第4話 夢は続く
いかん、このままでは、そのうち彼女に気付かれ、
オッパイを覗き見していると、勘違いされてしまう。
早く、ここを、この至極の場所から、動かねば。
固まったからだの、上半身を無理やりひねり、なんとか、一歩を踏み出した。
そしてやっともう一歩、そこで、
「・・様」
はッ、ばれたッ、違う、
そうなんじゃ、ないんですよぉッ。
「現世様」
「ハイ」
俺は、恐る恐る彼女の方を振り向いた。
「お水は後から、お取替えしたものをお持ちしますけど、
ワインはこのまま置いておきますね」
ニコッ。
「ハイ」
違ったあ、よかったあ、神様、もう二度と覗き見なんて、、、、、。
違ああう、わざとじゃないッ、偶然ですっっっ。
俺はベッドに腰かけ、彼女を横から見ていた。
そうか、最初給仕してくれた時は、椅子に座った俺のほうが低い位置から、
彼女を見上げていたし、そして窓も開けてないから、部屋が今より暗かった。
だからこんな素敵なオッパイに、気付かなかったんだ、悪条件が揃ってたんだな。
違ああう、そうじゃない、神様、悪条件とか言い間違いなんですう。
彼女は食器を移し、テーブルを拭き上げ俺に振り向いた。
「何かご用はございますか」
いえ、ございません。
「では、失礼させていただきます」
彼女は、深く上体を折って挨拶した。
ほらね、今のだって、不可抗力でしょ、
そりゃ、見事なオッパイの、谷間は見えたけど、見たんじゃない、
見えたんですよ。神様。
彼女はドアの手前で振り向き、
「もしお疲れでなければ、後程祖父がお邪魔したいと、申しておりましたけど」
と、伝えてきた。
祖父?ジョナサンのお父さん?
いいですよ、疲れてもいないし、やることもないし。
「はい、ではそのように伝えます」
彼女はドアを閉めて、出て行った。
あ~あ、楽しい夢の世界が終わった。
それからしばらくすると、ドアがノックされた。
お祖父さんかな、ベッドに寝転がっていた俺は、ドアへ行って開けた。
「お邪魔いたします。まだお休みではないとのことで、お邪魔いたしました」
そこには、ジョナサンが立っていた。あれ、お祖父さんじゃないんだ。
まあ、どうぞ。
彼は、部屋に入りドアを閉めた。
テーブルに近づき、手に持っていたボトルと、二つのグラスを置いた。
「お嫌いでなければ、いかがでしょうか」
はい、遠慮なくいただきます。
俺達はテーブルにつき、彼はボトルからグラスに注ぎ分け、一つを俺の前に置いた。
俺はそれを手に取り、目の前にかざす。
彼もそうする。乾杯。
グラスを口につけ、中の液体を少し流し込み、舌の上で味わう。
旨い。
トロっとしてて、甘みがあって、香りが鼻にすうっと抜ける。
スモーキーなウィスキーだ。
美味しいお酒だと、彼に告げると、うれしそうに微笑んだ。
「そうおっしゃっていただけると、光栄でございます。
これはレティの、
いえスカーレットの結婚式の日に、開けようとおもっていた、酒でございます」
え~、そんな特別なのを、なんで今日開けちゃうわけ。
「本日の貴方様のご訪問は、それ以上の日となりました」
そんなことないでしょ。ただのボンクラが迷い込んだだけですよ。
「いえ、貴方様はきっとすぐにお力を身に付けられることでしょう」
そうですかねえ。
「きっと、そうなりましょう。こちらの世界にこれほどお馴染みの方が、
そうおなりにならないはずはございません、この度のご滞在中にも」
そりゃ俺だって、レティのオッパイとは出来るだけ長く、、、、、。
死んだら治りますか、神様。
お赦しください。
ところで、レティがお祖父さんとお祖母さんって言っていたけど、
あなたのご両親ですか。
そう聞くと、彼は大きく笑った。
「これは失礼いたしました。それはわたくしと、家内のことでございます。
あれは、わたくしどもの、孫娘です」
ありゃま、そりゃ勘違いしていました。
「あれはまだ、見た通りほどの年齢でございます。私共も子供から大人へは
現世様方と変わらない程度で、見た目が成長いたしますので」
そうねえ、20年生きて、体は10歳っていうのも、不便そうだしねえ。
「あれの両親は、あれがまだ幼い頃、列車事故で亡くなりました。
わたくしの、娘夫婦でございました」
それは、さぞお辛い思いをされたことでしょう。
「この町は東西に大きな川が流れ、それが豊かな牧草地を生み、牧畜を
盛んにいたしました。
今では東西それぞれの地域で、昔はバラバラだったものがまとまり、
2つの大きな牧場として、存在しております」
牛さんね、今日の料理にも、塊りがゴロゴロ入ってたもんね。
「はい、この町に昔から暮らしておりますものは、現在、牧畜の仕事に従事して
おりませんでも、それぞれに牛の持ち分があり、牧場から肉や乳が届けられ、
革や現金も分配されます。
これまでの牧場の発展には、町の者全員で力をかけてきたからです」
「こんな鉄道の終着点、はずれの町であっても、比較的に楽な生活ができる
のもそのおかげです」
なるほど、牧畜というのは町全体にとって大きな産業なんですね。
「昔は何十日もかけて、牛を他の町まで運んでいました。
しかしこの町にも鉄道が引かれ、それで短時間で大量の牛を運ぶことが、できる
ようになったのです。
そしてそれが、大変な悲劇を招いてしまいました」
まあ、別に、夢の中でそんな話を聞いたからと言って、どうってことはないんだ
けど、現実世界の俺は、まだしっかり眠っているようだし、まだしばらくは、ここにいるしかないわけで。
レティちゃんのお祝い用だった、美味しいお酒もいただいちゃったんで、
もう少し、お付き合いしますか。
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