契約締結,そして新生活(前編)
エレナという錬金術師に出会って二日目。朝はドタバタだったが、朝食前に落ち着きを取り戻した。今は食卓二人でトーストを齧っている。
「すみません。私がもっと早く起きれば朝食を作れましたのに。ヴィルのお手を煩わせちゃいました」
特に昨夜のことを気にしていない様子だから俺も変に意識しないでさっさとそれを忘れることにした。
「いえ、別に構わない。長旅で疲れているだろうからもっと寝てもよかったと思うが」
「それじゃ使用人失格です!」
「使用人として雇った訳じゃないんだが……」
そもそも何で大商人の娘が家事全般できるのだろうと疑問に思ったが、彼女の家の闇が垣間見えて口に出して詮索するのを止めた。
エレナは食事中音を出さず、行儀よく静かに食べていた。
俺は食べ終わった頃を見計って今日最初の予定を切り出す。
「まずは契約だな。と言っても複雑な話じゃない」
今朝製作した契約書の正本と副本を持ち出した。すでに俺のサインを入れてある。
「エレナの生活費や錬金術師としての経費はすべて俺が負担すること。エレナが受ける依頼の報酬は俺が貰うが、一部小遣いとして出すからそれを自由に使っていい。錬金術師のゴールドランク資格試験に合格する暁には、この契約が終了とする。大まかはこんなものかな」
商人意識というか商人の娘だからかエレナは契約書を真剣に、じっくり目を通す。
「あの……」
しかしエレナはすぐにサインをせず声を掛けてきた。
「この契約本当に大丈夫ですか。私を優先してヴィルが不利になるようなものですが……。例えばこの低すぎる解約料とか」
「それは、エレナいつでも自由になっていいという意味で設定した」
若い女の子を契約で縛るのは気が進まない。だからもし彼女が一人でやっていけると判断するのなら、喜んで手放すつもりだ。
「私、こんなによくしていただいて本当にいいでしょうか。やっぱり相応な代価を——」
「エレナさん!」
「ひゃい!」
思わず大声を出して彼女を驚かせてしまった。
まったくもう、昨夜のこと蒸し返さないでほしいのだが!
「とにかく、俺はこの内容でいいからエレナも問題ないならここにサインをしてくれ」
「は、はい。分かりました!」
また変な話になる前に多少強引に終わらせたが、エレナが言った通り彼女に有利しかない契約だから迷わずサインをしてくれた。
「エレナの字はきれいだね」
「そ、そうですか」
契約書の正本を受け取って確認して、些細なこと一つ気になった。『エレナ』のあと何かを書こうとした筆跡。習慣で家名を書こうとしたのだろう。
危うく使うことを許されない家名書いてしまいそうな瞬間、彼女はどんな思いをしたか俺にはわからない。
「それじゃ、これからよろしくな。エレナ」
「不束者ですが、今後ともよろしくお願いいたします」
こうして俺たちはパトロネージュ契約を結んだ。
まだ難しいかもしれないが、ゆっくり新しい生活慣れてくれればいい。
「よし、次はギルドにいくんだが、俺はちょっと準備とかがあって」
「はい、私は植物の世話をしてきますね」
薬草など植物のことをエレナに任せることにした。彼女の方が遥かに知識豊富で上手だからだ。
食堂を後にして寝室に戻り、契約書の正本を金庫に仕舞って一息つく。
「なんとなくだがエレナはまだ余裕を感じていないだろうな」
片目のせいで受けてきた仕打ちと今の待遇の温度差に戸惑っているかもしれない。だからよくしてもらうことに負い目を感じて焦っているのか。
時間で解決できればいいけれど。
「さてと、ジルからの返事は——」
気持ちを切り替えて机の上にある封筒に注目する。
「あ、来た。どれどれ」
魔道具の手紙を取り出して読み始めた。
『ぷっ、ははは。まさかあのヴィルが、あのヴィルが……女のことで悩む日が来るとは。いやはや、今年の春はいろんな意味で春だ。ぷははは!』
最初から王族あるまじき爆笑である。そう強く念じたのだろうが修正せず送ったのかよ!これはわざと直さないで俺をからかっているのだな。
エレナのことで悩んでいるのは間違いないけど春と関係ないじゃないか。
『えっと。気を落としている女性がいて、元気にしたいと。心から笑うと花のように輝く子だから笑ってもらいたい。だから助言がほしいと』
待って一言多くない!?俺がそう送ったの?いやしかし……。
……疲労か。チェックしたはずだが疲労のせいで見落としたのか。
エレナのことをそういう風に思った節があるから否定できないのが悔しい。何より他人から改めて言われると恥ずかしいことを考えたと実感した。
「何考えてたんだ俺は」
ええい!そんなことよりさっさと読み終えよう。
『クリスにアドバイスを聞いたら、心を込めて相手のことをちゃんと考えたプレゼントがいいらしい。飾りとかジュエリーはどうだろう』
終わった。クリスティーナにまで知られたから次会う時絶対二人にからかわれる。まあ、一介の男爵でそんなに会うチャンスがないけど。
それより、アドバイスはとても参考になった……かも。
『最後に、ヴィルが気になっていることだが……。彼女は魔族混血児か、単なる異常体質か。どう転んでも彼女は我が国に居て問題ない。どうか安心してほしい』
害をなさなければどんな者も受け入れる寛容な国だと言われているけど一応金色の目や魔族混血児についても聞いておいた。
こういうのは事前しっかり報告しておいた方が後腐れないのだ。
『彼女の問題はヴィルの問題だ。もし彼女に何かあったら遠慮なく頼ってくれ』
……保証人みたいな立場だからあながち間違っていないか。そうさせてもらおう。
お礼の返事はアドバイスの結果と共に返そう。
◆
午前中に昼ご飯食べてギルドに行く予定なのだが騎士団に用事があるのでエレナとは昨日の店で待ち合せることになった。彼女もまた行きたい服屋があってちょうどよかったと言ってくれた。
昨日のことをマルクに重点を押さえて手短に報告し、問題ないのを確認した俺はいち早く詰所を後にした。
急いだのは実は本命の用事は別にあったから。
「いらっしゃいませ」
初めて宝飾店に来てしまった。この店は品揃え豊富で大人気だとクリスティーナから聞いたことがある。初心者にはちょうどいい。
「アルゲンタム様、本日のご来店、心から歓迎いたします」
「あ、ああ。どうも」
店員の一人が挨拶しに来た。間違いなく初めてきたのだが、おそらく貴族向けの商売するため王都在住貴族の名前と顔をすべて覚えているだろう。
「どのような品をお求めでしょうか」
「えっと、女性へ贈り物をするつもりだが」
心なしかそれを聞いて店員が目を輝かせてテンション上がった。
「それではこちらのコーナーへ!若い女性に大人気な商品をたくさん取り扱っております」
案内されたコーナーは可愛らしい飾りがたくさん並べられている。確かに入店最初見たものとは雰囲気が違う。これは若い女性の間に流行っているデザインなのだろう。
「アドバイスが必要でしたら、お相手の特徴を教えていただければ」
ここは店員の提案に乗れば堅実な選択をできるのだろう。しかし、ジルバルド達のアドバイスに従うとそれはダメな気がする。
「いや。俺は一人でじっくり選びたい」
「分かりました。すぐそこに控えますのでいつでも声をおかけください」
仕事を奪ってしまって申し訳ないと思うが、店員はむしろより一層テンション上がって他の店員とひそひそと話し始めた。そして俺は複数の視線を感じる。
これは……面白がられているかもしれない。自惚れで済めばよかったが、【太陽の剣】だったことで注目を受けていると思う。
確か女性に贈り物をするのは珍しい気はするがそんなに面白いことなのか。
と、考えてもしょうがないので早速プレゼントを物色する。
しばらくして髪飾りの一つに目を奪われた。
「この藍晶石の髪飾り……。よさそうだな」
淡い青色が桜色の髪とも金色の目とも合うし、花のモチーフでエレナの雰囲気に似合うと思う。
昨日初めて会った時の光景を思い出しながら目当ての髪飾りを見つめる。
値段は14799ソルで同じサイズの石より一段高い。そして札に『特殊効果:マナ調和』と書いてある。
自然には人工的に付与しなくても効果を持つ石がある。もちろんその分値段は張る。
マナ調和は人体の魔力乱れを調和する効果だ。人によっては元気になったりすることもあるようだ。
「店員さん、この髪飾りの特殊効果。確かめてもいい?」
「かしこまりました」
俺の掌の上にハンカチを一枚、そして髪飾りを乗せられた。
体内の魔力に意識を向ける。堰を切るように魔力を無作為に放出する。しかし暴れる魔力の奔流は次第に穏やかで整然とした川のようなものになった。
俺の魔力で確かめた結果。このマナ調和の効果は値段以上の働きをしてくれている。大当たりだ。
「台座と金具は錬金術で作られた魔力伝導率の高い特殊銀合金で、宝石の効果をより引き出しています」
「想像以上のものだな。よし、この髪飾りに決めた」
「かしこまりました。贈り物用に包装いたしますね」
喜んでくれるといいのだが……。今更だけど勝手に髪飾りを送って大丈夫?迷惑じゃない?
「大丈夫ですよ。アルゲンタム様が熟考してお選びになったものですから、きっとお相手が喜んでくれます」
「……顔に出たのか」
「出すぎた真似を失礼いたしました」
「いえ。むしろ気使ってくれてありがとう。ちょっと気が楽になった」
女性の店員さんにそう言われると恥ずかしいながらもちょっと自信はついた。営業トークでも今は素直に受け入れよう。
会計を済ませて高級そうな小箱を受け取って、店を後にした。あとは渡すだけだがなんか緊張してきたな。
◆
例の店、『紅玉亭』に着くとちょうど正午前。昼食後、錬金術師ギルドと冒険者ギルドに行くのだが今日は時間的には余裕いっぱいだ。
「ヴィル!こっち、こっちです!」
店に近づくとエレナは手を大きく振って元気な声で俺を呼んだ。
「すまん、待たせたな」
「いえ、全然気にしていません」
彼女はすでにテラス席を取ってあり、俺は早速向かいの椅子に腰を下ろした。
「昨日の埋め合わせだ。うまい物を食べさせるぞ」
「昨日のことは大丈夫です。美味しいラザニアをいただきました!」
「遠慮するなって」
「じゃ、お言葉に甘えて……。えへへ」
彼女も楽しみにしているようだ。この店を気に入ってくれたのなら俺も嬉しい。
「エレナは何か食べられないものがある?」
「いえ、特にありません」
「それじゃ、イカスミパスタ二つをお願い。それとワインも」
「ご注文承りました」
よかった、まだ売り切れになっていない。
店員に注文をしてエレナと向き直ると彼女は青ざめた顔になっていた。
「ヴィル……?そそそれ」
「どうしたの?やっぱイカスミはダメだった?」
「ちちちがいます。お値段が……お値段が!」
落ち着かない様子でどもるエレナ。
なるほど、値段のことで気に病んだのか。
「昨日食べたラザニアは80ソルくらいでしたのに、イカスミパスタは700ソル越えています!」
「今朝採れたての海鮮をふんだんに使った料理だから」
「それって、転移を使って……。なるほど」
すぐに察したエレナはどうやら値段に納得したようだ。内陸部にある王都に転移施設を使ってまで届いた新鮮な海の幸だ。これくらいの値段はするさ。
転移施設は魔力を貯めた魔石を大量に消費するため利用料が高くて普通の物流の代わりにならない。それに国土を経由するすべての転移は魔法省に管理されており、密輸にも使えない。
しかし食への執着が強い貴族が多いからか、海鮮や一部の食材をわざわざ転移を使って調達している。その余った分は転移施設の近くオークションで飲食店に回すことになっている。
「でもそんな高価なもの……」
「言っただろう。美味しい物を食べさせるって。この店のイカスミパスタは絶品だぞ」
「そう……ですね。ならヴィルのご厚意に甘えて、遠慮なくいただこうと思います」
礼儀正しい返事を貰った。やっぱりエレナは真面目なところあるのだな。
そういえば料理が出るまでまだ時間があるし先に髪飾りを渡そうか。
「そうだ。エレナ、これを」
ポケットから豪華な小箱を取り出し、テーブルに置いた。
「これは?」
「プレゼントだ。あの……元気を出してほしくて」
「開けてもいいですか」
「うん、どうぞ」
中身を取り出して赤紫の目をキラキラさせるエレナ。
「わー。とても可愛くてきれい……」
「きれいな目を隠しているのはもったいないからその目と髪色に合う髪飾りを選んだんだ」
「あぅぅ……」
エレナは目を逸らし俯いてしまう。
あっ、困らせてしまった!今さら気づいたけど贈り物に俺の欲望が混ざっているじゃないか。迂闊だった。
「い、いや。強制するつもりはないぞ。見せたくないなら見せなくていいしもし迷惑ならそれ捨ててもいい」
長年彼女を悩ませる片目のことだ。軽々しく触れるものじゃなかった。
何と詫びればいい?と悩むと彼女が口を開いた。
「ヴィルは……」
「はい」
適切な言葉を見つけないまま声を掛けられてつい狼狽えてしまう。
「私が目を隠さない方が喜びますよね?」
「う、うん。そうだ」
彼女の問いに誠実に答えるしかないと思った。
「それなら……」
エレナはぎゅっと目を閉じて素早く前髪の一部をまとめて髪飾りをつけた。
そしてゆっくり目を開けていく。
「……ヴィルに喜んでもらいたいです」
愛らしい姿に俺は息を呑んでしまい、言葉を失った
午前中の柔らかな日差しに照らされる桜色の髪、光を反射する銀の縁と空色の宝石。その下に彼女自前の異なる色の宝玉——魔性な赤紫と煌めく金の両目は負けず劣らず輝いている。
全体的に調和が出来ていて、髪飾りは見せ場を奪うことなく彼女の魅力を引き出している。
見とれてしまった。さきほど取り乱したせいで高まった鼓動がさらに加速する。
「あの、今手鏡持っていないので分かりませんが、どうでしょうか」
エレナに感想を聞かれてようやく我に返った。
「ああ、とても似合う。むしろ似合いすぎるというか……」
「そ、そう?ならよかったです」
「でも大丈夫?本当に無理しなくてもいいよ」
今さら取り繕おうとする自分が情けなく感じる。
「はい。ソラリス王国に来る前は絶対無理でしたけど、ヴィルに褒められたことでちょっとだけ自信がつきました」
無理する素振りはなく、嬉しそうに語ったエレナ。
そして目を伏せて、一息おいて話を続ける。
「それに、いつまでも逃げてはダメだと思います。せっかくの新しい生活ですから、私も勇気を出さなきゃならないんです」
芯が強いと以前思ったが、実際は想像以上だった。
一時どうなることかと心配したけど、結局杞憂だったということでホッとしたのである。傷つけたくないし嫌われたくないから。
「気に入ってくれたら俺も頑張って選んだ甲斐があった」
「はい、すてきなプレゼントありがとうございます。大事に使います!」
そう言ってエレナが笑った。
ああ、これを見たかった。昨日会った時と同じ、それかそれ以上にとびっきりの笑顔だ。ついつい口元緩んでしまう。
ありがとうジルバルド、クリスティーナ。お二人のアドバイスは間違いじゃなかった。
気づけば視線がこちらに集まっているように感じる。みんなもエレナの笑顔に目を奪われたに違いない。
エレナも注目を感じたか顔を赤くして視線を泳がせる。
どうしたものかと悩んでいると助け舟が出された。
「お待たせしました。イカスミパスタとワインでございます」
ちょうどその時料理が出てきた。見た目は真っ黒だがそれ以上香りが食欲をそそった。新鮮な海鮮を乗せて料理に色のバリエーションをもたらしてくれる。さらに真ん中は細かく刻んだハーブを盛りつけられている。
「それじゃ食べようか」
「いただきます」
エレナは器用にフォークでパスタを巻き取って唇を汚さないように口に運ぶ。感心しながら俺は箸で食べていった。
「やっぱお嬢様って感じするよな、エレナは」
「そ、そうなんですか」
「礼儀作法とか叩き込まれた?」
「いえ、特には。社交の場に出される価値がありませんので。でも女の子として恥じないようにとお母様が必要なマナーを教えてくれました」
二つの瞳が揺れるエレナが左手で髪飾りをそっと触れる。心なしかすぐに落ち着きを取り戻したようだ。
「母君はエレナのことを大事にしていたようだね」
「はい、私もお母様のことが大好きです」
話を聞く限り、エレナのお母さんは彼女の心の拠り所だった。代わりになるとかおこがましいことは思わないが、せめて安心していられる居場所を与えたい。
「ヴィルこそ、本当に貴族生まれじゃなかったのですか」
「数週間前まではただの騎士だというのは嘘じゃないぞ。その前は傭兵や冒険者やっていたし」
「それじゃ、ソラリスの騎士は礼法も勉強しますか」
「まさか、俺はただ王宮での仕事があって、礼儀とか指摘されて徐々に身に着けた感じだった。最初は食事の音だけでどれだけクリスティーナに叱られたか……」
王子様に悪影響を与えるからきちんとしなさいって何度もしつこく言われたことか。あの頃ジルバルドだってもう子供じゃなかったし要らない心配だった気もするが……。
「……クリスティーナさんとは?」
「ああ、レーマン子爵……じゃなくて、侯爵の次女で、王宮でしょっちゅう会っていた」
ジルバルドの指導をすると大抵見かけたよな。もう前から仲がいいよなあのお二人は。
「彼女はどのような人物でしょうか」
「一言で言うと魔法の申し子。王族に匹敵する魔力に加えて天才的な魔法制御。この国に彼女の右に出る人がいないと断言できる。それなのに驕ることなく謙虚。気品があっていて人当たりがいい。優しくて強い女性だよ」
「そう……なのですね。知り合いにそれほど素敵な女性が……」
エレナは食事の手が止まって俯く。
「まあ、欠点としてジル——第一王子のこと大好きすぎて彼のことになると暴走しがちな面もあるとか。それも微笑ましいというか……」
今は大分マシになったと思うけれど、これからのことを考えるともっとしっかりしてほしいかもね。
「な、なるほど。ふぅ……」
手が動いてないと思ったら今度は溜息をついた。まさかもうお腹がいっぱい?
「もう食べられない?なら無理しなくてもいいぞ」
「い、いえ!違います!」
エレナはワインを喉に通してまた食事を再開した。今度は上機嫌でパスタを平らげていく。やっぱり美味いよなこのパスタ。
そこから特に会話がなくパスタを堪能することに集中した。
「どう?美味しかった?」
「とてもとても美味しかったです!本当にありがとうございました」
「この店に誘った甲斐があったな」
「プレゼントのことも……。おかげさまでやる気が出ました。必ずゴールドランクになって恩返しすると約束します」
昨日はトラブルがあったけど今日は無事元の目的が達成された。
元気になったエレナを見て俺も満足感に満たされて——
「エレナは健気な子だな」
——つい頭を撫でてやった。
「あぅ……」
嫌がる素振りを見せずくすぐったそうに目を細めるエレナ。そして微笑んだように見えた。
いつの間にか俺も俺で心地よさを感じてしまった。
成熟した一面も幼い一面もある彼女と俺はまだ手探り状態だけど、ゆっくり二人の関係を築いていこうと思う。
「さてと、次はギルドに行こうか」
「うん。行きましょう」
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