第9話 母親、そして教会
「いやぁ、まさか社交界の花と有名な辺境伯夫人に応対していただけるとは光栄の極みです」
でっぷりとした腹を法衣で隠してヘラヘラと話す
「花だなんてそんなことありませんよう。それに、元辺境伯夫人です。
今の当主はライル様です。陛下にも認めていただいていますから」
スミカをより品よく大人の色気を足したような美人
笑顔だが何故だか凄みを感じる
「お、おっとそうでしたな。
し、しかし噂に聞くとライル様は土属性だそうで、たかが農民ならまだしも土属性で歴史ある貴族家の当主とは苦労が大きくなるでしょう、いささか性急だったのでは?」
空気が変わる
「もう亡くなりましたが私の祖父は一代で平民から伯爵で陞爵しました。そして優れた土属性の魔法使いでした
現在は父が伯爵位を継ぎ隣領を納めています。
私自身は火属性ですが私は祖父が大好きですし尊敬しています。
今の言葉は祖父の、果てはロッヂ伯爵家の否定ですか」
「い、いやそんなことは
ああ!そうです!ルミア様が悲しんでおりました辺境伯夫人をなんども夜会や茶会に招待しているのに一向に参加してくれないと!」
「だから元なんですがね...はあ、神官様もここまで来られたのならお分かりでしょう?辺境伯領から王都や皇都に行くのにどれだけの手間と時間がかかるか
私は基本的にここにいますから、こちらに来て頂けたらいくらでもお相手しますよ」
「皇女であり王妃であるルミア様とは良好な関係を築いた方が良いのでは?」
「不敬ですよ?王妃ではなく王太子妃です」
王の死はまだ公表されていない
「あ!、失礼いたしました!」
「それに、ルミア様がスミカにした事を考えれば仲よくできるわけがないでしょう」
「そそそそうですかな?ハハハ
それにしてもライル様はまだ戻りませんかな?」
「今は収穫の真っ只中ですからね、小麦畑だけでも広大ですからね」
「は?畑?」
「はい、今年も豊作で良かったです」
「ライル様は畑にいるのですか?高位神官である私を待たせて?」
「はい」
「ふざけるな!私はマイル教本部の大司祭だぞ土いじりの為に待たせるとは何事か!」
「収穫の日に農家の一年の頑張りを労うのは貴族家当主の当然の務めですよ
まあ、王都にこもって務めを果たさない方が多いようですが」
「ふ、不愉快だ!帰らせていただく!」
「どうぞどうぞ私もこのあと畑に合流する予定ですので、予定が早まるのは助かります。フフフ」
ありえない、皇女ルミア誘いを断り続けた女が農民達との畑イジリを楽しみしてウキウキしている
ルミアとグレンの命により爵位の移譲を取り消させるよう説得しに来たのに、全く話が通じない
神官は逃げるように馬車に乗り帰っていったや
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1ヶ月後、王の死が公表され葬儀が行われた
王都 辺境伯別邸
「はあ、めんどくさい」
葬儀が終わったら早く帰りたかったのだが戴冠式と新辺境伯として謁見式の招待状が届いてしまった
領にいたなら距離を理由に断れたのになーとため息が増える
「若様、じゃない親方様!なぜ王が殺されたかわかった。あいつらこの法案を通したかったんだ」
影から紙を受け取り中を確認する
(ここまでバカだったか、やりたくないけどな〜しょうがない)
急いで手紙を書く
「これを我が家とロッヂ伯爵家へあと、シイナの実家にはこれを頼む、シイナも読んでおいてくれ」
「ああそうか、王国もおわりか」
「それは明日のあいつら次第さ
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