第14話 トンカウ商会

王国、皇国

そしてそれらを囲む小国郡


山脈で遮られ孤立する魔王領別だが、最大の商会、交易会社はトンカウ商会だろう


圧倒的な人員、物量とスピードで魔王領以外の大陸東西南北に食糧、雑貨を運ぶ


決して相場を崩さずに多大な税を納め

慈善事業にも力をいれているこの商会を悪く言う人間は少ない


そして、決して清廉潔白ではなく世渡りの為ならば賄賂なども使いこなす


だからこそあまりに巨大な組織だが、特権階級から敵視される事も避けている



もはや大陸の国々はトンカウ商会無しでは立ち行かない



しかし、商会の会長は謎に包まれている


主な商談は各国に配置された支店長達がつつがなく進める




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ライトリア王国 王宮 財務大臣執務室



「本日はお時間を作って頂きありがとうございます」


「トンカウの支店長だかなんだか知らんが財務大臣であり公爵の私の貴重な時間を奪うんだ

つまらない話なら許さんぞ」

ふんぞりかえりながら相手を徹底的に下に見る


レビュライト公爵、財務大臣

前王の末弟である


「例の新法とカウント領でございます」



「....どこで知った?あれはまだ公開されていない」


「情報は商人の命ですから」


「フンッそれで?」


「我が紹介には多数の土属性、魔族、獣人の従業員がいます。商人として有能な人が多いので新法施行前に彼らを他国に移したいのです。

もちろん彼らは王国、皇国との取引からは外します」


「ふむ、そうだなあ

まあお前らの気持ちもわかるが、大切な奴隷の人数が減るのは法案を考えた陛下の手前難しいかもなあ


だが、お前らの熱意に、心がけしだいだなあ」

暗に賄賂を寄越せとニヤニヤしながら伝える


「もちろん心得ております。そこでカウント領です。なんでも王国からあちらへの通行を差し止めたとか」


「それも知っているのか、奴らに塩と鉄を渡さないようにするためだ」


「もったいない」


「あ?」


「だいぶ溜め込んでますよ?奴ら」


「はっ農民しかいないあの土地の奴らだぞ?」


「使い所が無いんですよ。都会ならばいくらでも娯楽がありますが、あそこは狩りと子作りくらいしかやる事がない場所です

酒も手作りがほとんど

しかしありあまる農作物は私共が相場で買い取りますから金だけは貯まって行きます

無欲な変わり者達が領主ですから税も安いですからな」


「ほう、考えてみればそのとおりだな。

だが、だからといってどうする?」


「売るんですよ

屑鉄を」


「屑鉄?」


「はい、大変な手間を掛けなければ製錬もできないほど錆や不純物にまみれた屑鉄です

ただ同然の値段で大陸全土から集めました

まずはもう王国、皇国から鉄は来ないと情報を流します

次の商隊が持ち込むのが最後だと...


そして我々が鉄を送り込みます

もちろん屑鉄とは教えずにね

奴らの金がなくなるまで


我らの商隊の通行を許可するだけで

利益の2割は公爵様のものです

いかがでしょうか?」


公爵は無意識に垂れていた涎を拭う


許可証1枚で億はくだらない見返り

これを逃す手はない


「3割だ

3割ならばすぐに許可証を発行しよう


商売はスピードが命だろう?」


「それを言われては仕方ありませんな。公爵様は商売上手でございます

3割でお願い致します」


目が金貨に変わった公爵はすぐに許可証を発行する


そして次の日


カウント領の関所には先が見えない途方のない長さの荷馬車の列


大陸最大の商会、トンカウ商会の総力をあげての運搬だろう





「このような形になりました。会長」


「はいはーい、ありがとうね

お疲れ様です」


にこやかに話す女性がいた


「さて、荷物の方はこちらに下ろしてくださいな」


屑鉄が乗っているはずの馬車からは数十人の人間が降りてくる


「初めまして皆様

前辺境伯の妻、現カウント君主ライルの母マリアナです

お家と食糧はご準備していますのでご安心ください

後で係の者が順に参りますので彼らと話し合い

職などお決めくださいね

魔族、獣人の皆様は希望を頂ければ魔王領での暮らしも可能です

カウント領はどの属性、どの人種も大歓迎でございます



どうかごゆるりと考えて決めてください」


王国、皇国全土から集められた土属性、魔族、獣人、そしてその家族達


荷馬車から降りる全員にマリアナは笑顔で挨拶をする


最後の集団に挨拶をするころには2回目の日没が迫っていた



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