第20話 剥けない王

「平民だと!辺境伯の娘だぞ?いや何より俺の許しもなくそのような事を」


「元辺境伯ね、独立宣言してんだから文句言われる筋合いないね」


「ぐぬぬ、先ほどからお前の口の利き方はなんだ!」


決して強面ではないライルから張り詰めた空気が流れ出る

母親の血か


「最愛の姉を衆人環視の元辱め、自分を奴隷階級に落とす法を施行する元主君への態度としては優し過ぎるくらいだと思うがね」


「ス、スミカに関しては多少は反省している....だからこそ側妃に迎えてやろうと今日こうして参ったのだ

一度スミカに会わせてくれ!アイツも俺に会えば考え直すだろう!」


「姉様はここにはいない」


「は?先触れには2人でくるようにと伝えたはずだが?」


ライルはため息を吐く


「はあ、まだ理解してくれないか

少し疲れた、お茶でも飲みながら話そうか。

菓子と果物もあるから遠慮なく」


無糖の茶とミカンをいただく


「カウントは既にライトリア、グレン王の支配から離れている

僕もあなたの臣下ではない。あなたがいくら先触れで指示出したって聞く理由なんてないんだよ。わかるかい?



あ、毒なんて入ってないよ。一房毒味しようか?」


ミカンを持って止まっているグレンに声をかける


「あ、ああ毒の心配はしていないがな、あの、

ははは

そうか」


グジュ、ジャジュ

爪を立てミカンが潰れる


「え?まさか





みかん剥けないの?」


顔を赤く染めるグレン


「いや、いつもなら侍女が...」




「王族ってすごいなぁ」


この男にスミカが嫁がなくてよかったと心の底から安堵したライルだった




________________________



ライトリアの護衛にミカンを剥かせ少し落ち着いた後




「さて、もう気は済んだかな?姉様は姉様で幸せをつかんだ

カウントとしても自国民との結び付きを強める為にもこの結婚は利のあるものなんだよ」


「だ、だが利を考えるならば私の側妃に収まった方がいいのでは?

決して、決して認めた訳ではないがカウントが独立国になるのならば隣国のライトリアとの友誼を結ぶのが定石だろう」



「我がカウント家への言動からライトリア王家への信用は皆無

父は前王への情くらいはあるだろうけどその息子にはなにもない

どこの国の貴族かわからんがあの婚約破棄の事、面白おかしく話しまくったのかな?


平民の間でも知れ渡ってるよ

もちろんカウントでも





嫌われてるよ〜君たち、我が国民から


ライトリアからの移民約40万もいるしね、ライトリアとの友誼なんて結んだら暴動が起きる」


「移民40万など許可していない!

財務大臣が許可したのはトンカウ商会な従業員だけだ!」


「トンカウ商会の従業員ですよ?報酬はカウントまでの食事

そして落ち着くまでの衣食住」


「トンカウ商会と繋がっていたのか!?」


「知らなかったのか....」



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