第21話 早いよね

この王様大丈夫なのか?


普通この状況で考えればカウントとトンカウ商会が繋がっているのは明らかだろう


ライルは少し恐怖すら感じながらグレンから目を離さない



「スミカ姉様は既に結婚している

カウントはライトリアに降るつもりはない


もうぶっちゃけちゃうけど塩と鉄の問題も解決済みなんだ


もうこちらには何も問題ないんだよ


これからはお互い不干渉の隣人でいいでしょう

あんなに、貴方達が下に見てた辺境の田舎にこれまた見下していた土属性、魔族、獣人が集まっているんだ


他国になるんだからせいせいするだろう?


もうそれでいいじゃないか」


グレンは黙り込む


何を考えているんだろうか


「何とかスミカともう一度話すことはできないだろうか?

頼む」


意外だ、人に何かを頼む、願うことなど無かった王が

命じるだけで全てが思うがままだった王がライルにほんの少しだが下手に出ている



「ん〜そんな態度でこられても姉様は今出掛けているんだよ

しばらく戻ってこないんだ」


「待つから!スミカなら俺の願いを聞いてくれるはずなんだ!

おい!ファムだったか!?お前だってスミカが望めば身を引くだろう?本当にスミカが大事ならそうするはずだよな!」


「わ、私はスミカ様の...」


「ファム、いい


ライトリア王、姉様が戻るのは1年以上先だ

そこまで待つことはできないだろう?」


「一年!?何故そんな長期間なのだ!」


「僕もまだわからんけども子供を産んですぐ戻るってのも難しいだろうよ」


「子供!?」


「詳しく何ヶ月かはわからんが妊娠したららしいよ。だから安全な場所へ隠れてるのさ

まだこの国は出来立てほやほやの不安定国家だからね」



「だ、だ、だ、だ、だが、婚約破棄からまだたった半年だぞ!」



「それに関しては僕もそう思う



最初は「私なんてスミカ様には!」とか言ってたくせに


早いよね」


ファムを睨みながらこぼした













________________________



トボトボと帰っていくライトリアの一団



車列を眺めるライルにファムが尋ねる


「よろしかったのですか?あのような約束を

して」


「ああでも言わないと帰ってくれないでしょ?あいつら


まあ、僕も別にあの国に人達に飢え死んで欲しい訳じゃないし戦争したくもない」


あの後、グダグダと的を射ない文句や要望を続けるライトリア側に

カウントの独立スミカの結婚、ライトリアからの移民にこれ以上異議を申し立てないならば

食糧品の輸出と大使館を設置し敵国認定を取り消す事を考えようと態度を軟化させた

更にそれらへの国同士の条件すり合わせの会議の為にライトリア王国へライルが訪問しようと


「いささか譲歩しすぎたのではないですか?

あいつらどうせ調子に乗りますよ?」


「まあ、最後の情けかな。一応去年までライトリアの国民だったしね〜


心の底では願っているんだ

隣人とはなるべく仲良くしたいとね」




約1週間後、ライトリアから招待状が届いた


「召喚状じゃない分成長が見えるかな?」


「まあ当然ですね、あちらは大分困って切羽詰まってるらしいですから

地方では小さな騒乱が起きてるようですよ。

白いパンをよこせって


大麦パンも美味しいですけどね」


「柔らかいパンに慣れすぎて顎が弱ってるのかね、僕的には魔王領から入ってきた米?ってやつ、あれ美味いね。引かなくていいから持ち運び便利だし」


「あああれいいですよね〜ウチでも作りますか?畑ではなく田んぼってので作るらしいですよ?水で浸した柔らかい土の」


「うーん考えたんだけどね

あれは魔王領の特産のままでいいんじゃないかな。完全に平等で同等な同盟を続けるにはお互いに皆にわかりやすい魅力があった方がいいでしょう

作るなら魔王領に土地買うよ」


「既に大旦那様夫妻が水田込みで購入済みです。」


「農業に対する熱量はあの人達に勝てないな...

2人とも土属性じゃない癖に

早く暇になりたい」


「ライトリア方面がなんとかなれば暇もできましょう」


「ハハハ、そうだね。

じゃあ行ってくるか!」


「必ずお守りします」


「ファムはここに残って国の防衛を

僕には強い奥さんが着いてるから


なんかあったら影渡りですぐ帰っくる


行ってきます」


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