第7話 王国

[パンは西から、文化は東から]


比較的新しい王国の諺である


魔王領との境となっている巨大山脈に起因する特殊な気候から辺境伯領を始めとする王国西側は古くから農業が盛んであった


反対の東側では皇国の宗教美術、経典を元にした歌劇なども影響し煌びやかな文化が栄えていった


退屈な生活を嫌った貴族達は領地経営を代官に任せ王都に近くに買った別邸で優雅に過ごす

余剰生産品を王国最大の商会、トンカウ商会に売りその金で王都で煌びやかな生活を送る


それが貴族のステータスであり、自ら好んで僻地に篭るカウント辺境伯家は変わり者の少数派だった


だからこそ王国の国土の約3分の1を領土としていても文句も言わないし羨みもしない、

魔王領に隣接し農地と山がほとんどの文化が育たない土地だから


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「おかえりなさい」


「説明は必要か?」


「いいえ」 


「ならばあとは任せる。私の助けが必要は時はいつでも言いなさい」


「わかりました。好きにさせてもらいます」


爵位の移譲、姉の悲劇、起こったことの大きさに比べててあまりに簡素な2人の会話だった




「父さん、陛下に別れの手紙を書いておいた方がいい」


「殺すのか?」


「僕じゃない...助けると影渡りがバレる。そうしたらシイナに危険が及ぶかもしれない

そこまでの価値をあの王太子の父親には見出せない

だから僕は助けない」


息子から残酷な通告をされ目を瞑る

だが自分を[父さん]と呼ぶときの息子はいつも完全な本音だ


「わかった。それでいい」


(息子の教育を間違えた以外は悪くない王だったんだがな)




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