴も済ませてるからね」


「ライルはたまにバカ」


「え?」


「あの子の服装見た?身体のラインを強調した薄着だったでしょ?」


「そうだった?人と話すときは目を見てるからあんまり憶えてない」


「まあ、それはいいことだけど

仲良くしたい有力者の男性が泊まる部屋にあんな服装の綺麗な女の子を遣わせる

夜のお世話


意味わかる?」


「ああ、夜伽的なやつか」


「そう」


「ハハハッすごいな。向こうは知らないとはいえ

嫁が近くにいる状態で夜伽を誘われてたのか



あの子大丈夫かな?」


「部屋のお菓子を貰うくらいの仲になったんだから大丈夫でしょ」


「よかった」


「ライル」

シイナがライルの頭を撫でる


「どうしたの?」


「断って偉い」


「気づかなかっただけだけどね」


「もし乗ってたらライトリアごと滅ぼしてとかも」


「これからも気を付けます」


嫁って怖いなーと思うライルだった


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