第5話邪魔者
兎に角、会社は書類の多い所ばかりで働いていた。
あの、ブラックな会社も今の会社も。
今の会社は福祉作業所だから、何も邪魔されないが、あの会社で書類の枚数を数えていたら、
「5、8、3……」
と、そばで言って邪魔をする。
こっちは、真面目に数えているので、手は止めず数え続けると、途中でホントに分からなくなる。
右手の親指と人差し指に指サックをして数えているのだが、間違える。これが、10枚ずつに数えていたら、まだ被害は少ないが、100枚単位で数えていたら、ソイツを灰皿で殴り殺したくなる。
「もぅ〜、邪魔しないでよ!時間が無い時に!」
と、文句を言うと、
「それは、お前が集中してないからだ!オレのせいではナイ」
と、言い返してきた。ソイツは自分の仕事が終わり書類整理室でタバコを吸いながら、手伝う事も無く、さっさと帰らずに残業代をちょろまかす為にいる。
ある日、そいつが早朝、書類を数えていた。
僕は近付き、
「13,85、100、52……」
と邪魔をした。
「あぁ〜、分かんなくなった。お前のせいだ。手伝えよ」
「僕は、自分の仕事があるから、先に現場に行ってる」
と、言い残しその場を去った。
このバカ、せめて100枚単位で数えておけば良いものを、1000枚単位で数えてホッチキスで留めていたらしい。で、現場に遅れて監督にキツい言葉を言われたらしい。
それから、コイツは僕の邪魔をしなくなった。
そして、そいつが言う。
「この前はすまない。オレが悪かった。今から、ビール飲みに行こう」
と、謝罪の言葉。
僕は微笑みながら、
「行こうか」
と、そいつとは仲良くなった。
もう、15年前の話しである。
シュールな人々 羽弦トリス @September-0919
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