第3話

カウント辺境伯ラングとスミカは護衛1人と共に馬車に乗り込む

ここまで親子に会話はない

あまりの事態にお互い何から切り出せばいいのかわからない

しかし、王都から辺境伯領までは馬車で7日ほど、ずっと無言とはいかない


馬車が動き出してすぐにスミカは消え入りそうな声で喋り出した

「お父様、申し訳ありません。私がいたらないせいでこのような...このようなっうぅ..」

最後まで言葉にする事が出来ずに涙が溢れる


「スミカ、謝らないでおくれ、私が悪いんだ。ライルがあんなに反対していたのに!私が陛下の頼みを断らなかったばかりにスミカをこんな辛い目に!」

痛々しい愛娘の姿に爪が食い込み血が滲むほど拳を握り後悔する

「お父様は悪くありません。王家からの婚姻を受けるなんて貴族として当たり前の事です。お父様は辺境伯として当たり前の事をしたまでです。

全ては私の責任」

「いやいや、王太子の性格はライルから聞いていたんだ私が悪かった」

「いやいや私が」

「いやいや」

「いやいや」

責任の取り扱いが続いていく


「さて、美しい親子愛の途中ですが親方様、若様からお手紙預かっています。お2人に会う事を勧めたんですが向こうでやる事があるらしいので」

フードを深く被った護衛は190cmはありそうな身体と釣り合わない綺麗な声で伝え手紙をラングに渡す


「ライルから?ああ影渡か、しかし来たなら待っていてくれればいいものを..!?

そうか、もうそこまで...ミラ、今から手紙を書くからライルに届くてくれ」

懐からペンを出し書き始める

「数分護衛を離れる事になりますが大丈夫ですかね?」

「数分なら大丈夫だ。私だって貴族の当主、自分と娘くらいは守れるさ」

「親方様がそういうのならば」

ミラと呼ばれた護衛は手紙を受け取ると自分の影の中にトプんと沈んだ


ミラが消えたのを確認するとスミカが意を決したように喋り始める


「お父様...王家から婚約破棄され更に傷物の私にはもういい縁談は来ないでしょう。このうえは出家して修道院に入ろうかと思います。親不孝な娘をお許しください」

若い女性としてとても大きな決断であろう


しかし、ラングは少しスッキリした顔で言う

「すまんスミカ。私はもう辺境伯を辞める。もちろん陛下の許可が必要だが婚約破棄の詫びの一部として必ず認めさせる。

これから当主はライルだ。残念ながらお前の嫁ぎ先も出家も辺境伯家当主のライルが決める。」


王国中から貴族令嬢の鑑と言われたスミカはあまりに衝撃的な言葉にびっくりし口を開けたまま動けなかった



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